命を耕す 16

「元東京理科大学教授・長沢元夫氏が、ある講演のなかで恩師・荒木正胤氏は、手を患者の体にスーッと触れていくと、体内で何が生じているかあたかもレントゲンのように分かる人であった、と話したのを聞いたことがある。また『鍼灸真髄』のなかで、代田文誌氏が沢田健について「指頭の感覚、神の如し」と表現している。私は実際には沢田健の診断とはいかなるものかとかねてより知りたいと思っていたが、あるとき著明な鍼灸の長老の方と会食をしたときに、「沢田先生の診断は手をかざして診断された」という話しを聞き、大いに得心がいったものである。なぜなら私自身がそのような「手かざし」による邪気診断をして大変な恩恵を受けているからである。私がそのような術を用いたのは、恩師・横田観風先生が治療の中で使っておられたので、それを自得し自らの診断に使用するようになったものである。この方法は体から発する邪気をキャッチするものである。キャッチした位置から垂直線を体の方向に伸ばして邪気の出所を捕らえるのである。するとそこが体の病んでいる場所である。ただし皮膚表面が病んでいるのか、その下にある臓器が病んでいるのかは推理しなければならない。この診断は基本的には面的なものであるが、正確に捕らえられるようになると、点で見られるようになる。今、私がこの診断法を語るのは邪気診断はこれしかないという意味で語っているのではない。手かざしでも接触法でも押す法でもいずれでも差し支えない。要は分かれば極めて貴重な診断情報になるということを言いたかったのである。・・今日の鍼灸界をみると、東洋医学ブームとは裏腹に停滞感を感じるのである。その理由は中医学もほぼ出尽くして新鮮味なく、これ以上の発展は期待できない(全くパラダイムを変更すれば別である)。日本の経絡治療も論ずるまでもなく停滞している。それはなぜかというと、いずれも人間の頭で概念分析したものであるから(五行もその一つ)、それは自分なりの枠組みを作っているだけなのである。枠組みを一旦作ってしまえば硬直化することは明らかである。だから我々の取るべき態度は、どこまでも事実を素直に見ていくということである。体に聞くということなのである。だから体に聞く技術を学ぶことが最大の課題なのである」引用 奥平明観著『邪気論 見えない身体への一歩』医道の日本社



今月4月に入って始まった本シリーズ「命を耕す」のメインテーマは今やその手技を正しく伝える者が減り、ちまたの無資格インチキ代替医療ビジネスの止めどない侵蝕により、

最早、絶滅は真逃れないであろう日本が世界に誇るクールジャパン文化!日本人が大正時代に発明した世界一の「おもてなし医療」である「指圧」をクローズアップする企画としてスタートしました。

早、記事更新回数も16回を数えましたが、日によっては通常のアクセス数がドンと跳ね上がり、ここ数日もグングンとアクセス数が増大しております。

またこれまで本ブログのコメント欄にコメントをしてくださっていた常連コメンテーターからも、「こんなシリーズを待っていた!」なる言葉を頂戴し、これまでで一番面白いシリーズである、などという評価も頂いております。

鍼灸指圧師になって足かけ26年間が経過しますが、これまで私は鍼灸業界でも、他所でも注目されたこともなければ、何らかの影響力を与えたこともほとんどありませんでした。

なにせもともとシャイな性格でして、余り目立つ事を好みませんからね。鍼灸業界の全国団体の会に所属していた時期も、古典鍼灸の研究会である脈診医学の研究会に所属していた時期も、まったく目立たないように隅っこの方に小さくなって棲息していたクチでしたので、

そんな自分がここのブログでは、随分と大きな口を聞いていることを考えると、何だかおかしくも思えます。

しかしそんなシャイな性分のわたしの気持ちを奮い立たせたのは、やはりこの素晴らしい東洋医学の伝統を絶えさせてはならない、という一念でありました。

もう手遅れかもしれませんが、奇跡的にも、もしかしたらまだ間に合うかもしれません。

浪越徳治郎先生がご存命の折に一大指圧ブームを起こし、浪越先生に触発されてその当時に指圧師の資格を取得して一時期を築いた指圧師たちが、今や高齢化して次々に店の看板を閉じて、廃業するか、寿命を迎えて鬼籍に入る時期を迎えました。

街中から「指圧」の看板が消滅するのは時間の問題です。

指圧を供給する指圧師がいなくなり、指圧を受けた経験のある患者がいなくなった時に、日本が世界に誇る最上の「おもてなし医療」である指圧という手技はこの世からなくなるのでしょう。

一歩、一歩、その瞬間が近づいているようでなりません。

果たしてそれで本当にイイのだろうか? いや、イイわけがありませんね。

ピンチはチャンス!

