The dawn of Harii 12
ものの本によると私たち人間には「情報食動物」という側面があり、口から食べ物を欲するように大脳が新しい情報を常に求めているという。
新しい情報ということはすでに見聞きした情報では満足しないということなのだ。
外部環境のセンサーとしての嗅覚をはじめ五感の感覚器のすべてを100%動員して、微妙な環境変化を知覚することは自然界においては生き残る上で極めて重要な機能なのだが、
この生命体としてのサバイバル体質が、やがて変化を楽しむ好奇心のベクトルへと移行したのが特異的にメガ容量の情報処理デバイスである大脳をもつ人間ということになりそうだ。
私も本ブログでは実は常に新しい情報を提供することをこれまで試みてきたつもりだ。むろん読者に対するサービスでもあったのだが、なにしろ私自身がまさに常に新しい情報を欲しており、以前に書いた内容と同じでは飽き足りないので、
必然的にそうなったまでである。本シリーズもまた新しい側面を見せる試みとなっております。
アクセス解析ページがまた見られるようになりまして、ここのところのアクセス数の動向から意外にもマニアックな本シリーズにおいて読者数が増えてきていることが判明いたしました。
ということで、前記事で触れたミトコンドリアに関する新しい知見をもう少し公開してみたく思います。
ミトコンドリアは12億年前に原始真核生物に共生した際に自身のミトコンドリアDNAを活性酸素や有害物質から守るために、核膜というシェルターにパックされたホストの細胞核内に疎開避難させる措置をしたという話しを前記事ではしました。
しかしすべての m t DNA をその疎開の際に細胞核に水平遺伝したのではなく、少しだけATP産生に必須の遺伝子を含む m t DNA をミトコンドリアは疎開させずにミトコンドリア内にとっておきました。
これによってミトコンドリアという原始バクテリアを祖先にもつ原核生物は完全にホストである宿主細胞の細胞内小器官、オルガネラの一部になったのです。
ミトコンドリアの祖先はスノーボールアースという地球まるごとが凍り付いた後に酸素濃度が急上昇するようなとてつもない地球環境の激変を生き抜くために、未病治の措置としてみずからを変化させて、真核生物の体内で生きるという共生の道を選択したのです。
ミトコンドリアの祖先がこのような共生的な生きる道を選択したことで、わたしたちユーカリア・ドメインというミトコンドリアや葉緑体という共生オルガネラを含む動植物界が誕生し、進化し発展できたのです。
面白いことにどういうわけかミトコンドリアは不死身のようです。ホストである個体が絶命した生命体からパラサイトであるミトコンドリアだけを採取して培養すると条件が良ければ、このミトコンドリアは永遠に生きるようなのです。
それもそのはず m t DNA の形状は二重鎖のリングであり、末端がなく輪としてつながっているからなのです。ヒト細胞核DNAには染色体末端が存在し、そこには細胞分裂の回数を決めるテロメアという塩基配列があり、
このテロメアによって細胞の分裂回数が決定されており、細胞分裂の限界に達するときにホストもまたこの世を去る仕組みができあがっています。
これがヒトではだいたい120歳の寿命というところです。ところがミトコンドリアDNAは環状でテロメアはありませんから、永遠に細胞分裂が可能であり、よって永遠の生を得ていると言えるのです。
あるいはHela細胞と呼ばれる子宮癌由来のガン細胞もまた不死であることはよく知られています。
ガン細胞は通常はテロメアが機能不全を起こしてずっと細胞分裂できる状態になってしまっているのですが、果たしてガン細胞というものそれ自体は不死身になることで
悪化した環境で生き残ろうとしただけだと、ここでもガン細胞は正常細胞のバックアップ細胞という側面が見られるようです。
ミトコンドリアが機能不全に陥った際にワールブルグ効果を得てガン細胞が誕生するのも、不死のミトコンドリアが死滅したからその身代わりにホストの細胞がガン化することで、不死身のガン細胞になってミトコンドリア分のATP産生をまかなうのかもしれません。
生命体にはそれぞれ寿命があります。それはそれぞれの染色体末端にあるテロメアによって規定されています。
上手に養生をしてゆっくりと細胞分裂をしながら過ごせば寿命マックスを生きることができて、その生命体は大往生します。
しかし生前のどこかでテロメアを激しく使い切り、細胞分裂をし過ぎるような過酷な労働をしいたり、過度な精神的ストレスを受けると細胞分裂というリモデリングカードを使い果たしてしまい、寿命いっぱいは生きられません。
もしも寿命が尽きなくとも、余命を生きることが許される場合にはやはり何らかのエイジング的な症状が付随してしまいます。
癌や変性疾患に罹ってしまう方の生き方とはテロメアを大事にしないで、どこかで使い果たしてしまったのではないのか?と最近扱った患者さんから「気づき」をもらいました。
例え生まれつき身体が弱くても命を大事にするライフスタイルを実践すれば、決して早死にはしません。
ネアンデルタール人の寿命はだいたい35歳前後だったと推定されています。彼らの生活は身体を酷使するそれはそれは余りに過酷な生き様だったということです。
「つよき人は、つよきをたのみてつつしまざる故に、よわき人よりかえって早く死す。体気よわく、飲食すくなく、常に病多くして、短命ならんと思う人、かえって長生きする人多し」貝原益軒『養生訓』
不死のガン細胞を手に入れることなく、ミトコンドリアをめいっぱい活用する生き方を選択することで、わたしたちは120歳の大往生を獲得できるのです。
ガン細胞は私たちの不死への憧れが生み出した細胞なのかもしれません。
ホモサピエンスはネアンデルタール人よりも体が弱かったから、ここまで絶滅しないで生き延びたのだろうか?
現生人類は弱かったからこそ鍼灸指圧を獲得し、ミトコンドリアを滋養できたのだ。
2014.12.11 | | コメント(7) | トラックバック(0) | 鍼灸創世46億年記
