第十八章 姿形(なるべくしてあるすがた)

今から5億4100万年前の古生代に始まった魚類進化は体長わずか2〜3センチのミロクンミンギアとハイコウイクチスからスタートしたが、古生代末期のデボン紀にはすでに魚類は多様化しそのフォルムもバラエティに富んだ。すでに繁栄していた無顎類や刺魚類に加えて固いヨロイにおおわれた板皮類やサメの仲間の軟骨魚類も出現し硬骨魚類のシーラカンスの仲間や肺魚類も見かけ始める。魚類は無顎類、軟骨魚類、硬骨魚類に変化し現在に至る。無顎類で今も生き残っているのが円口目のヌタウナギとヤツメウナギであり、軟骨魚類ではサメとエイが、硬骨魚類では現生のシーラカンスやオーストラリアなどに棲息する肺魚が生きた化石である。名古屋港水族館で見かけたオーストラリアに棲息する肺魚はまさに4億年を生き抜いた仙者の風貌であり磁力のような何か得体の知れない吸引力に引きつけられその場に立ちつくし凝視した思い出がある。生きたシーラカンスを見る機会はまずないが、デボン紀後期に両生類へとステージを移す立役者となる同じ仲間のユーステノプテロンにはすでにヒレの中に大腿骨、脛骨、腓骨の3本の骨があったという。まだ陸上へと歩を進める前になぜもうすでに足の長管骨が出揃っていたのか?海中においてヒレは水を掻くだけでなく、海藻の上を歩きでもしたというのか?陸上へと進出する脊椎動物の第2革命「上陸劇」の前後はまたとないエキサイティングな謎解きの舞台となろう。

さて、まだまだそこまで話しを進めるのは早過ぎる。もう少し古生代を堪能しようではありませんか。魚にも日内リズムがあり、夜は活動を休息するものがある。ウチの金魚はどうも夜間は水底に静かにしている事が多い。つまりキンギョもまた朝が来た事を感じ、夜が来ればお休みするのである。普通は陸上にいればこれらの時間感覚は主に太陽光線の量で判断する。日が昇り頭上まで至れば昼が来たことを察し、やがて日が傾き太陽が地平線に沈む頃に1日の終わりが訪れ夜が始まる事を知る。地上に生きる生物はすべて太陽の動きに導かれ行動していると言える。水中ではどうだろうか?もちろん水中にも太陽光線は到達している。どの波長の太陽光線を吸収するかで緑藻類、褐藻類など海藻の色の違いが生まれている。つまり海藻は海中へと到達する太陽光線を利用して光合成を営んでいる。海藻はその葉面の葉緑体、色素体で光りを捕獲するが、魚たちはその目、魚眼レンズで太陽光線を捉えているのだろうか?あるいは背中や背ビレ、脊椎周囲の粘膜やら筋肉が光りを感じているのだろうか?ミトコンドリアは好気性細菌のαプロテオ細菌が起源であるが、太陽光線を利用して酸素と栄養素から莫大なATPを生み出す特徴がある。ミトコンドリアの呼吸酵素チトクロムは太陽光線のソーレー帯の波長をよく吸収し活性化する。鉄イオンやマンガンイオンや銅イオンを含むチトクロム系のこれらの酵素群は太陽光線で活性化するのである。つまりミトコンドリアのATP産生には太陽光線のエネルギーが不可欠なのだ。であるのなら日の光を一番に浴びる魚の脊椎周辺にミトコンドリアが多数偏在する事には合目的的な明確な理由があると推定されてくる。つまり太陽光線を多く欲したがゆえに脊柱周囲の筋群にミトコンドリアは居を移したと。私は脊椎を中心に身体全体をより良く動かしたいが為に脊柱近辺の筋肉内においてミトコンドリアは分裂増殖したと仮説を立てたが、もう一つの仮説がこれで浮上したわけである。ミロクンミンギアの脊柱運動筋にミトコンドリアが多数棲息したのは①身体を自在に動かすため、と②太陽光線を摂取するため、の二つがあったと仮説を提示したい。

