兼愛 25

「養生に志あらんヒトは、心に常に主あるべし」『養生訓』巻第一、総論・上34

養生や健康に関して何か物申すということは、これは私たち医療者の場合は実に責任が重大です。それは当然でこちらは医療のプロなのだから、もしもいい加減な事を言って世間を混乱させるような事があってはならないに決まっています。

だからこうしてなにか情報を発信するには、その情報は正確でなければならず、決して間違いがあってはなりません。

東洋医学において最高の医療者は未病治の上医です。未病治は治未病とも書きますが、「いまだやまいならざるをちす」と読み、その意味は「ヤマイになる前に養生をして病気にならないライフスタイルを確立する」とストレートに訳せます。

解剖学者の三木成夫博士は「東洋医学とはいったい何か。それは一言でいえば、細菌と共存する世界のようだ。そこでは、だから、つねにそれが可能な体質が問題となる」と私たち鍼医にとっては宿題とも取れる言葉を遺してくれました。

「細菌と共存する世界」において「未病治の上医」なるライフスタイルをすべての者が獲得できる道しるべたらんと、本ブログはこれからも正確かつ精密な情報発信に励んでまいります。

さて前稿では久しぶりに細胞質浄化機構であるオートファジーに触れて、養生法や健康指南のカテゴリーにおいてオートファジーに言及する者はまずおりませんが、実はオートファジーやその機構のキモとなるリソソームがいかに大事かと訴えました。

せっかくオートファジーにご登場いただいたので、エスプレッソなミクロのオートファジー宇宙をインフレーションに超急膨張させて、インフラトン場を生みだして、ビッグバンを起こして、誰もが楽しめるアメリカンな薄い味に伸ばしてみます。

前稿記事の後半部にあとから加筆して付け足した内容に「ガンとオートファジーの関係」があります。

ガンの原因には諸説があり、いまだ侃々諤々とガンの原因は取りざたされておりますが、いちおう正統医学ではガン細胞は遺伝子変異の結果生じた細胞とされ、チマタの流行りはガンの原因はミトコンドリアの異常にある、とするミトコンドリアと絡めてのガン解読も今やトレンドとなりつつあります。

わたしがミトコンドリアとガンについての情報をはじめてネット上に発信したのは今から5年前ですが、その頃からすれば随分とミトコンドリアも知名度を上げて市民権を得て、今やミトコンドリアは養生や健康に関する一大トピックへと育ちました。

ブームになる前からミトコンドリアをプッシュしていた者としては、ミトコンドリアブームの到来はまことに嬉しい事態であり感慨もひとしおであります。

ミトコンドリアはヒト細胞内に共生しているかつては細菌だったオルガネラであり、原始真核生物と共生を開始した12億年前頃から真核生物の体内において、酸化的リン酸化を行い酸素と栄養素からATPを生み出すことで宿主細胞を生かしてきました。

このミトコンドリアという細胞内小器官は独自のゲノムを保有しておりますが、そのほとんどすべてのミトコンドリアDNAの遺伝子をそっくりと宿主細胞と共進化する過程で、レトロウイルスのゲノムが内在性レトロウイルスとなってホストのゲノムに融合するように、

ミトコンドリアゲノムも宿主細胞の細胞核DNAへと融合しております。よってミトコンドリアを理解する上で、もっとも重要なポイントはミトコンドリアを単独で捉えることなく、常に宿主細胞と一体の存在であるという視点です。

しかし、チマタのミトコンドリア論の大半はどういうわけか、宿主細胞とミトコンドリアを一体として捉えずにミトコンドリアをまるでいまだに宿主細胞に共生したままの細菌と勘違いした論理がそのほとんどなのです。

このようなミトコンドリアをまるで他者(たしゃ)のように、あるいは居候(いそうろう)のように捉える視点では、やはりどうしても細胞生理の本質を見失い、おかしな論理がまかり通ってしまいます。

ミトコンドリアがかつては好気性光合成細菌であったとしても、今は完全に宿主細胞の細胞内小器官なのですから、やはりミトコンドリアだけを見て論理を組み立てるのではなく、ミトコンドリアと宿主細胞をまったくの融合共生体として「細菌と共存する世界」と見るのが望ましいです。

これはかつてミトコンドリアと宿主細胞を分離して養生論を展開していた自分への大いなる反省であり、自分への戒めです。

さてこのミトコンドリアが不調になると細胞生理も不調になることはすでにかなり常識となっておりますので、敢えて今回はミトコンドリアの機能うんぬんにはあまり触れませんが、

不調になったミトコンドリアが活性酸素を細胞質に漏出すると、宿主細胞の細胞核ゲノムが活性酸素の酸化作用で傷害されて、細胞核ゲノムの遺伝子が変異してガン化が起こると正統医学でも語られています。

