宿題の答え(故・間中善雄博士に捧ぐ) 2




ヒートショックプロテインというタンパク質は

身体がストレッサーに曝されてストレス(ゆがみ)状態に

陥った際に分泌される。

つまり体タンパクに何らかのひずみ、ゆがみ、

傷などが加わると即座にそれを治す機転が

発動する仕組みである。

この肉体は非常に厳密にみずからを

構成しているタンパク質の品質管理をし

命を維持している。

人体が健康であるとは別な言い方をすれば

人体のタンパク質が健康である、

ということになる。

ヒートショックプロテインは傷ついたタンパク質を

元どおりに戻す役割を担う。

使えなくなったタンパク質の折りたたみ構造を

引き延ばし分解しやすい1本の鎖にするのも

ヒートショックプロテインの役目であるし、

ユビキチン化されプロテアソームで分解されたアミノ酸や、

HSP介在性オートファジーで分解されたアミノ酸を

また数珠つなぎにし立体構造にフォールディングして

導くのもヒートショックプロテインである。

また出来上がった新品のタンパク質を必要な場所へ

運搬し道案内をするのもヒートショックプロテインだ。

つまりタンパク質の合成、修飾、運搬、分解と

タンパク質の一生を介添えするのが

ヒートショックプロテインだ。

それゆえにフランス社交界で新米の貴婦人が

デビューする時に手取り足取りそのデビューを

介添えした役目の年配の貴婦人シャペロンにちなみ、

ヒートショックプロテインの作用は

分子シャペロン作用と呼ばれる。

ヒートショックプロテインはシャペロン物質だ。

ヒートショックプロテインあっての

タンパク質であり、

ヒートショックプロテインあっての我々なのだ。

あらたなタンパク質を合成するためには

新しい素材のアミノ酸が必要になるが、

いつも食餌からアミノ酸が供給されるとは限らない。

飢餓時には口からいっさいアミノ酸を含む新しい栄養素は

供給できない。

だから飢餓時にはどうにか体細胞60兆個は

今あるものをリサイクルし急場をしのぐ。

細胞質には合成に失敗した出来損ないのタンパク質や

解糖系の副産物である乳酸と結合した乳酸タンパク質、

脳神経細胞内には変性したゴミのアミロイドβタンパク質、

はたまた遊離糖鎖と呼ばれる粘性物質の糖タンパク質までが

充満している。

この使われていない細胞質の変性タンパク質を分解し

アミノ酸に変換できれば例え飢餓に陥り

食餌から新たな栄養素が摂取できなくても困らない。

そのために細胞内にはオートファジーという自分の素材を

再利用するシステムが開発された。

ヒートショックプロテインが分泌された時には

新しいアミノ酸が必要なわけだが、

食餌が取れない状況でタンパク質がストレス状態になり

ヒートショックプロテインが分泌される事は

生命史38億年のあいだ日常茶飯事だった。

だからヒートショックプロテイン分泌と同時に

オートファジーが起動し、

速やかに細胞質の近場からアミノ酸を

供給するシステムが成立したとしても不思議ではない。

その方が自然なことであり、理に適っている。

飢餓応答型マクロオートファジーはその典型であろうし、

HSP介在性オートファジーなどもまさにHSP分泌と

共に起動するオートファジーである。

つまりヒートショックプロテイン分泌と

オートファジー起動は常に連動していると

私は見立てた。

ヒートショックプロテインが分泌されれば、

オートファジーも起動し、

細胞質はオートファジーによってクリーニングされ、

ヒートショックプロテインによって新たな新品の

タンパク質が供給される。

細胞は常にこうしてリフレッシュされて

いつもクリーンになっている。

生命とはかくも精緻なシステムにより維持されている。

古来よりヒトは生命の神秘に魅了されてきた。

古代中国人は生命現象を気や経絡という言葉を使い

説明しようとした。中世より後の西欧医学界は

人体の内部を切り開き解剖学を発達させることで

