ぬくもり 2

「病なき時、かねて養生をよくすれば病おこらずして、目に見えぬ大なる幸(さいわ)いとなる。これ未病を治するの道なり」『養生訓』巻第一、総論・上36

今年になってすでにふた月が経過しまして、早いもので昨日から3月に入りました。

本年は月初めに脳裏に自然に浮かんできたキーワードをタイトルにすえて、ワンタイトルでひと月を1クールとする方式を採用しております。

本年1月は「癒しの原点」、2月は「兼愛」、そして昨日からの3月は「ぬくもり」としました。

ネット時代を迎えて、養生や健康に関するコンテンツ(情報群)は今まで以上に大容量になり、閲覧する者にとっては大手メディアによらない情報入手の経路が確保できて、ある意味こうした能動的に情報を入手したい者にとっては非常に幸せな環境が整ってきたと言えます。

しかしでは、このネットに開陳されている健康情報の内容は?となると、私のようなプロの医療家に言わせれば、まるで誇大妄想かと思えるような希望的推測120%増しのエビデンスがどこにも開示されていない極めて不正確なプラシーボ真理教の類が多々見受けられます。

そのなかでも人体生理に必須のエネルギーであるATPを生み出す機構に着目してのミトコンドリアのみをどうにか活性化すれば万病を予防し治療できるとする、ミトコンドリア活性化も言わずと知れたトレンドです。

このミトコンドリア活性化ムーブメントには、わたしも5年前から賛同し、盛んにミトコンドリアを元気にしましょう!キャンペーンの旗振り役をやってきたので、いささか面目ないのですが、

やはりこうした「これさえやれば」的な還元主義とも呼べる分かりやすい誘導は、今後は控えたいと反省する次第です。

いやミトコンドリアを活性化することには、大いに健康増進効果があることは恐らくは事実でしょう。

しかし、ミトコンドリアはホストである宿主細胞と融合し、一体であるのですから、ミトコンドリアを活性化することは、つまりは細胞そのものを活性化することと言えるのです。

ですから、ミトコンドリアを活性化することで細胞を活性化できるのなら、細胞を活性化することでミトコンドリアも活性化できます。

何を言いたいのか?と言うと、細胞とミトコンドリアを分けるような二項対立のロジックはオカシイと言いたいわけです。

細胞まるごとを大きな俯瞰で捉える視点がこのミトコンドリアと細胞を分けるロジックには欠落しがちなのです。

命とは無数のパラメーターとファクターがブラウン運動に散乱するカオス宇宙。

ある一点のファクターのみを抽出してその部分だけを強調し、他の多くのファクターやパラメーターを捨象し無いものとして論を展開することをいわゆる「オッカムの原理」と言います。

これは観測不能な宇宙の果てを論ずるような宇宙論などにおいては、良い意味で使用されるロジックなのですが、

こと人体宇宙に関してはヒトの命がかかっておりますから、おいそれと「オッカムの剃刀(かみそり)」を切れ味鋭く振り回されてはたまりません。

細胞生理はこれまで論述したように、細胞質の解糖系によるATP産生とミトコンドリアにおけるATP産生というエネルギー産生の側面だけでなく、

非常に多岐に渡る様々な生理現象があり、例えば細胞質は80億個のタンパク分子がドロドロにギッチギチにギュウギュウにひしめき合っている、

タンパク分子が充満した肉汁スープと呼ぶにふさわしい空間であり、この細胞質に存在するこれらのタンパク分子はいつもキレイな立体構造を維持しているわけではなく、

寒熱風暑の四季折々の気候因子や、摂取する栄養素や、望まない重金属や化学毒物や産業毒や、これらに被曝することで生じる活性酸素やフリーラジカルや、紫外線や放射線などの物理的、化学的なあらゆるストレスにより、

タンパク分子はその形状を変性されて凝集体と呼ばれる変性タンパク質が細胞質に発生することは細胞生理について回る現象です。

この細胞質を満たすタンパク分子(ミトコンドリアを含むすべての細胞内オルガネラも)がこのような変性タンパク質に変われば、

例えばトレンドの酸化還元反応を司る酵素もまたタンパク分子で構成されていますから、もしも酸化還元反応を行う酵素のタンパク分子の構造がおかしくなって変性タンパク質の凝集体になっていれば、酸化還元反応はストップします。