この正統医学の、ガン原因はミトコンドリアの不調にある、とする論法をもとにオートファジーと絡めて解読します。

ミトコンドリアは細胞核の周囲にまるでクモの巣か神経網のようにネット状に連なって細胞質に存在し、まるで細胞核を守る砦(とりで)かバリアーのような役目をしていることがよく知られております。

ミトコンドリアはATPを合成するだけでなく、ステロイドホルモンを合成し、骨成分のヒドロキシアパタイトなども産生しておりますが、解毒酵素チトクロムP450を保有して、

細胞内に侵入してくるあらゆる毒素や重金属などをミトコンドリア内部で酵素反応によって解毒して、細胞核ゲノムがこれらの有毒因子により傷害されるのを防いでいます。

しかし、あまりに細胞内に侵入する毒素が多ければミトコンドリアもこれに被曝して不良品のミトコンドリアが出てきます。

こうした不良品のミトコンドリアが生じた場合には、ミトコンドリアは独自の連携で傷ついたミトコンドリアをミトコンドリアネットワークを使って融合してしまい、

傷害性のあるミトコンドリアはただちに正常化される仕組みがミトコンドリアに備わっています。ミトコンドリアはいかに傷ついてもただでは起きないのです。

ところがこうしたミトコンドリア独自の修復機序をもってしても、傷ついたミトコンドリアが修復できない場合には、この不良品となったミトコンドリアから活性酸素が漏れ出して、細胞質の他の小器官や核ゲノムを傷害してしまうのです。

そこでこのような不良品のミトコンドリアが生じてしまった事態を打開する機構こそがオートファジーという細胞内浄化機構であり、

マクロオートファジーも不良品のミトコンドリアを無差別に分解できますが、特にこの不良品になったミトコンドリアだけを選択的に識別してミトコンドリア専門のオートファジー機構までが用意されています。

これを「ミトファジー Mitophagy 」またはマイトファジーと呼びます。つまりミトコンドリアの不良品がミトコンドリア独自の修復機序で処理できかねる時には、ちゃんと不良品ミトコンドリア専門のオートファジーが細胞には用意されており、

決してミトコンドリアの機能不全が起きないような水も漏らさぬ厳重なシステムが厳然と細胞には存在するということなのです。

このように不良品ミトコンドリアの管理が徹底していることから、ミトコンドリア研究者をしてガンの原因にミトコンドリアの不調など無い、と言わしめるのです。

オートファジーという細胞質を常にクリーンにフレッシュに正常に保つ方法には、飢餓時に特に活性化されるマクロオートファジーが有名ですが、

それ以外にはリソソームが直接に細胞膜を囓(かじ)って細胞膜を少しずつリニューアルするミクロオートファジーと、

ユビキチンというヒートショックプロテインによって特異的に変性タンパク質を識別して、ミトコンドリアが産生するATPというエネルギーを使いながら変性タンパク質をアミノ酸に変換するシャペロン介在性オートファジーがあるのですが、

これら3種のオートファジーに加えて、さらに不良品のミトコンドリアを専門に分解するミトファジーがあったのです。

ミトファジーがうまくいかずに不良品のミトコンドリアが放置されたままになると、この不良品のミトコンドリアから漏れ出す活性酸素により細胞核ゲノムが傷害されて細胞がガン化したり、細胞が変性するという仮説がすでに提出されています。

ミトコンドリアの不調がガンの原因ではなく、不調のミトコンドリアを分解するミトファジーの不調が真のガン化の原因である、というのがオートファジーとガンとの関連で見えてくる新たな視点です。

実際に大脳黒質におけるミトファジー不全が脳細胞のドーパミン産生を抑制してしまいパーキンソン症候群が発症するという、ミトコンドリア除去の失敗であるミトファジー異常症が神経変性疾患の原因だろうとする説やそれに関するエビデンスの報告がすでに挙がっております。

ミトコンドリアがヒトの健康を握っているのなら、不良品と化したミトコンドリアを除去するミトファジーというオートファジーシステムはもっとヒトの健康を強く支配していると言えそうです。

ミトコンドリアとオートファジーについてはザックリとこのくらいにして、本題の「ガンとオートファジーの関係」については、

ひとことで言えばオートファジーが不全になるとガンに罹りやすくなり、ガンに罹るとオートファジーが亢進する、と言えます。

マクロオートファジーとミクロオートファジーとシャペロン介在性オートファジーとミトファジーの4種類のオートファジーシステムは、

細胞内を変性タンパク質や乳酸や不良品のミトコンドリアなどの正常な細胞生理にとって傷害となる分子から守り、それら傷害分子を常に掃除することで、

細胞生理を「流水は腐らず」の「変わらなくあるために、変わり続け」させる実に優れた細胞リニューアル機構なのですが、

もしもこの4つのオートファジーが何らかの原因で不調になると、即座に細胞質には常に80億個のタンパク分子が存在しますから、

これらのうちのフォールディングに失敗したような変性タンパク質が細胞質内に蓄積されていきます。

この変性タンパク質の蓄積こそがいわゆる「凝り」の原因物質であるというのが私の23年の臨床経験が導いた凝りとは何ぞや?の結論です。

そして細胞内に変性タンパク質が溜まり、不良品のミトコンドリアが滞積することで細胞核ゲノムが遺伝子変異を来たし、最終的にガン化が起こると正統医学と整合性を持たせます。