生命の神秘を解き明かそうとした。

伝統医学も近代医学も命の真相に

迫ろうとしてきた事に変わりない。

時代時代にあった身体観が芽生えるのは自然な事であり、

それを後代の人間が味わう楽しみもまたあるのだが、

いかにせん、2000年前の医学をそのまま利用し、

当時でしか通用しなかった言葉にまだ固執するのは

あまりに頑迷で融通がきかない大馬鹿者との

そしりを受けても致し方なかろう。

現代の鍼灸界にはパイオニアやカリスマが

たくさんいる事は知っているし、

彼らの発言がこの業界の思想潮流を

生みだしていることも事実だ。

しかし、気や経絡という用語をいまだに

そのまま使うことに何のためらいも感じない諸兄の

言葉には最早ひねくれ者の私は

何も感じない体質になった。

同じ肉体を見、同じ心身を診察している医療者が

まったく異なる言語体系を有し、

いっさいの交わりが断たれている現実に

危機感を持たず、相も変わらずに気と経絡の

安住の地に逃げ込みタコツボに浸る快楽を

満喫しているように私には見える。

現代医と鍼灸医が同じ土俵で向き合える言語体系を

作らなければ永遠に鍼灸界は浮上しない。

私は気や経絡などという用語を使用せずに

東洋医学を語りたいと思い、そうしてきた。

幸いにして今の私は2000年前の用語を使わないで

東洋医学を語るスベを既に手に入れた。

ヒートショックプロテインとオートファジーは

気や経絡に変わる新しい東洋医学用語になれる可能性がある。

間中善雄博士はX信号系仮説を提唱し

時代に即した東洋医学を志向した。

私はヒートショックプロテインとオートファジーの

ダイナミズムに陰陽の躍動を見いだした。

宿題に答えたかどうかは不明であるが、

出題ができた事は間違いないだろう。

「 X信号系 」を越えるための、

自問自答の日々が続く。





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2013.08.29 | | コメント(8) | トラックバック(0) | 原初免疫

コメント

意外でした

>気や経絡という用語をいまだにそのまま使うことに何のためらいも感じない諸兄の言葉には最早ひねくれ者の私は何も感じない体質になっている

これは非常に意外でしたね。
養生法の探求様のお言葉とはおもえない。
ツボという特定の場所の説明にはヒートショックプロテインとオートファジーは使えないのでは?

2013/08/29 (木) 09:00:15 | URL | 欽ちゃん1号 #99DFA69w [ 編集 ]

ノリ(笑)

ツボという特定の場所の説明にはヒートショックプロテインとオートファジーは使えないのでは?

不可能を可能にする、それが俺たち特攻野郎ミトチーム(笑)

2013/08/29 (木) 16:13:15 | URL | クチブラ #2JEUmp5Q [ 編集 ]

ノリ(笑)訂正

さすらいさんが放知技で紹介してた、情報数理研究室の北川高嗣教授の解説読んでると、先生が展開している理論展開が、如何に正しいかを裏付けますね。
今後も、ガンガン行きましょう(笑)

上記コメで訂正!
不可能を可能にする、それが俺達特攻野郎M-TEAM(勿論バックで流れる音楽は、日本語解説バージョンのあれで)

2013/08/29 (木) 18:34:17 | URL | クチブラ #2JEUmp5Q [ 編集 ]

ようこそ、はじめまして

欽ちゃん1号さま、コメント頂きましてまことにありがとうございます。

さて、今イチご意見の意図が分からんのですが、この鍼灸業界のウエのお偉いさん方が気や経絡なる用語を安易に使用することへの私の不快感という個人的な感情と、

私が自分の臨床の場においてツボなる特定の部位に鍼灸指圧を施し、そのツボ部位においてヒートショックプロテインが分泌されオートファジーが起動し治癒機転が発動すると説明することの二点間に整合性がないと言い切るのは、果たして妥当でしょうか?