酸化還元反応をもしもうまく進行させたいのなら、いや身体生理のあらゆる現象はセントラルドグマで合成されたこのタンパク分子で合成された何十万種類ものエンザイム(酵素)を使った酵素反応なのだから、

命をありのままに正常に機能させたいのなら、酵素反応を滞りなく進行させるのが理です。

ということは、酵素のタンパク分子構造がちゃんとキレイな立体構造を維持していることがイノチの運用の絶対条件ということであり、

ここにおいて変性タンパク質の管理、ひいては「タンパク質の管理」という至上命題が浮上してくるというわけです。

オートファジーという変性タンパク質をアミノ酸に分解する細胞内浄化リサイクル機構も、アポトーシスというプログラムされた細胞死も、細胞を常にクリーンでフレッシュに保つために獲得された機能であり、

オートファジーとアポトーシスもまた「タンパク質の管理」にとって必須の細胞生理ツールでありました。

タンパク質をセントラルドグマで生み出すだけでなく、タンパク質が使用されるプロセスで発生する変性タンパク質をオートファジーで速やかに分解しリサイクルに回し、またオートファジーで再利用できない程に劣化した変性タンパク質の塊となった細胞はアポトーシスで完全に除去される。

こうした一連のタンパク分子の動きの過程を追っていくと、

細胞生理とは畢竟すればタンパク質の妙なる流れであることが、よく理解できます。

タンパク質の管理を介添えするシャペロン分子こそが、生体防御タンパク質、ストレス防御タンパク質、熱ショック蛋白質であるヒートショックプロテイン(HSP)なのです。

タンパク質の管理を行うのがヒートショックプロテインなのだからユビキチンHSPがオートファジーの導き手であることは、当たり前すぎる程に当たり前であり、

また同じユビキチンHSPが細胞の抗原提示の立役者であることも極めて自然なことであり、ユビキチン・プロテアソーム系におけるユビキチンHSPがオートファジーと深く関わることも、最早言うまでもない程に自明です。

ヒートショックプロテインには大きくわけて10種類のファミリーがあり、細かくは100種類ほどに分類されます。

ユビキチンというヒートショックプロテインをセントラルドグマから誘導するユビキチンリガーゼという酵素をコードする遺伝子は哺乳類では普通は1000種類も用意されていると言います。

ヒトの遺伝子数は2万個程度ですから、そのうちの1000個もの膨大な遺伝子がユビキチン関連コードであるということは、いかにユビキチンHSPによるタンパク質の管理が重大であるかの証左と言えます。

鍼灸指圧とは鍼灸師が指と手を使って、ハリをあやつり、モグサをひねり、患者さんを癒しに導く術であり、ハリの刺激や灸の温かさや指圧の圧力という心地いい物理的な情報入力は、

すべてユビキチンHSPをはじめとする100種類のヒートショックプロテインを細胞内に、体内に合成分泌できる鍼灸指圧こそが世界に誇るいっとう優れたヒートショックプロテイン医療だったのです。

原始ホモサピエンスの「手当て」医療の「ぬくもり」を今に伝える鍼灸指圧術こそが、

ヒートショックプロテインを味方にする「未病治」養生の真打ちです。

スポンサーサイト

2015.03.02 | | コメント(5) | トラックバック(0) | 命曼荼羅

コメント

101匹目のサル & シンクロニシティー

「ガンは病気ではない???」乳酸菌普及協会より
http://howto.grnba.asia/?eid=868

「ガンはうかつに治療するな」は一般的な選択肢  るいネット
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=267671&g=131107

2015/03/02 (月) 07:30:41 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

経絡というのは幽体に属するものだということをヨガの藤本憲幸さんだったか、あるいは今村さんのように東洋哲学、医学を専門にされている上野圭吾さんだったかの本で読んだことがありますが多分今の地球人類の文明科学レベルでは把握しきれない上位概念に属するものなんだと思います。