「チャンスは準備の出来た者に微笑む」 by ルイ・パスツール

いよいよ、シャイなわたしもここにきて、待ったなし、気合充分です。

東洋医学イノベーション!

マンネリ崇拝の旧態依然とした東洋医学時代を終わらせ、新たなムーブメントを巻き起こすぜ!

ということで、本シリーズを今後ともよろしくお願い申し上げます。

冒頭の発言は鍼灸家の奥平明観氏です。横田観風氏を代表とする日本鍼灸研鑽会の精鋭部隊の筆頭の人物の発言は、やはり凄味を感じさせて、ひと味もふた味も違います。

実は私の鍼灸学校の学友が、横田氏の「いやしの道協会」の会員でして、彼は今や古典医書の解読をライフワークに、日々、鍼の診療に勤しんでおります。

まさか彼にそんな才能があるとは学生時代についぞ思いませんでしたし、私がこんなにアヴァンギャルドとは、恐らくは彼も今頃、仰天していることと思います。

日本鍼灸、日本指圧を継承し、後世に伝えていく、という一点では二人の気持ちは一致しておりますが、なにぶんお互い忙しい身ゆえに、まず遭うこともなく、年賀状のやり取りのみの付き合いがこれまで続いております。

今度、もし彼と会う機会がありましたら、大いに話しの花を咲かせたく思います。

この冒頭引用文で奥平氏は非常に重要な指摘をされています。それは今の鍼灸界がマンネリズムのドグマの反芻という呪縛に陥り、いっこうに新しい動きがないことの指摘であり、

また陰陽五行理論という論理の世界にはまりこみ、頭でっかちになってしまった東洋医学には未来がない、という主旨の指摘です。

わたしもまったくこの意見には賛同します。

そして最も重要な指摘が「我々の取るべき態度は、どこまでも事実を素直に見ていくということである。体に聞くということなのである。だから体に聞く技術を学ぶことが最大の課題なのである」の部分です。

この引用文の最初の方に出てくる名前は、まるで「鍼灸界ジェダイマスター列伝」と呼べる錚々たる面々が顔を揃えていて、私などはそれだけで狂喜乱舞しそうです。

先月かと思いますが本ブログのガンと食養に絡めてのトピックの際に取り上げた『漢方問答』の著者である鍼灸家にして漢方家であり仏僧であった荒木正胤氏もまた、

オステオパシー医のロバート・C・フルフォード博士や、『触手療法』の福増廣幸氏や、アヴァンギャルド鍼灸指圧師の今村光臣氏(笑)と同じく、「気」の何たるか?を捕らえることができる手指の持ち主であったとは、

なんだかとても嬉しく思えます。

先人が築き上げた論理系体を尊重することはやぶさかではありませんが、それはそれとして、私は常に患者さんの体を先生とし、患者さんの体の「凝り」を師匠として、これまで自分の医学観を育んできました。

やはり「気」こそが生命力の本源なのです。

まずヒトがヒトに触れなければ、医療など始まりません。

「手当て」が「手当て」であり続ける限り、指圧も、鍼灸も絶滅することはないでしょう。

いついかなる時も、「体に聞くということ。体に聞く技術を学ぶこと」が私たち鍼灸指圧師の原点であり灯明です。



『極意その八 指圧の未来は今のおれらの努力いかんにかかっている』


なんだか極意が決意とか格言になってきました(笑)

まっ、細かいことは余り気にしないでください。

なにせアヴァンギャルド指圧師ですから、うんっ、アヴァンギャルドというよりもアバウトじゃね?

どっちでもエエがな(笑)

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2015.04.15 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 鍼灸指圧

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