羅鍼盤 2

病気の原因がたったひとつのファクターにあり、このファクターを取り除けばその病気は予防できるし、治療もできてしまう、といういわゆる「 1 対 1 要素還元論」のロジックは実に魅力的とみえて「こうすればガンは予防できる」とか「ガンを治す秘策はこれだ」とのたまう論説は今やチマタにゴマンと陳列中である。

そしてこれらのシンプルロジックの帰結点となる殺し文句は「だからこれを摂取すれば良い」の何かを身体に取りこませるショックドクトリン的で霊感商法的な購買誘導というのがだいたいのお決まりのパターンである。

上手に病態メカニズムを紐解いて、ほらこんなに簡単な事で万病が予防できて治療できるんだよ、という魔法のようなささやきは、耳障りがいいし、心地よい幻想に耽溺したい癌ノイローゼ気味の不安神経症的な性癖の大半の一般人を虜(とりこ)にする。

ようはみんな健康になる秘訣を分かった気になりたくて、分かったふりをすることで安心したいのだ。そして都合の良い事にそれは簡単にネットなどを検索すれば誰でも手に入るモノにこしたことはないとまで思っている。

安直に誰もが「命の何たるか?」など分かるわけがないし、ヒトサマの身体をじかに触り続けた者にしか到達しえない境地があることなどに、まったく思いも寄らない健康オタクの素人は時々、とんでもない行動に出てヒトサマを驚かせる事がある。

さて、そういった今や健康オタクがトレンドかと錯覚でもしたような者まで出現している健康ファシズム時代において、それらの者たちが口癖のように上から目線で「これさえ知れば怖くない」のプラシーボな呪文が効果を発揮する対象はと言えば、

これはあくまで医学の素養がない素人さんに対してほんの限定的な効果を発揮するというだけのことであり、通常の西洋医学なり東洋医学なりの医学を学んだ者は決してこういった稚拙な口車に乗せられることはないのである。

少し前からイタリア発の「ガンの原因は真菌である」というロジックがネットを席巻して、この真菌ガン?の治療と称する重曹の利用が声高に叫ばれており、わたしのコメント欄にも非公開でこの論説について意見交換を求めるコメントが寄せられた。

その際には非公開コメントに対する返事として、少しぼやけたニュアンスの解答をしたのだが、今回少しハッキリとした解答をしたく思う。

そもそもガンが真菌に感染することで発症するというエビデンスがどこにあるのか、どれだけあるのか、本当に存在するのか?がまったく不明なのだが、

例えば腹腔内の腸扁桃パイエル板に存在する人体の70%近くの免疫細胞が集まる免疫の関所において、もしもここに常駐している腹腔マクロファージの活性が冷たいモノの飲みすぎや食べ過ぎで低下したりすると、

腸内常在菌の嫌気性菌が腸壁から腹腔マクロファージの捕捉を逃れて血液中に侵入してしまい全身の細胞に血行性にばらまかれる「播種(はんしゅ)」と呼ばれる不顕性感染(ふけんせいかんせん)という現象があることは、よく知られた病理現象であったが、

このロジックでいけば、つまりは腹腔マクロファージの活力の低下に伴う常在バクテリアの腸内からの感染と、腹腔マクロファージの活力低下に伴うガン細胞の増殖は、同じく腹腔マクロファージの活力低下が原因であるとは言えるのだが、真菌の感染によってガンが発生するとする根拠はどこにもない、となる。

つまり免疫力の低下は感染性疾患を引き起こすと同時に、ガン罹患率を高めるというのは事実だが、ガンの原因が真菌にあるとするエビデンスは病理現象においては単なるフィクションなのだ。

そして、これらの作り話であるところのフィクションから導き出された重曹の活用が果たして、ガンを一掃するだのという妄想がこの先、どれだけ継続できるのかは知るよしもないが、

まともな医学の素養があれば、これらのイカサマ臭たっぷりな論説の虚(きょ)などはいとも簡単に、ヴィクトルよりは60%も減退している嗅覚受容体でも正確に嗅ぎわけることなど朝飯前に決まっているのだ。

結局はネットや書籍で展開される「ガンは解読された」のたぐいの論説などは、ほとんどはこの程度の実に浅薄なショックドクトリン的なコンテンツが大半であり、こういったチマタのガン論争に何も見るべきものがないことには何度も私は言及している。

何でもそれらしい物件を手当たり次第に拾えばいいってもんじゃあない!ホンモノとニセモノを見分ける能力のある者だけが、コツコツとデータを解析してホンモノを公開するのである。

そしてそのホンモノは決してそれほど大げさに上から目線でモノを言うことはないし、意外に地味にちょっと弱々しくコソッと「ネバネバヒート養生法」とだけ口ずさんでみたりするものなのだ。

