命を耕す 33

「自分が一番気持ちのいいようにしてもらえば治るんです。一番気持ちのいいようにということは、悪い方から良い方へ戻すことで、戻すのは実に気持ちのいいことなんですよ。

ところがね、これにもやり方の上手、下手があって、いくら気持ちの良い方に引っぱっていくといってもね、あんまり気張ってエャーとばかりにやったって、うまくいかない。

そうじゃなくてね、フウーと、水の中に浮かんでいる水草を引っぱってくるように、スウーと動かせばいいのです。コースにさえ乗れば、うまくゆくんだから。

それもね、必ず息を呼(は)きながらやるんだ。息を呼きながら動かさないと、からだを壊してしまう。この『息を呼く』ということにもね、ちゃんと法則があるんです。

例えば、けんかして、人をぶんなぐる時に、げんけつ振り上げて、息を吸いながらぶんなぐることは出来ない。出来たとしても、人を圧倒するほどの打撃は与えない。やっぱり、コンチクショーとばかりに息呼きながらでなきゃ、力が入らない。

呼吸と運動には、そのようにチャンと法則がある。この法則を知らないとケガをします。運動は息を呼きながらやる。吸う時には、運動神経が働きません。

剣道などでもスキを突かれる時は、必ず吸う瞬間です。柔道にしても、この瞬間に技をきめられやすく、ギックリ腰も吸う時にやられやすい。

管楽器を奏する時、あるいはお経をあげたり、詩吟や歌をうたう時など、みな呼吸の自然法則に合ったやり方でないとうまくいきません。

よく『修養して腹をつくれ』と言うが、この『腹』も呼吸によって練れてきます。

私は患者さんたちに、毎晩眠る前に腹式深呼吸をするようにすすめています。夜寝る前に床の中でおやりなさい、と。

枕をはずして両手を下腹に当て、両膝を立てて軽く合わせます。その時、足先を少し内側に向け、爪先を軽く踏む気持ちになって、下腹をくぼませながら、できるだけ息を呼(は)き切る。

からだの中の息を全部呼き出すつもりで呼くのです。

そして吸う時は下腹に吸うつもりで、ごく自然に吸ってください。

これを毎晩床の上で十回くらいする習慣をつけるとよいのですが。

毎晩これを続けていますと、起きている時も、何か仕事をしている時も、いつの間にか腹に力が入っているようになり、落ち着きが出てきます。『腹』が練れてきた証拠です。

コツは呼き方にあります。とにかく充分に呼く。よく呼けば吸う方はひとりでに入る。吸う息のことに意を使うことはありません。

吸う息は素早く、呼く息は長く、です。

とにかくね、呼吸する時は背骨がみんな動いているんだ。背骨が動いたら、内臓もみな影響うけるんです。

呼吸の仕方ひとつでからだの中が変わり、人間が変わるということは、注目すべきことだと思います。」

引用 橋本敬三「からだの設計にミスはない」柏樹社









前稿の肥田春充翁の爪先に意念を置く歩き方講座に、引き続く、橋本敬三先生による呼吸と丹田に関連する重要コンテンツの公開です!

まんず、スゲー!スゲー!の、凄すぎコンテンツの怒濤の引用が、ここんとこ、連続しておりまして、こうして公開しているとっくの昔にこれらのコンテンツを読み漁っていた当の本人(俺)ですら、

ちょっと興奮してハイになっているんですから、こうした文献にはじめて触れた読者諸兄においては、もう興奮しっぱなしで、エクスタシーに酔いしれているんでは、と想像いたします。

どうぞ、存分に酔いしれて痺れて頂きますれば、ブログ主冥利に尽きますので、その旨でよろしくお願いします(笑)

本稿の橋本敬三先生は、そのスジでは知る人ぞ知るの治療家でして、今さら説明は要りませんが、医師・鍼灸師でありながら民間の治療術の精髄を模索し、

ついに体の異常のほとんどが筋骨格系の歪みにあるとの結論に到達し、歪んだものを元通りに戻せば体は楽になる、

という至極単純にして深淵なる橋本式操体法という身体操術を編み出して、病苦に悩める庶民の救済に生涯を費やした偉大なる我が業界の師匠、マスターです。

さて、前稿においては歩行時に爪先、とくに足の親指に意識を置くことの重要性がクローズアップされましたが、

実はわたしは先年の今頃、子供を連れて日本平動物園に出掛けた折に、チンパンジーの歩く姿を見て、ビビビッと閃くモノがございました。

そうチンパンジーはまったく足音を立てずに、まるで足先を手のようにして地面をつかむようにして歩いていたんですね。

実は太極拳においては、足先の3点、親指と小指と踵のこの3つのポイントを意識する、と言われておりますが、

これも、ようは武道でいうところの、からだが固着してしまう「居付き」を嫌う所作なのかと推察する次第です。

武道においては、臨機応変に柔軟に敵に対処するためには、体が固まってしまうことは絶対にあってはなりません。

それゆえに武道家はこの「居つき」を嫌うのです。

不意打ちを喰らった際に、サッと身をかわすには、サッと身をかわせる体制でつねに準備していなければなりません。

ヨッコイショ、とドッタリと和んでいる「居ついた」スキを突いて、敵はやってくるのですからね。

つまり、太極拳における足底の意念も、肥田式強健術における爪先の重要性も、チンパンジーの歩き方も、みな「居付き」にならないための、

足さばき、と言えそうです。

そして、この足さばきは、必ずや腰腹丹田と連動することで、より身体の統合性が高まるということになるはずです。

ということで、本年4月の「命を耕す」シリーズも、本日が最後となりました。

全33講義、渾身の出来と自負しております。

まずもって、連日、ここに詣でてくれた読者諸兄には多大なる感謝をあらためて申し上げます。

この「命を耕す」というタイトルは、実は自分はもの凄く気に入っておりまして、思い入れも強く、それゆえに次月も同じタイトルで同じネタを続行する所存です。

どうか、次稿からの「新・命を耕す」シリーズにもご期待ください。

ハーハッハッハー!

いつも元気な浪越先生(笑)

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2015.04.30 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 鍼灸指圧

コメント

 お忙しい最中返信頂き恐縮です。さて、浪越先生の件で思い出したのですが、私の母(78歳)の岩手県の実家に、何故か浪越先生が泊りに来ていたらしいとのこと。そして、朝になると、外で頭からバケツの水をジャブジャブ掛けていたらしいとの話です。恐らく、禊の類と思われます。ご参考になれば幸いです。

2015/04/30 (木) 10:18:30 | URL | 渡辺 #- [ 編集 ]

ワオ、凄い情報!

なるほど、なるほど、あのマリリンモンローの来日時に、注射と薬嫌いのマリリンの急性胃ケイレンを、

あっという間に、そのゴールドフィンガーで治した指圧力の源泉こそが、

水行のような求道的な生き方にあったと。

ハーハッハッハーの呵々大笑は、やはり腰腹丹田で練られたフォースから発せられていたのですね。

禊(みそ)ぎの語源は、罪削ぎ、とも、積み削ぎ、とも、身削ぎ、とも言いますが、

浪越先生は、みずからの心身に溜まってくる世俗の邪気を払い続けながら、指圧道を究めていったのでしょうね。

まさに『洗髄経』の世界を地で行く浪越先生を改めて尊敬する次第です。

渡辺さん、とても素晴らしい情報をありがとうございます。



2015/04/30 (木) 19:25:15 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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