わたしが再三にわたりヒートショックプロテインを分泌できる鍼灸指圧や、あらゆる「あったかいんだから♪」メソッドがガン予防に有効である、となぜ主張してきたかと言うと、

ヒートショックプロテイン分泌によりユビキチンというヒートショックプロテインを追加することで、シャペロン介在性オートファジー(ユビキチン・プロテアソーム系も含む)が起動して変性タンパク質が分解されるからであり、

ユビキチンというヒートショックプロテインはガン抗原の提示をMHCを介してガン細胞に促して、ガン細胞の自然なアポトーシスを促進できるからだったのです。

医療のプロにあるまじくダテにいい加減に不正確にシロウト考えで、これまでヒートショックプロテインを推奨しているわけではないのです。

アポトーシスという自然なプログラム細胞死の機序も細胞核ゲノムが主導する基本モデルの他に、ミトコンドリアによるアポトーシス、ヒートショックプロテインによるアポトーシス、免疫細胞によるアポトーシスのオプション・アポトーシスがありますが、

さらに細胞質内をいくらオートファジーでクリーニングしても、もうこれ以上はキレイにならないと判断された場合に細胞まるごとをアポトーシスしてしまうオートファジー型のアポトーシスがあると言われています。

つまり分解系のオートファジーは4種類(ユビキチン・プロテアソーム系も含めれば分解系は5種類)もありますが、

プログラム細胞死のアポトーシスもザッと見積もってゲノム主導、ミトコンドリア、ヒートショックプロテイン、免疫細胞、オートファジーと5種類もあるのです。

4種類のオートファジーを駆使して細胞をクリーニングし続けて、それでも細胞がもう使い物にならない場合には5種類のアポトーシスをもってして劣化してしまった細胞は消去される。

この多重構造のオートファジーとアポトーシスによる細胞管理をもってしても、劣化した細胞が消去できない場合に限って、劣化した細胞は最終手段のガン化のスイッチを押すと私は見ています。

であるからこそガン化した細胞内では今度はオートファジーが亢進して、ガン細胞内の細胞質に溜まっていた変性タンパク質をもとにアミノ酸に変換して糖新生をすることでガン細胞を生かそうとするのであり、

ガン化した細胞にはガン化するだけの使命があるからこそ、本来ならガン細胞を攻撃してアポトーシスするはずの免疫細胞のマクロファージやT細胞がガン細胞の「敵ではなく味方」となって、ガン細胞を護衛するのです。

腫瘍関連マクロファージと制御性T細胞とオートファジーとガンとの関連から見えてくるガン細胞の真相とは、ガン細胞はまぎれもない命のひとつのありようであり、命の「仲間である」という真実でした。

マクロオートファジーは飢餓応答に腹が減ると活性化し、シャペロン介在性オートファジーとユビキチン・プロテアソーム系とミトファジーは

「あったかいんだから♪」な鍼灸指圧やストレッチや各種エクササイズでヒートショックプロテインのユビキチンHSPを分泌することで起動できます。

オートファジーの活性化という養生論を語るのは、恐らくは本ブログだけです。

どうぞ、本ブログフリークの皆様におかれましては、これまで通りネバネバヒート養生法に励むことで、オートファジー活性化に努めてくださることをお願い申し上げます。

『養生に志あらんヒトは、心に常にネバネバヒートあるべし』

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2015.02.27 | | コメント(3) | トラックバック(0) | 命曼荼羅

コメント

各種エクササイズとは?

ブログ主様、こんにちは。
いつも興味深く記事を拝見させていただいています。
また、先月質問した際には、「ミトコンドリア・ミステリー」の書籍を紹介していただき、ありがとうございます。
さて、各種オートファジーを活性化させるよう、少食・ストレッチ・各種エクササイズに励みたいと思うのですが、各種エクササイズとは具体的にどのようなものになりますか?
ご回答いただけるとありがたいです。

2015/02/27 (金) 18:02:33 | URL | fukuchi #- [ 編集 ]

簡潔に言ってどういう実践方法を?

ネバネバヒート養生法の具体的な実践事項を簡潔にまとめていただければと思います。 
  また予防が最高の医療との御主張はもっともですがイザがんになってしまい更に再発した場合も有効なのでしょうか。HSPには従来から関心がある者です。

2015/02/27 (金) 20:03:33 | URL | koganei #- [ 編集 ]

回答は

本記事にアップいたしました。

ご参照くださいませ。

2015/02/28 (土) 04:43:00 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

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