私には全然関係ない事に思えますが。

業界の旧態依然とした姿勢を糾弾するのは業界の将来を思ってのこと。

ヒートショックプロテインとオートファジーにこだわるのはそれがもっとも東洋医学の治効理論をうまく説明できるだろうというこれも私の東洋医学界を思う愛情。

私の中ではすべて一貫しておりますけど。

そういう事なので今後ともよろしくお願い申しあげます。


ブラちゃん、いつも思うけど、ブラちゃんのコメ読むとめちゃ機嫌が良くなる。ほんといつもありがとう!

2013/08/29 (木) 19:13:25 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

ヒートショックプロティンとオートファジーを特定の局所領域に施すのと、テキトーに全体的に施す事の差は有りそうですね。

外部刺激を極小化した方が内部のシステムが自律的に活性化しやすいようなイメージが湧きます。

特定の局所領域を感じることがプロの腕なんだろうと思います。

2013/08/29 (木) 20:07:23 | URL | さすらいの旅人 #UJ6LMiGc [ 編集 ]

特攻野郎M-TEAM、隊長いきま〜す(笑)

さすらいさん、いつもありがとう。

プロなんて言ってね、既得利権をこさえるのが人間の悲しいサガ。そうやって生命の叡智を秘匿してきたのがもしかすると医療の闇なのかもしれません。

アッシは逆いってジャンジャン放出中だから(笑)

特定のツボなんて概念も後代になってから出来たものだし、先史時代にはツボという概念すらなかったでしょうね。ようはなんか堅い部位とか、痛いトコとかそんな感覚的なもの、の総体がツボ。

で、私は単純に乳酸タンパク質の蓄積した筋肉細胞がツボだと認定しています。で、この部位において鍼灸指圧を施すと、乳酸タンパク質が充満して原形質流動が滞った細胞質内がにわかに活気を帯びて、分泌されたヒートショックプロテインがオートファジーをも起動し、オートファジーによって細胞質内に漂っていたゴミである乳酸タンパク質がリサイクルされて分解され、ヒートショックプロテインによって弱っていたミトコンドリアが復活しATP産生が始まり、損傷の激しい老朽化したミトコンドリアはミトコンドリアの選択的分解機構であるミトファジーで分解され、あるいはHSP介在性オートファジー、マクロオートファジーも起動し細胞質や細胞内小器官がどんどんリニューアルされて綺麗になり新品のタンパク質が新しい家具の如くそこかしこに調度されてインテリアもピッカピカになり、凝りの原因物質であった乳酸タンパク質はグリコーゲンとピルビン酸やアミノ酸に変換されて跡形もなく消えてしまうのでした。

つまり凝りはヒートショックプロテイン分泌とオートファジー起動により解消できる、いや、鍼灸指圧で消すことができると断言できるのです。

このような凝りを古代中国人は気の滞りと称したに過ぎない。当時はまだ細胞生理学などないのだから乳酸タンパク質もヒートショックプロテインもオートファジーもミトコンドリアもATPも知らなかった。でも知らないなりに何かを感じ、それを表現した。その努力までを否定していないし、その限られた感覚や言語の中で最善の医療を模索し構築した東洋医学という世界遺産を私は尊重しているし、これほど素晴らしい医療はないとすでに明言しているわけ。

だっけど、いかにせん、気や経絡だけじゃあ現代人を納得させるのは不可能でやんしょ?と本ブログは訴えてきたんだけど、真意が今イチ分からんのはまあ、まだまだ努力が足りんのだろうね。

な〜んて殊勝な気持ちも束の間、特効野郎MーTEAMの隊長っすから、今後もぶっ飛ばします(笑)

2013/08/30 (金) 05:41:18 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

乳酸による炎症誘導

http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/24911/1/ocrf_40_26.pdf#search='%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%89%E5%88%86%E6%B3%8C%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E4%B9%B3%E9%85%B8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%82%8E%E7%97%87%E8%AA%98%E5%B0%8E%E3%81%AE%E5%88%86%E5%AD%90%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0'
「がんから分泌される乳酸による炎症誘導の分子メカニズムの解明」

ガン細胞から分泌される「乳酸」が、マクロファージに働き、炎症誘導に関わるIL-23産生を特異的に増強する。
IL-23は、多くの自己免疫疾患や炎症性疾患と深い関係が指摘されている炎症性サイトカインで、がんの進展や転移に大きく関わっている事が示されています。

ブドウ糖の代謝産物「乳酸」が、その発現誘導活性をもつ物質である事を発見。
多くのガン細胞は、酸素が充分存在していても、ミトコンドリアでのエネルギー産生を抑制し、多量の乳酸を分泌される事が知られています(ワーバーグ効果)。
「乳酸」は、多くのガン組織で働く炎症メディエーターである。

「ガン細胞からの乳酸産生を制御するピルビン酸脱水素酵素阻害剤ジクロロ酢酸が、免疫細胞にも働いて、担がんマウスにおける免疫状態を改善し、抗ガン免疫療法の効果を高める事を明らかにしています。」

ガン細胞から分泌される「乳酸」が、慢性炎症を引き起こす。
「乳酸」の過剰な蓄積が、諸悪の根源です。
乳酸は、天使と悪魔の両面を持っています。
乳酸はビタミンB群などが十分にあれば、ATPという大切なエネルギーに変わります。
しかし乳酸を代謝する物質が欠乏していると、血液や身体を酸性に傾け、糖化や慢性炎症の原因ともなります。
悪魔は元々は天使で、堕ちた天使、堕天使とも言われています。
乳酸を悪魔に変えているのは、現代社会の歪んだ食生活です。
乳酸を常にエネルギーに変えてやれば、病気は防げます。

乳酸をATPに変える代表的な物質が、ベンフォチアミンとジクロロ酢酸です。
ベンフォチアミン(B1)・ジクロロ酢酸(B15)は、ガン・糖尿病・ミトコンドリア病などを治す万能薬と言われています。
有害な乳酸の過剰蓄積を、有益なエネルギーに変えてくれるのですから、貴重な物質です。
その他のB群やマグネシウム・亜鉛などと協力すれば、より高い効果を発揮します。
ヒートショックプロテインも、乳酸除去に役立ちます。
「乳酸が諸悪の根源」
「乳酸はATPの資源」
乳酸を悪魔にするか、天使にするかで、健康状態はまったく違います。



2013/08/30 (金) 07:13:28 | URL | 鈴森 #- [ 編集 ]

特攻野郎ミトチームいいぞっ!

 今村隊長のブログをまじめに(?)読んでそのあとの不可能を可能にするコメントに向かってていうかモニターに向かって大笑いしました。
 いつもありがとうございます。元気でます。口ブラ隊員!(この駄文タイトルのとっこう部分を誤変換、特高てでたときはちょっとテンションダウンしましたが。)

 シャペロン物質のシャペロンがそんな意味だったなんてびっくりしました。わたしにとっての今村ブログの真骨頂はもちろん身体自治への真摯なる追求にあるのですがわたしはこの手の幅広い見識などもとっても買ってます!(ただで得してるんですけど)
またCGで描かれる体内の防衛機構の映像などに負けないイメージ喚起力でじっさいには目にすることのかなわない身体内の機序がすいすいイメージできちゃいます。もちろん誤解もあるだろうけどわたしは施療者ではないので完全自己責任だしだれも被害にはあわないのでご心配無用です。

わたしも今度間中博士の著書にチャレンジしてみます。暑い夏はミトコンドリアと一緒にへばってましたが。。

 先生、事故以前、県境のおおきな神社の広大な森が大好きでその木々の間を逍遥するのがたまの楽しみでした。しかしあの事故後、周辺の茶畑の葉の枯れや傷みにビビって一度も行っていません。
 最近の調査によると、やはり汚染の薄いエリアであっても地形によってホットスポットができているようです。
 木々たちは長い地球の歴史を生き抜いてきた力を持ってはいるものの近づくわたしたちはやっぱり放射能に対してはひ弱な気がするのです。何も気にしないで山歩きしてみたい。ナッツやフルーツ、シナモン、さといもなど植物たちにはお世話になっていますが、近づけないビビりのミトファンです。

2013/08/30 (金) 23:05:09 | URL | マツダマツコ #- [ 編集 ]

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