第二十九章 酸素の捕獲

古生代デボン紀(4億1920万年前〜3億5890万年前)の地層から見つかった最古の両生類アカントステガ。その身体にはすでに4本の足が生えていたが、まだ長い尾があり、肺呼吸は獲得していたが、まだ水中生活を主にしていた。私にはアカントステガはまるで現生のオタマジャクシのある時期、足が生えて尾が残る一時期の姿形にそっくりに思える。カエルは両生類であり、その幼生期にデボン紀の祖先の姿が再現してもおかしくはない。「個体発生は系統発生を反復する」のヘッケルの言葉の如く、カエルは受精卵が卵割を開始してから地球生命史の誕生38億年前からデボン紀までを反復するのである。

現生のメキシコサンショウウオ、アホロートル、通称ウーパールーパーには飛び出たエラがありそのエラを器用に使い水中を泳ぐように動き回るという。水温が低くヨウ素のほとんどない環境で育つゆえにサイロキシンというホルモンを分泌する事ができず変態せずに幼形のまま成熟する。この水生のウーパールーパーを人為的に陸揚げする。その方法は二つあり、①徐々に水を減らす、②陸に揚げて常時シャワーを浴びせる。こうしておくと、飛び出た外エラがどんどん縮んできて、皮膚呼吸を始めるのである。この皮膚の直下、皮下組織を解剖して見るとここで赤血球造血が起こっていることが判明した。酸素が大量に存在する地上環境にさらされて遺伝子の引き金が引かれるとこのような現象が起こる。これを専門用語で化生と呼ぶ。現生のウナギやドジョウもまた空気にさらされると皮膚呼吸を営む事が可能である。彼らもまだデボン紀に獲得した機能である皮膚呼吸を大事に遺伝する生き物と言えようか。

デボン紀に海中で栄えた骨甲魚はその表皮を堅いアスピディン骨格で覆っておりましたが、その外骨格の皮下において赤血球造血が行われていました。私たち人類は今は骨の内部、脊髄で造血します。骨にはリン酸カルシウムが蓄積されており、それらの素材は幹細胞産生には必須なのです。円口類のヤツメウナギなどは脾臓という腸管の一部で造血を行っていましたが、上陸と共に重力が負荷され骨がより堅く進化する際にアパタイトが骨で産生され、それと共に骨髄で幹細胞造血が営まれるようになったのです。これも重力の負荷による化生です。造血部位は①皮膚直下→②脾臓→③骨髄と変遷したのでしょうか?実は魚のエラももとは造血器であったとも言われます。造血の初期段階は酸素と接しやすい部位で造血が行われたと見るのが自然です。赤血球の役割は酸素を全身のミトコンドリアへ送ることにあるのですから、赤血球が出来しだいスグに酸素がくっつけば非常に機動的で効率がいいはずです。ウーパールーパーが酸素に直接触れる皮膚の直下で造血したのにはそんな合目的的な理由があったのでしょう。

ウナギやドジョウは皮膚呼吸を営むのですから皮膚直下で皮膚から吸った酸素を赤血球に受け渡ししているのです。そうするとあの皮膚のヌルヌルした粘性物質は空気に乗ってくる雑菌やゴミを濾過するための粘液と言えましょうか。人間が空気を吸い込む際にはまず鼻腔の粘膜で雑菌が捕捉されます。その役目をウナギやドジョウのヌルヌルが負っているのです。ダテにヌルヌルしているのではありません。乾燥から身を守り吸い込む空気を濾過するスグレモノがウナギやドジョウの表皮に分泌される動物性粘性物質であったのです。この粘性物質には乳酸菌や納豆菌が産生する微生物性粘性物質やオクラやヤマイモや里芋やナメコなどの植物性粘性物質などの仲間があり、どれも食せば免疫を賦活し、腸内常在菌叢をバランス良く養い、食品に混入する放射性物質を排泄してくれる非常に優れた食材となります。内部被曝を防御して健康を守りたいポスト311の我々にはまたとない素材こそが粘性物質なのです。

この粘性物質とは元はそれぞれの生き物が我が身を守るために身につけた物質です。乾燥や紫外線から身を守り雑菌を捕捉するために分泌したのが粘性物質です。それを有り難く頂けば人間もまた様々な刺激から守られるのです。人間は皮膚呼吸は営めませんが皮膚から赤血球産生を促すホルモン・エリスロポエチンを分泌できます。人間もまた皮膚からの物理刺激である鍼灸指圧で赤血球産生を促進し呼吸機能を活性化できるのです。デボン紀で獲得したであろう両生類の皮膚呼吸、ウーパールーパーが持つ生存能力は人間にあっては皮膚のホルモン産生能力として残存維持されているのです。灸治療はよく赤血球や白血球を増やし強化します。人間において酸素が赤血球に渡されるのは皮膚直下ではなく肺にある6億個の肺胞で受け渡しされていますが、鼻腔から吸い込まれた空気は完璧なフィルターであるワルダイエル咽頭リンパ輪を経由して肺胞に入りそこで酸素は赤血球のヘモグロビンへと付着し全身のミトコンドリアへと運ばれます。ミトコンドリアへと酸素を運ぶために呼吸器は化生し進化し続けたのです。

魚類が両生類や爬虫類へと進化し、さらに鳥類や哺乳類へと変化していったのも、より良い酸素獲得のため、つまりはミトコンドリア内の酸素呼吸を活性化し、酸化的リン酸化を促進し、より多くのATPを獲得するためであったと言えるのではないか、と想像します。進化の原動力こそがATP獲得のためであった?

私たちは酸素を捕獲しミトコンドリアを活性化するために日々生きているのです。

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2013.06.05 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 鍼灸創世46億年記

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