ブラックパール 19
南極の氷床においても通年のあいだ凍らない場所が一箇所あり、それは南極にある湖の中の水中で、湖面の表層が凍っても湖の内部までは凍らないので、ここだけには常時凍らない水が存在し、生命が躍動しているという。
この極限環境と言える南極の氷の世界のニッチ(すきま)でたくましく生きているのがそのへんのどこにでもいるコケという植物であり、南極の湖底には1000年をかけて80センチの高さにまで身長が伸びたコケの城がそこかしこにポコポコと宇宙ステーションか、はたまた地球外惑星文明の都市のように屹立し、
この円錐形のコケの宮殿の内部はというとバクテリアに浸食されて中空であり、横にスライスするとコケのバームクーヘンが入手できるといった形状で、もしも高さがあまり出てしまうと冬期の湖面表層の氷に触れてあっけなくコケ宮殿は頭部からボロボロと崩れ落ちてしまう程にヤワな作りなのだが、
このコケ城には昆虫類のダニや昨今話題のクマムシなる動物界で最強の生命力を保持しているとも噂される緩歩動物と呼ばれる妙ちきりんな形状の動物も共生していたりして、内部を浸食しつつ共生しているバクテリアと合わせてひとつのバイオスフェア(生命圏)というかエコシステム(生態系)がコケ坊主において成立しているのだ。
研究者によれば、コケ坊主の立ち居振る舞いからは原初の地球における生態系のスタート地点が見て取れるという。恐らくは27億年前に大発生したシアノバクテリアが繁殖した痕跡化石であるストロマトライトなどもコケ坊主の一種と見なせようが、であるのならやはりコケ坊主のナリから想像するに原初の生命体はコケに寄りすがって共生を開始したのかもしれない。
地球は原生代の23億年前と、7億年前と6億5000万年前の3回にわたり地球全土がマイナス40℃もの極寒環境に包まれてしまう全球凍結(スノーボールアース)を経て、またそれほど大規模ではなくとも小規模な氷河期を無数に経験しつつ、生命はこの過酷極まる地球で進化を遂げて現在に至っている。
多細胞生物の痕跡がはっきりと化石で確認されるのは今から5億7000万年前から5億4000万年前の3000万年間の地層で、オーストラリアはエディアカラ丘陵から発見されたエディアカラ生物群が有名であるが、恐らくはそれよりもかなり前の今から14億年前頃には多細胞生物がすでに誕生していただろうと推測されている。
だとしたら、この14億年前に誕生した多細胞生物たちは間違いなく7億年前のスターチアン氷河時代と、6億5000万年前のマリノアン氷河時代のマイナス40℃の洗礼をもろに浴びているはずなのだ。
彼ら14億年前に誕生した多細胞生物たちはいったいどうしてこのとてつもないエルサの魔法にでもかけられたような氷の地球時代を生き延びたのか?
ここにわたしは南極湖底のコケ坊主戦略があったと見て取るのです。
恐らくはマイナス40℃の地球世界のどこかに凍らない場所があったはずだ。スノーボールアース時には海面から水深1000メートルまでが凍っていたというが、そこではなく地表のどこか、例えば火山の噴火口などが沸々と下部から溶岩で温められる温水プール状の湖と化していて、そこでコケ坊主がフジツボの如くに噴火口湖の斜面にへばりつくように生きていたと仮説をたてれば、まんざらでもないかもしれない。
つまり全球凍結の中でも深海底の熱水噴出孔ではメタノピュルス・カンドレリのような超好熱菌が常時発生していたであろうし、地表のどこか温かい水中にはコケ坊主が旺盛に繁殖していた可能性があるのだ。
しかし、そうまでして生き延びる力すら削ぐほどの寒さが原始生命体を襲ったであろう。そのとてつもないストレスすらはねのけて、ついに低温、無酸素と適温、有酸素の環境で生存可能なシステムである解糖系とミトコンドリア系の2つのATPエンジンを兼ね備えた真核生物が繁栄していったのだ。
わたしたちヒトの生命システムもまた、この地球生命特有のハイブリッドATP産生システムを有している。はっきりいって本来的には人間も、クマムシやコケやバクテリアに負けない程の強靱で柔軟な生命力が備わっているんだけどね。
だからこそヒトは放射能環境に適応してガン細胞を増やして生き延びようとするわけで、今後は癌が多発するのは生命真理から言っても必然な現象となるが、ガンの自然治癒を受け持つガン免疫を担当するNK細胞やキラーT細胞やマクロファージらの免疫細胞を元気にしておけば、ガン時代である3.11後の世界を健康に過ごせる、はず。
ガンを治すには、この自分の免疫細胞を使ってのガン・アポトーシス誘導しか方法はないのだから!
免疫とは「疫病を免れ」て「自己と非自己を見分け」て「細胞の品質管理」を徹底して「病気にならずに健康でいる」ことを意味するのだが、それに付け加えて「生き延びる」ことと捉えるならば、コケやクマムシから学ぶところ大である。
コケもクマムシも環境に逆らわないで、水分がなくなり乾燥すれば自身も同化して乾燥休眠状態になり乾燥期間が過ぎ去るまで、乾燥休眠体でやり過ごし、再び水分を得ることが叶えば、またその水分を吸収して大きくなり繁殖するという。
今や地球文明は核利権によって支配され、地球生命種150万種を道連れに死の灰が累積される瀕死の惑星と化しているが、例え民衆の力でこれら核利権の暴挙を抑制できなくとも、なんとしても我が命やかけがえのない友人、知人、縁者、家族の命だけは存続したい、させたいと思う者は、コケやクマムシと同じくこの世界でたくましくサバイバルを繰り広げるしかない。
ヒトが最強の免疫力を手に入れる方法とは、わが免疫細胞の強化しかないのだ。
NK細胞は朝の9時と夕方の5時に活性化する。その間だけでも腹に手を当てて合掌したらいいだろう。
「腸にまします我らが免疫細胞よ、わが命を健やかに導かれんことを」
なんて唱えながらね。
2014.08.09 | | コメント(4) | トラックバック(0) | 免疫強化