魚類が陸揚げされて両生類、爬虫類、哺乳類へとステージを移して行く過程において太陽はいつも燦々と輝き続けた。さて太陽光線はこれら脊椎動物のどこへ降り注いだのだろうか?いや、どこの部位で日の光を感じたのだろうか?もう言わずともおわかりでしょう。そうです。背中、背部、脊柱付近で常に太陽光線を浴びたのです。額の付近はフェイシャルアイと呼ばれもするポイントであるが人間はここからも太陽光線エネルギーを吸収する。トカゲの頭頂眼である光受容の眼は哺乳類にいたり内部に陥入し松果体という内分泌器に変化する。この松果体が産生するホルモンはメラトニンと呼ばれ、性衝動や日内バイオリズムや睡眠などと深く関わるホルモンであり、構造が酷似するセロトニンとの関連も注目に値する。よく日の光を浴びる事はメラトニン産生を活性化し、睡眠障害を治し、自律神経を調整し、ウツ症状を改善するのである。両生類から爬虫類、哺乳類まで顔を上げて四足歩行をした動物たちは常にお日様の力をその体軸である背部脊柱近辺で感じ、額で、オデコで、頭頂部で、うなじで、感じ続けて進化した。ヒトの額から始まり頭部へと上がり後頭部を経てうなじへと至り肩甲間部をかけぬけ背部、腰部を経てお尻の真ん中付近を抜けて大腿部の後部中心線を下りて足首の外くるぶしを通過して足の小指の先端まで到達する経絡を「太陽膀胱経・たいようぼうこうけい」と称する。なんと古代中国人は太陽エネルギーの照射する部位にそのまま太陽の文字を冠したのである。この太陽という言葉は陰陽の陽の中でもっとも強い陽性であるという意味が普通の解釈であるが、こうやって魚類から始まった進化の過程で動物の身体に刻まれた太陽光線の軌跡を検証するとなるほど、「太陽経とは太陽がトレースした経絡である」と解釈することが実に自然であると感じられてくる。

脊椎上と脊柱両側のツボ群は実に重要なツボである。ここを温灸で温めて遠赤外線を照射すれば脊椎動物史5億年で浴び続けた太陽光線の恵みが想起されミトコンドリア内の酵素チトクロムが活性化し電子伝達系が回転し出すのである。直接灸においても同様である。太陽光線はこの部位を温めてくれることでそこに棲まうミトコンドリアを生かしてくれたのだ。灸点直下に棲むミトコンドリアが飛び跳ねている様が眼に浮かぶ。背部のツボを灸で温めれば身体全体のミトコンドリアネットワークである経絡が賦活され身体全体が調整されてくるのである。ミトコンドリアにとって温熱と太陽光線は何よりの栄養である。いやトートロジー(同意反復)になるがツボとはミトコンドリアなのだから、ツボにとって温熱と太陽光は必須の物理エネルギーなのだ。温熱と光は通常は人々がツボと呼ぶミトコンドリアを賦活する。脊椎とその両側には養生のコツが、進化の歴史が充満している。

名古屋港水族館の肺魚の姿勢は美しかった。古武士を彷彿とするナリであった。あの真っすぐな脊椎。あの弧を描く背中の筋肉。4億年前デボン紀の水中に正しい姿勢の原点を見た。

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2013.05.13 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 鍼灸創世46億年記

コメント

濃い(笑)

先生、こんばんは。いくつかのカテゴリー、プリントアウトして読みました。目の状態が悪いので、液晶画面は余り好きではないので。ラーメンに例えると、油増し増しのコテコテ系ですね(笑)M子さんシリーズなどは、本当に濃かったです。ラーメンの濃いのは一杯で十分ですが、このブログは何杯でも行けます(笑)では。

2013/05/13 (月) 20:41:53 | URL | 邪ブラック #2JEUmp5Q [ 編集 ]

だって30年ものの出汁だもん(笑)

中学2年かな、故・川島四郎博士の本を手にとって性じゃなくて養生法の探求に目覚めたのは(笑)今年でもう30年ってことになる。なんでも地味に追及すればね、変人を支持してくれる方も出現するって事でしょうか。邪ブラックさん、いつもコメありがとうございます。何杯でもいけるブログ発言、最大級の讃辞と受け取りました。実は自分も紙媒体の活字の方が好きです。というか本が好き。持ち運び自由でね、電気も要らんし、じっくり読み込めるし、液晶の光も浴びない。そういった意味でもなんていうか自分の蓄積したものを紙に起こしてみたいなんて妄想が湧いてきて今回の企画を進行しているわけですが、最終的にはどんなゴールが見えてくるのか未来は未知です。M子さんシリーズは実在の常連さんとの会話がモチーフですが、だんだん若返りキャラが独り立ちしてしまいました(笑)けっこう私もお気に入りです。ラーメンは最近は担々麺が好きです。担々麺にも負けない濃厚ピリ辛記事、30年ものの出汁で生命史38億年を突っ走りまっせ(笑)

2013/05/14 (火) 04:30:43 | URL | 養生法の探求 #- [ 編集 ]

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