ビタミンやミネラルや他の必須栄養素の不足に伴い様々な疾患が発生するという論理はこれは常識的な栄養学のロジックであり、特にこれ自体に問題はないのだが、だからといってビタミンが不足したからガンになるという論法はこれまた暴論と言わざるを得ないだろう。

ビタミンが不足して発症する疾患の代表的なものには、ビタミンB1の不足が原因する脚気が有名であるが、脚気は古来日本では「あしのけ」と呼ばれた病態を意味し、非常に広範囲の症状を指す疾患名であることは意外に知られていない。

脚気論争は明治初期の日本の医学界を騒がせた一大事件ではあったのだが、それはさておきビタミンB1の不足による脚気が克服されて久しいのに、なぜビタミンB1の不足がガンを大発生させているという論理がこれまた持ち出されているのか皆目わかりません。

脚気患者がほとんどいないということはビタミンB1が不足せずに足りている証拠だろう。であるのならビタミンB1の不足によってガンが誘発されているという論理的根拠がどこにあるのかを示すのが道理だろうが、こうしたビタミンB1の不足でガンが大発生しているというエビデンスなど一切公開されないことをもって、

やはりこのビタミン不足がガンの原因である、とのロジックもまた妄想と言わざるを得ないのだ。例え口から摂取するビタミンが不足しても、腸内細菌がビタミンを合成することはよく知られているし、

ビタミンが不足する飢餓に陥ってガンが増大するわけでもなく、むしろ断食などの強制的な飢餓状態によってガンが治癒する場合すらあるというのだから、ビタミンの不足どころではない、あらゆる栄養素の不足という生命の危機的状態においてなぜヒトの治癒力が活性化するのか?

のマイナス栄養学を研究する方がよほどガン解読には多くの示唆をもたらすだろうと予測できる。それでここから断食の効用が説かれ、少食健康法だの、1日1食だの、糖質制限だのというまた飢餓嗜好型ダイエットとも呼べるカテゴリーが最近はトレンドになりつつある。

ただこのマイナス栄養学ダイエットの細胞賦活メカニズムもいまだによくわかっておらず、さらに糖質制限がガンを含む万病の予防になるとのとんでもない暴論まで世間を席巻するに及んでいる

この「なになにを摂取せよ」プラス栄養学と「なになにを制限せよ」マイナス栄養学が混在する健康カテゴリーにおけるカオス状態は、はっきりいって余りに稚拙だと言うのもそろそろわかってきた方が良いだろう。

結論としては本当のところ人間が何を食べたらいいのか?などまだ誰にも分からないし、人類はここ700万年史においてあらゆるモノを食べて命を養ってきたことは事実なのだから、

何を食べてもそれなりに身体にはイイし、また何かが不足すればそれなりに影響はあるし、何かが不足することでバックアップ機構が活性化して、かえって体調が良くなることもあると、

まったくプラスもマイナスもすべて命を養う方向へと導いてしまう命のありようには食餌問答の混乱をよそに感嘆せざるを得ない。

ここまでダラダラと書き進んできて、読んでいる読者の皆様もそろそろ「こいつはいったい今回は何を言いたいのか?」と呆れて痺れをきらしていることだろうから、

本稿の結論めいたものに移りたいが、ようは健康になる方法もヒトから与えられるだけでなく、みずからが苦労して実践を通してつかみ取るという作業をすべきと提言いたします。

誰かを頼りにすれば、もしもそれが効を発揮せねば頼った誰かを責める気持ちが生まれてくるものですが、みずからがみずからの意志で取り組んだ場合には誰も怨む必然は生じません。

いつまでもミトコンドリアだけにガン原因の責め苦を負わせるのは、あまりに可哀想じゃあないですか?

ミトコンドリアは原始真核生物に共生したその時に、ホストと共に共生する道を選択したんですよ。そうミトコンドリアは常に私たちと一心同体なのです。いや私たちそのものです。

解糖系とミトコンドリアを別なモノとして捉えるロジックは「ワールブルグ効果」のセオリーによって生じてしまった弊害だったのかもしれません。

「ひとつを知ることで、ひとつに縛られる」この線形ロジックの呪縛から逃れる方法は、徹底的にドグマの反芻を嫌うというアヴァンギャルドなスピリッツあるのみなのです。

かつての自分はまさに線形性の呪縛の申し子でありました。

オートファジーやリソソームという細胞内の分解系に、今少し熱視線です。

あっ、これまた線形呪縛に陥りそうで怖いです。

スポンサーサイト

2014.12.30 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 命曼荼羅

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

kouhakudou

Author:kouhakudou
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR