第二十一章 ツボの始まり

動物は食と性の二相を求めて動き続ける生き物である。しかし性は食のエネルギー供給があって始めて可能な営み。余ったエネルギーが生殖細胞に回される。まずは自己が生き延びるために食を求めてさまようのが動物の本性。アリストテレスは生命とは「受けて出すもの」と言った。目に見える飲食物という物質と目に見えない重力や磁力や電気力や音波などの物理的な力である非物質が絶えず流れ込み代謝されて渦を巻きやがて不用となった物が排泄される世界が生命の世界である。この渦の中心こそがミトコンドリアの電子伝達系における水素イオンが起こすATPアーゼの回転力。太極マークは1京8000兆個のミトコンドリアでとぐろを巻き続ける。ATPなくば動物は死に絶える。動物はATPを獲得するために食を求めるのである。すべてはATPのために。それこそが動物を動かす原動力である。

足にある有名なツボに足三里がある。松尾芭蕉が「奥の細道」にて「三里に灸すうるより松島の月まづ心にかかりて」と語り人口に膾炙したツボである。足の陽明胃経と呼ばれる経絡上にあり、膝下の脛骨と腓骨の付け根にポイントを取る。デボン紀後期の硬骨魚類ユーステノプテロンのヒレにはすでに脛骨、腓骨、大腿骨が揃っていた。つまり足の三里穴(あしのさんりけつ)はデボン紀には完成していたのである。生物の形態変化のトリガーは常にミトコンドリアの能力を最大限に発揮する方向で進むと私は仮定した。あくまで仮説であるが今後その仮説を検証しながら論考していきたい。

古生代カンブリア紀からデボン紀末にいたる約2億年で体長2〜3センチのミロクンミンギアが体長1.2メートルのユーステノプテロンにまで巨大化した。そしてヒレにはすでに足の原器が出来上がっていたのである。ミロクンミンギアとハイコウイクチスはどう見てもか細く、生態系の下位に属していたであろうと見なせる姿形であるがユーステノプテロンは堂々としたナリでありこれはむしろ生態系の上位に属していたと予想できる。ミロクンミンギアは三葉虫やアノマロカリスやオパビニアから逃げ回り生き延びようとした。もっと速く泳ぎたい、もっと強くなりたいと願った。願い続けた。必死に脊椎をくねらせ上下に左右に動かしたその動きはやがて強大な脊椎を支える筋肉へと発展し丸太のような魚雷のようなとてつもない勇壮で美しいボディを与えた。ミロクンミンギアのか弱い身体は見事に2億年後ユーステノプテロンへとメタモルフォーゼする。獲得形質は遺伝しないだって?古生代の魚類のナリの変遷を見るだけでラマルキズムの再評価は可能だろう。

「筋肉は使わなければ痩せおとろえる。
筋肉は適当に使えば、現状を維持するか、発達する。
筋肉は過度に使えば、痩せて障害を起こす。」
生物学者ルー(Roux)の法則

ミロクンミンギアは筋肉を使ったからこそ大きくなったのだ。筋肉を使うとその筋細胞内のミトコンドリアが旺盛に働く。酸素と栄養素と光エネルギーを利用して酸化的リン酸化を行い莫大なATPを筋肉運動の原動力に供給する。すると筋細胞はもっともっとATPを供給しようと太ってくる。ミトコンドリアが分裂増殖する筋細胞の容積を拡張するために筋細胞が太るのである。ミトコンドリアはよく使われる筋肉内でより増殖分裂し発展する。この過程をルーの法則は説いてるのである。筋肉を使わないとミトコンドリアの必要性が減じミトコンドリアは生息数を増やさないので筋細胞も衰える。筋肉を使いすぎると活性酸素が大量に流出してしまい細胞膜が傷つき筋肉痛が発生する。ルーの法則もまた進化論と同じくミトコンドリアを基点に翻訳できてくる。ミロクンミンギアはミトコンドリアに導かれユーステノプテロンまで肥大した。

肥大して重くなった自重を支えるためにはヒレに肉と骨でできた支柱が必要だった。その合目的的な理由によって遺伝子のトリガーが引かれユーステノプテロンには肉鰭が付与された。水中では6分の1Gの重力しか負荷されないが自重が重いことには変わりない。肉鰭を得たユーステノプテロンは海底を這い回り始める。これこそが最初の1歩だったのだ!両生類に進化したイクチオステガが地上にファーストステップを刻印する前にすでに海中で充分に歩いていた生き物がいたのである。海底歩きのタメの時代があって後に陸上歩きが可能となったのだ。

脛骨と腓骨の根元にあるツボ足三里を押すと胃が動き出す。これがリアルに体験する「内臓体壁反射、体表内臓反射」である。昭和初期に京都大学生理学教室で立証された動物の肉体に宿る真理。腹が減ったと感じたユーステノプテロンのヒレに力がこもる。古生代の海底で感じた空腹感が足三里と胃の反射をつないだのだ。

足の陽明胃経はデボン紀の海底に起こる。

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2013.05.17 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 鍼灸創世46億年記

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