 カラダの有機的な営み、連係、つながり、統合を診るという東洋医学の役割は細分化され専門家された現代医学のマイナスを補う意義が注目され漢方内科も併設して漢方薬と針灸などの施術を行う公営病院も出てきているようです。とくに細胞修復にかけては万能とも言えるHSPに関しては未だ医療専門家の間でも知らない方が多いようです。本ブログでは分子生物学の見地から詳細に解説されており難解な内容ですが勉強になります。
 
時々、ご専門の東洋医学の見えないカラダからならそのまま異次元とか来世とかのお話も聞かせして頂けるのではと思いますがこれはテーマから反れた欲張りなお願いだと思い我慢することにします。

2015/03/02 (月) 10:47:27 | URL | koganei #- [ 編集 ]

バイブレーショナル メディスン

という著書がアメリカでベストセラーとなり、

ここ日本では日本教文社から同タイトルの翻訳版が出版されております。

このいわゆる量子医学を扱った先駆的な論説の翻訳監修に関わっているのが鍼灸師であり翻訳家である上野圭一氏です。

上野氏の視野は非常に幅広く、上野氏はわたしも尊敬する本業界の宝と認識しております。

koganeiさんご所望の分野は、実はかなり面白く、やりがいがある領域なのですが、

安易にスピリチュアルな方面にクチをうっかり滑らすと、理解度の低い頑迷な科学派に総スカンを喰らい、

スピリチュアルぞっこん派につけいるスキを見せてしまいますので、

これまではかなり慎重に気の分野は扱ってきました。

なにせ、インチキが気の周辺にはワンサカ湧いてきますから。

ただ、仰るように臨床を通して体感する命のありようとは、

気というキーワードがただの言葉ではなく、まさにそう呼べる何らかの気実体が存在するとしか思えない、

現象に毎日、遭遇するわけです。

おっと、失礼、これから娘の自転車のサドルを上げてもらいに、

チャリンコ屋に行かねば(笑)

続きは、また後で。

2015/03/02 (月) 15:06:44 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

上野圭一さんでした、こんな凄い人の名前をウッカリ間違え失礼しました。また今村さんの言われる趣旨は十分承知していますのでご安心くださいw これも結局は地球人類文明の限界でありカルマの法則に反するわけにも行きませんので残念ですが諦めます(笑) ともかく温熱しか知らなかったHSPについて自分ももっと勉強しないと、と思っています。今後とも宜しくご指導下さい。

2015/03/02 (月) 16:00:24 | URL | koganei #- [ 編集 ]

おもてなし

精神があるチャリンコ屋で、娘のチャリのサドルやハンドル調整をしてもらって、お代は何とタダでした(笑)

HSPはストレス防御タンパク質と言われる通り、あらゆる細胞障害性ストレスに応答するカタチで合成分泌される聖なる守り神タンパク質。

実はヒートショックプロテインに関しては、今、わたし独自の仮説を温めてまして、

近日中に公開します。

関連本では水島徹・著「HSPと分子シャペロン」ブルーバックス刊、がイイっすね!

気や経絡については、おいおいまた触れていきますから、諦めずに(笑)ご期待ください。

そうそうチマタでは量子医学とは名ばかりの変な医学が流行りはじめていますが、

こういうのは要注意。まだまだ量子医学はあくまで仮説の段階であって、

それが実用化されてるとか、そういった先走ったなにがしかには、まだ飛びつかない方が賢明です。

なにしろ素粒子の数だって、まだ増えている最中であって、軽く18個はうちらの宇宙にはありそうで、

電子がどうのこうのと言っても、電子の仲間だけで6個もある。

そのいったいどれが、何が、人体に作用しているのかだってまだまったく分からんわけっす。

それで、だからまずは分子レベルの方から東洋医学とのすり合わせをしていって、

それが終わったら量子レベルの方に行くというのがスジと思い、わたしはまずは分子レベルの方に今はチカラを注いでいます。

とにかく、やる事が多すぎて(笑)

koganeiさん、どうぞ今後ともジャンジャン刺激的なネタを投入してください。

2015/03/02 (月) 19:50:30 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

kouhakudou

Author:kouhakudou
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR