陽はまた昇る

「この間の海浜松原にて、須磨明石などの松原より大いに勝り、白砂に浮根の松の大樹数万本、筆に尽しがたき風景なり。海内広き事にて、辺鄙の地にかかる勝景ありても、誰知る人もなく、世にうずもれてある事なり」

江戸中期の地理学者であった古川古松軒が「西遊雑記」にてのこの発言はポスト311にあって一層の感慨を私にもたらす。江戸期には勿論のこと原発などなく浜辺に行けばみなこのような絶景が広がっていたのである。なんでもないそのへんの海辺に立てばそこには松の大樹が数万本も生えており、白砂が敷かれた浜辺とどこまでも清らかな海と潮騒の香りとささやきに身を浸せば、もうそこは仙境でありパラダイス以外の何物でもなかったのだ。

江戸期に来日した異邦人たちは口々に言った。この国は東のエデンである、と。それがやがてヤパン・インプレッションの波となり欧州を席巻し欧州各国の民主化を先導したのである。伝説でも何でもない。日本はかつて本当に黄金郷、エルドラドだったのだ。

妻の実家から数分の浜辺もまた白砂青松の景である。松の大樹が数万本はもう生えていないが、立派な松がそびえた海浜が広がっている。いつだったかまだフクイチがはじける前、上の子を妻が身ごもっている頃か二人で浜辺をぶらぶらと散歩した記憶がある。夕暮れ時の浜はオレンジの光に包まれ太平洋のうねりが美しい調べを聞かせてくれて、4億年前のデボン紀の記憶が蘇るような錯覚に陥った経験がある。妻はこの浜辺に抱かれて少女時代を過ごした。

この美しい浜辺から西方を仰いだ岬は御前崎。その向こうにはもちろんのこと原発が設置されてしまっていた。私が小学校1年生の時に浜岡原発の1号炉が稼働を開始した。それからは風下80キロ圏には死の灰がずっと降り注いだのだ。原発は通常運転ですら普通に放射能を漏洩する。あの100メートルにもなる高い煙突からは放射性希ガスであるキセノンやヨウ素やアルゴンやクリプトンが稼働する限りは吐き出されてくるのである。

また核燃料を包むジルカロイの被覆は原子炉内に発生する中性子をなるべく有効に利用して核分裂を行わせるために極限の薄さまで抑えてある。そのために被覆管にピンホールや破損が生じるのは日常的な事であり、放射能が冷却水中に漏れ出し、温排水となり太平洋を汚染するのは自明なのだ。「西遊雑記」で讃えられた白砂青松は1966年に茨城県は東海村で日本初の商業用原子炉が稼働してからすべて消え去った。日本の沿岸の浜辺や海は54基の原発ですべて汚染されてしまった。

私には悲しい思い出がある。それが恐らくは放射能のせいではなかったか?と想起されたのは311が少し経った後であった。米の核物理学者であるスターングラス博士のインタビュー記事に触れて震えるような衝撃を覚えたのだ。そうだったのか?あの忌まわしき原発からは通常運転で猛毒である人工核分裂生成物が放出され続けていたのか!ならば至近距離で少女時代を過ごし人生の前半を過ごした者には当然のこと放射能の濃縮があるのだし、いや風下40キロで少年時代を過ごした私の身にすら放射能は生体濃縮していたのだ。そんな事など何も知らずに過ごした子供時代。私は昆虫少年であった。

夏になると自分の胴体くらいあるバケツをタモに掛けて毎日のように川に向かった。土手が文字通りまだ土で出来ていた川にはウナギもいたし、今やレッドデータに属すタナゴもまだいっぱいいた。ザリガニは夏の頃に土手と川が接する部分に巣穴を造り子を身ごもる。卵をいっぱい抱えたお腹のメスのザリガニをつかまえるのはしのびなくいつの日からか子供は自然にキャッチ&リリースを覚えていった。狩猟本能に突き動かされていた少年の心にある種の自然への畏敬が目覚めていくのである。

それは誰に教わった事でもないのだ。捕ったフナやナマズをタライに入れて水道水を入れておくと一晩でぜんぶ死滅する。塩素消毒された水道水は自然の川で生きていたサカナたちにとっては高レベルの放射能汚染水に浸されるのと同じなのだ。何度もそんな愚かな殺戮を繰り返した少年は、やがて気づくのである。自然に生きている者は自然に置いてやらなければいけないと。そんな事を自覚した時には少年はすでに思春期を迎えタモはやがてペンやバスケットボールへと変わった。

虫取りと魚取りに明け暮れた少年時代。私の宝物である。あの幸せな日々にすら見えざる放射能の影がつきまとっていたのだろうか。少年は中学生になると花粉症というアレルギー疾患に悩まされるようになる。なぜ花粉症になる者とならぬ者がいるのか?今となるとよく解るのだ。実は花粉症とは花粉単独が抗原となる疾患ではないのだ。花粉と他の原因物質がミックスされて初めて発症する疾患である。

花粉と排気ガス、花粉と工場煤煙、花粉と農薬、花粉と化学物質、花粉と食品添加物、花粉と放射能。毒物に囲まれた現代社会においてはアレルギーを発症しない方が不思議なくらいである。アレルギーを発症しない者はより重篤な生体濃縮により別の疾患を発症する可能性が高い。たとえば癌である。であるからアレルギーにより排毒がすすむ事はむしろ喜ぶべき現象なのだろうか。花粉症など辛いだけである。

いくつもの多重要因が重なり複合毒素のチャンポンにより現代人は少なからぬ疾病を抱えている。それは文明の進歩につきまとう必然なのだろうか。いや進歩とはこのようなものを言うのではない。進歩したのなら環境汚染は無くなっていてしかるべきなのだ。そうではなく毒素が充満していくのだからこれは文明の後退に違いないのだ。このまま文明が後退し続けていけば最早、地球は生命を育む環境ではなくなる。

その徴候はすでに先進国の出生率の激減と死亡率の急激な上昇に見て取れる。すでに人類はレッドデータブックに記載されている生き物なのだよ。人口削減を目論む一部の資本家が生みだした膨大な毒素の中でも生き延びる知恵を身につける。よほどの知恵とスキルが要求される時代を私たちは生きていかねばならない。

体内に入った有毒物質はすべて活性酸素を生み、体細胞を酸化ストレス状態へと導き、老化を促進し病気を招来する。酸化とは電子が奪われた状態を意味する。電子大量喪失時代には電子を供給する養生法がふさわしい。鍼灸指圧は電子供与治療であるし、抗酸化物質を豊富に含む食養生もまた電子供与であるし、電子供与治療器で直接に電子を大量に供給する方法もまたポスト311にあっては貴方の養生の良き味方となるであろう。失われた物は計り知れないが、補う方法はあるのだ。

いつの日か、また、汚染されていない浜辺から昇る朝日を拝んでみたい。

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2013.07.01 | | コメント(7) | トラックバック(0) | 内部被曝

コメント

ありがとう

 読みやすい体裁にさっそくなってる!良き施療者ならではですね。
 そうはいってもべらんめえ調の立て板に水のご講釈も楽しみにしています。

 わたしはこの事故が起きるまで通常運転時の排気排水についての認識が全くありませんでした。(海温め装置で若狭湾が日本一のフグの産地になっていたことは知っていましたが)六ヶ所再処理工場が原発1年分のそういうのをたった1日で出すということへ抗議していたのですが、原発から出ているものはなぜだか微量と思い込まされていたようでした。いわゆる過小評価?
 聞けば、若狭の原発銀座周辺では地元の方の中には原発起因の疾病やそれによる偏見などの被害があったとのことでしたが認識が甘かったなあと。。というか、311後、関心を持ち紐解くなかで知り得たことですが、いまだになにもご存じない方が多いのですね。

 311の惨状を元に戻すことはできません。いえ、その進行を押しとどめることも。

 けれどもう原発は動かさない、それぐらい決めないと放射能汚染エリア拡大は加速する一方。内蔵する死の灰もまた積み上がる。

 そんなことぐらいでは何も変わらないもうあきらめようってそのまま進むのか、ここで立ち止まるのか。進むも地獄退くも地獄という状況なんでしょう。そして安直な方向に向いてしまう。もしかしたらどこかで止められるかもしれないのに。最小限にとどめる意味があるかもしれないのに。

 どうなるのかはいま大人であるわたしたちにかかっている。だれも経験したことのない壮大な物語の出発点に立っているような気がしています。(先生のお話が呼び起こしたイマジネーションなんです、こんな大きくなったハナシ、どう収拾しよ…汗)まあ もうちょっと頭を冷やしつつじぶんになにができるか探り続けます。

 

2013/07/01 (月) 20:07:31 | URL | マツダマツコ #- [ 編集 ]

>壮大な物語の出発点!

素晴らしい言葉ですね。まさにその通りです。

今から始めなければいけない事がこの言葉に凝縮しています。地球文明の行方を占う舵は実は地球に棲む民のひとりひとりが握っているのです。しかし、みなそれに気づきませんでした。それがここにきて311が勃発し少なからぬ者が覚醒し出したのです。最悪の事態が進行している今が最大のチャンスかもしれません。

内部被曝を防ぐ方策を探るとすべての疾患の原因が掴めてきます。そしてその疾患の原因を生みだしている者の正体と目的まではっきりと認識されてきます。一部の資本家たちは人口削減という悲願を達成するために医薬、農業、食、戦争、などを常時仕掛け、それぞれでショックドクトリンを敢行し今まで好き放題な事をしてきました。しかし、もうこれ以上の蛮行は世界中の70億近い普通の民が許しません。わたしたちが知恵とスキルを身につけて今度は反撃する番です。

そうなって初めて地球文明は宇宙文明へとパラダイム・シフトします。宇宙倫理に従う清らかな文明はもうすぐそこ、足元まで近づいています。あともう一歩です。共に実現しましょう。

な〜んて希望に満ちた事をたまには言ってみたいじゃん(笑)でもほんとここからです!

2013/07/02 (火) 05:10:05 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

フード・マタース

今村さんも、マツコさんも気合が入っていますね。
洗脳と隠蔽を跳ね除け、真実を知れば必ず解決策は見つかると思います。

http://www.youtube.com/watch?v=dgiR7awouZk
「フード・マタース」という映画の予告編が、とても素晴らしいです。
私はもう、何十回も見ました。
「食」の大切さを説き、「病気産業」の実態を暴く映画です。

2013/07/02 (火) 06:25:19 | URL | 鈴森 #- [ 編集 ]

駄文シリーズ

この文章を読んでごらん、これがリア充という珍しい生き物が書く文章だよ。ガクブル(by高彼連)元ネタは置いといて(笑)、食ってどこまで安全なんでしょうね?世界中の原子力施設から、毎日普通に汚染水が海洋や川に流されている訳でしょう。法律で禁止される前に投棄させた大量のドラム缶や、沈めた原潜だって海底を彷徨っているわけでしょう?汚染の無い海域て有るんですか?同じように、毎日大量に排出される原発施設からの排気ガスで、汚染される空気と広範囲の大地。どこが安全で、どこが安全で無いのか、素人には判りませんね、実際。福島みたいに何とか情報収集出来るパターンだったら、まだシミュレーションできるんだけど(笑)それ以外は、本当に闇の中だもんね。鈴森さん、フード・マタース面白そうですね。自分歪んだ見方する人間なので、なんでこの時期なのかなって?誰が資金出してるのかな?等々、疑問が湧いてきて楽しいです。ではでは。

2013/07/02 (火) 13:08:32 | URL | クチブラ #2JEUmp5Q [ 編集 ]

洗剤

こんにちは。フード・マタース、とても面白そうですね。食べ物って、自分で一から作らないと信用できないですよね。まったく、生きていくのは大変ですね。。。。私はアレルギー体質なので、甲殻類や灰汁の強い食べ物、ピリン系薬剤やステロイド剤などでアレルギー反応がおこります。洗剤や化粧品もほとんどのものが私には合いません。唯一、合成界面活性剤を使っていない昔ながらの「石けん」だけがアレルギー反応をおこさず使えるものなので、食器洗いから洗濯、洗髪、洗顔、お風呂と全てに使ってきました。が、
最近、食器洗い後の石けん残りが気になりはじめ、石けんもやめてみました。お湯だけで丁寧に洗うことにして3か月。まったく問題ないと思いました。そうなると、今度は洗濯物の石けん残りが気になりだしはじめ、洗剤無しで洗濯できるという「ランドリーリング」を使ってみました。
「ストラクチャーウォーター」というものが入っていて、それは〝水の中で、電気振動共鳴性を発生させ、全体の水の分子に変化をおこさせ汚れを落とす〟という原理だそうで、説明書読んでもよくわからなかったのですが、汚れやニオイは落ちているし、なにしろ私のアレルギー反応が出ないので私としては大満足で使用しています。
自家製の米の研ぎ汁乳酸菌を作っていて、入浴や洗髪や歯磨き・化粧水にはそれを使っているので、私の周りから合成洗剤が消え、体も心もとっても楽になりました。

昔のひとが暮らした生活に戻すのは無理ですが、少しだけでも近づきたいよね。
あとは、病院の消毒薬がなくなれば私としては万々歳なんだけど、これは無理だよね(笑)

2013/07/02 (火) 15:41:52 | URL | かおちゃん #tJwXaRLI [ 編集 ]

世界が食べられなくなる日

クチブラさん、かおちゃんさん、こんにちは。
「フード・マタース」は2009年製作、2010年日本公開の少し前の映画です。
陽はまた昇る、というタイトルにちなんで、この動画を紹介しました。
陽が昇る映像があるように、希望が感じられて好きな動画です。

http://www.youtube.com/watch?v=GPDM_v6TxrE
最近に公開された映画としては、「世界が食べられなくなる日」がタイムリーです。
震災後に作られた映画なのですが、遺伝子組み換え作物による食品汚染と、原発による放射能汚染とを同時平行的に追って、人類の危機に警告を発している映画です。
フランス国内での原発事故や、福島県の警戒地域を取材しています。
一部の悪質な人間たちの利益のために、多くの人々が犠牲になるという不条理を感じさせます。

2013/07/02 (火) 20:01:42 | URL | 鈴森 #- [ 編集 ]

ノンケミカル・レボリューション!

かおちゃん、化学物質フリー達成、おめでとう!すごいっすね。身の回りからケミカルが無くなるって。化学物質帝国を築いた連中も真っ青(笑)ようは人体に有害だからアレルギー反応が出るわけでさ。アレルギーの真の原因はアレルゲンじゃあなくて、ケミカル帝国ってわけだ。

江戸期のようなライフスタイルがいっち健康にはイイんでしょうね。幕末や明治初期に来日したガイジンどもはみんな日本人が健康で、子供がまた素晴らしくかわいくて健やかなのに驚嘆してる。昔の日本、明治前の日本はほんとに黄金の国・ジパングだった。

明治維新だの文明開化だのってのはプロパガンダな騙し言葉。はっきり言って日本は近代化というグローバル化で没落してしまった。白砂青松の長谷川等伯が描く「松林図屏風」の絶景はもう絵でしか見られない。でも、いつの日か、もしもそんな景色が復元できたらええのにな(笑)

2013/07/03 (水) 06:47:47 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

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