癒しの原点 28

「クスリはみな気の偏(かたよ)りなり。上薬(じょうやく)といえども、そのヤマイに応ぜざれば害あり。いわんや中下(ちゅうげ)のクスリ、元気を損じ他病を生ず。鍼は瀉(しゃ)ありて、補(ほ)なし。ヤマイに応ぜざれば元気を減らす。灸もそのヤマイに応ぜざるに、みだりに灸すれば、元気を減らし気を上(のぼ)す。クスリと鍼灸と、損益ある事かくのごとし。やむ事を得ざるにあらずんば、鍼、灸、薬を用ゆべからず。ただ、保生(ほせい)の術を頼むべし」

貝原益軒著『養生訓』巻第一、総論・上の15番の文章のシメの言葉です。この15番についてはひと言で言えばゼアトロニック「医原病」についてのくだりであると解釈すればよろしいかと存じます。

漢方薬にしろ、鍼灸にしろ、あくまでこれは症状があるケースにおいて処方使用すべき医療であり、たとえ副作用や誤治(ごち)の危険性が他の医療に比して限りなく低いとしても、

やはりむやみに健康増進のために朝鮮人参を飲んだりすることはタブーであると諭しております。

私は鍼灸師ですので、鍼灸の効能に精通しております。貝原益軒は鍼灸師ではなく、あくまで儒医という立場からの提言ですから、実はこの鍼には気を減らす作用があるとか、

灸すらも元気を損なうなどの文言に関しては、大いに異論を挟みたく思いますが、これはこれまで私の論説を読んで下さっている方々にはすでにモロモロと既知の案件ですので、あえて今回は大々的に反論しません。

誰もが自分の手で自分のイノチを養うという視点で書かれた実践的かつ哲学的な養生指南書『養生訓』の立場から言えば、

あくまでクスリや鍼灸はこれは素人ではおいそれと手が出ませんから、こういった素人に対する注意として益軒先生は鍼灸に関しても注意を促しているという見方でいいと思います。

さらにこの文脈でいけば、今のネット時代にはただの素人がまるで健康や養生に関するプロのような顔をして、したり顔で意味不明な論説を展開し、そこら中からヒトサマの説をコピペしまくり、

あのISISばりのコラージュ全開のヒトのフンドシで相撲をとりまくり貼り付け論を展開しつつ、高額なプラシーボ機械を購入させんとするステルスマーケティングなブロガーが跳梁跋扈しております。

こうした素人の生兵法は大怪我のもとであることをよくよく自覚し、みなさんにおかれましては『養生訓』の精髄をここで読み取って、養生に関するリテラシーを磨いて頂きますれば幸いに存じます。

さて、ウイルスなんですが、これまで小出しにしてきたウイルスに関する新情報を少し綜合して整理してみますと、

今から110年前にオランダはデルフトにある自身の研究所でマルティヌス・ベイエリンクがタバコモザイクウイルス(TMV)を発見して以来このかた、ベイエリンクが命名した

ラテン語で「毒」を意味するウイルスの毒作用の研究ばかりにここ110年間はスポットが当たってきました。

しかし2001年にヒトゲノムの全配列が解読されるとヒトゲノムには機能遺伝子としてセントラルドグマを駆動するタンパク質を合成するデータが保存されているエクソン領域は

全配列のたった1.5%しか存在せずに、残りの98.5%のイントロン領域が未知の領域であることが判明し、これを「ヒトゲノムのパラドックス」と呼ぶことにしたのだが、

その後の分子解析の発展により明らかになったことは、このヒトゲノムのイントロン領域の実に46%もが過去の生命史においてウイルスが感染した痕跡であることが判明した。

そしてこのヒト内在性レトロウイルス領域やDNAトランスポゾンと呼ばれるイントロン領域はヒトの通常生理においては、脳内のタンパク質を合成したり、妊娠時の胎盤合成に関わる重要な働きをし、

また逆にそれだけでなく免疫疾患や癌化などヒトの疾病においても何らかの原因になっている可能性があるとの研究が鋭意継続中である。

こうしたヒトゲノムとウイルスとヒト生理に関わる案件から透けて見えてきた新たなパラダイムがいわゆるウイルスと生命種との「共進化」という概念であり、

ウイルスはどうも生命進化を動かす大きな原動力であることがわかってきた。

また平均して細菌つまりバクテリアよりも1000分の1の大きさしかないウイルスが、細菌に感染して細菌を殺す作用があり、

その作用により海洋ウイルスは海洋細菌のスカベンジャー(終末処理係)の役目を果たし、

海洋ウイルスが海水中の有機物のバランスを維持する海洋生態系における重要な位置を占める存在であることも把握されてきた。

この海洋ウイルスの事例を敷衍すれば恐らくは土壌中の土壌ウイルスもまた土壌バクテリアを分解することで土壌の有機物バランスを保持していることは容易に想像できるし、

また腸内に常在するT4ファージのようなウイルスが腸内細菌を分解することで腸内環境を整えているだろうとの予測も立つ。

つまりこれまではこうした環境中の有機物や元素の循環の担い手はバクテリアが一手に引き受けていると認識されていたのだが、

さらにその下部をくまなく覆うシステムとしてのウイルスによる生態系の維持という側面があらたに浮上したパラダイムシフトとなろうか。

わたしたち生命界は実はウイルスというお釈迦様の手の平に乗せられた存在なのだ。

ウイルスあっての命。ウイルスあっての地球。

敵こそ味方なり。

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2015.01.29 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 命曼荼羅

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