ぬくもり 20

「自分がいつも通ってる指圧師が高齢になって、ついに先日、店を閉じてしまったから、それからずっと、指圧をやる治療院を探してるんだけど、まったく見つからなくて、たまたまここを通りかかったら、看板に指圧って書いてあったから、飛び込みだけど、来てみたんです。そうそう、こういう指圧をして欲しかった!あ〜、やっとやって欲しい治療をしてくれる治療院が見つかって良かった。助かった!」


「若い頃は俺は焼津の方に仕事に行ってたんだけど、その頃はほら、あの、指圧の心、母心、押せば命の泉湧く、の浪越先生が全盛期で、それとおんなじやり方でやってくれるオンナの指圧師のところへ俺も通っていたんだけど、何しろ身体中をほんとにどこもかしこも、触らないところはない程にしっかり揉んでくれて、治療が終わると顔が血の巡りが良くなってポッポポッポと赤らむ程で、俺は身体が弱かったからそこの治療が病みつきになるくらいよく効いたよ。ただ治療代が今から30年以上前頃の当時で8000円とか1万円もしたもんで、そうそうちょくちょくは通いおおせないんだけど、そのぶん、治療時間は1時間半とか2時間も念入りにとことんやってくれたわ。それっから、こっちで仕事をするようになってからは、ほらあそこのお寺の前でやってた S木さんね・」

「ああ、あそこに通ってた常連さんで、今うちに来てくれてるひとがけっこういるよ」

「そう、あの S木さんも、1時間半ぐらい自分が満足するまで指圧してくれる指圧師だった。でも、あのヒトも10年前かもっと前に亡くなっちゃった。それからは色んなところに行ったけど、最近はどこ行っても、全然ツボがわかんないヤツばっかりになって、このあいだも、アンタ、こんなので、ヒトを治せるのかね?ってこっちから聞いてやったよ(笑)静岡市から浜松市までこの辺りをずっと探して歩いたけど、今の今までこういう風にちゃんと指圧してくれるとこがまったく無かった。うぅ、うっ、あぁ〜、気持ちいい、お〜、よく効く、これこれ!ありがてぇ、もっと早くここに来れば良かった!これでもうちょっと生き長らえさせてもらえそうだ。今度、孫娘の結婚式があるから、それまでは死ねない(笑)う〜、そこ、ちょっと痛い、そこの背中の凝りもここ10年触ってもらってないからな(笑)」

「そんじゃあ、10年ぶりの本物の指圧って感じですか?かなりここ硬くなってるから、揉み痛みが出ると何だから、今日は取りあえずこのくらいにして、段々、ほぐしていきますかね」

「おう、そうしてや。家も歩いてこれるほど近いし、これからちょくちょくお世話になるから」


いつからか初診の患者さんたちから「最近、指圧をちゃんとやってくれる治療院がなくなった」と言う声を良く聞くようになった。

こうした不満の声はたいがい長年の指圧ファンだった方々が口にするセリフなのだが、ようはここ20年ほどでその指圧ファンが通っていた治療院の指圧師が高齢化して、店をやめたり、その治療師が亡くなったりして、それまで行きつけにしていた指圧院が閉院されると、

そこから、次の行きつけの指圧院探しが始まるのだが、そうなってみて、はじめて、街中から指圧の看板が消えており、あるのは無資格のリラクやリフレやアロマやリンパやセータイばかりであることに気づき、

そのような無資格業者のもとにうっかり足を踏み入れても、決してこれまでやってもらっていたような本式の指圧などやってもらえなくて、

いったいどうすればこんなにヘタな治療モドキが出来るのか?と猛然と怒りがこみ上げてくるのだが、それをぶちまける相手もいず、どこかにいい治療院はないもんか?と

悶々としつつ、ある日、場末のテナントの二階のガラスに「指圧マッサージ」と書かれたカッティングシートを見つけ、「おっ!おおっ、もしや、ここに俺が求める指圧があるかもしれない!」

で、「あの、ここ、指圧、やってくれるとこ?」

「あ、こんちは!もちろん指圧やりますよ。どうぞどうぞ、今、ちょうど予約が入ってないから、すぐ出来ますよ」

で、それから始まる積もる話しが冒頭と、その後の二人のやりとりの会話となるというわけです。

ここ静岡県牧之原市の自分が住み、かつ治療院をやっている場所は中央の都会ではなく、地方の田舎ですが、恐らくは日本全国で、同じく都会からも田舎からも、今、指圧をやる治療院が加速度的に消滅していっている最中です。

指圧師の国家資格を有し、本式の指圧をマスターし、「治病医学と予防医学」の両面に貢献できる本当に気持ちのイイ指圧、患者さんの口をして最後に「あ〜、助かった!」という言葉を引き出すことができる指圧師がかつては、ここ日本にはたくさんいたのです。

かつてと言っても、それほど遠い昔ではなく、そう今から20年前までは確実に日本のそこかしこにそんな治療師がいて、そこを頼りに通う常連さんたちの命をしっかりと養っていたのです。

広告制限という法律があるから、鍼灸指圧の治療院の宣伝文句で使用できる語句は本当に非常に限られており、それゆえに鍼灸指圧の有資格者の店の看板はとても地味で、まったく目立ちません。

しかし、それでも、今までは街中に普通に「指圧」の看板を見つけることができました。

でも、どうでしょう?

ここ最近は、随分とこの「指圧」と書かれた看板を見る機会が減ったと思いませんか?

日本の暮らしの風景の中から「指圧」の看板の文字が消えるとき、それは日本独自の世界に誇る「おもてなし医療」が消える時なのです。

一昨日、はじめて来てくれた指圧ファンの患者さんが、今日、また来てくれます。

指圧消滅の崖っぷちに立つニッポン!

なのですが、勝負はここからです。

キョウビの街中は無資格代替医療ビジネスに完膚無きまでに占拠されてしまいました。

それもこれも、わたしたち有資格者が自分達の医療の何たるか?の情報公開を怠ったからと言えます。

いな、それだけでなく、鍼灸業界、東洋医学界が全体で手技三法をバックアップしなかったからです。

「手当て」の本義を忘れた医療に、医療としての未来はありません。

指圧ファンはまさに「手当て」の「お手入れ」という「手助け」を求めて、指圧院のドアを開けてきたのです。

どこまでも「手当て」にこだわる医療、それが指圧です。

クール・ジャパンのアイテムに「指圧」が挙がってこないのは、やっぱ、おっかしいよね、フフ(笑)

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2015.03.28 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 鍼灸指圧

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