第六章 外膜(つたえる場)

8億年前にミトコンドリアがセットアップされたバクテリアが誕生し、その後はこのハイブリッドタイプの生命体が進化していく。単細胞から多細胞へと移行し、DNAのメタモルフォーゼ能力を開花させながら生物の種類が多様化する。生命誕生の38億年前からここまでの30億年間。実におびただしい歳月が言わば地球生命の基礎期でありました。30億年の厚みをもって、ようやく地球生命は少しずつ進化発展を開始する。スタートまで30億年。これほどまでに地球環境に適応するのは至難であったというアカシであろう。バクテリアこそが私たち細胞の基礎なのであり、貴い真の意味でのご先祖様である。ここはよ〜く理解すべき事項である。生物の授業ではこういうことは教わらなかった。ただサラッと流してしまった。なぜこれほど重大な事をしっかりと教えないのだろうか。この生命史の初期30億年のタメがあったからこそ、今の私たちはこうしてこの地球上で生きていけるのである。酸素を吸ってATPを生み出す能力も、酸素なしでATPを生み出す能力も生命史をさかのぼる38億年前から30億年かけて築いた生命の叡智である。私たちの体細胞60兆個にはバクテリア期30億年の生命叡智がつまっている。

バクテリア同士はどうやってコミュニケーションを取っているのか?そもそもコミュニケーションを取っているのだろうか?声なき世界の30億年間?果たして原始地球は音も無き静かな世界だったのだろうか。ウソ発見器、ポリグラフの第一人者であるクリーブ・バクスター氏はこの機器を使いこなし、生きとし生ける者がみな感情を有し、計測不能の信号系でコミュニケーションをとっていることを解明した碩学である。市販の牛乳ヨーグルト内で生きている乳酸菌のラクトバチルス菌は仲間が殺されそうになると悲鳴をあげるそうだ。悲鳴と言っても声ではなくポリグラフにトレースされる電気的反応であるが。しかし乳酸菌は確かに心をもっているのである。仲間の菌を入れたビーカーに抗生物質を入れる。つまりは仲間は殺される。その一瞬前に他のビーカーに入った乳酸菌たちが一斉に反応するのである。空間を2メートル隔てていても、ちゃんと仲間の危機を察知する。それはいったいどのような信号系を使い、どこで信号を発し、どこで受信しているのだろうか。私はこれらの信号系はすべて細胞膜を介して行われているとみている。バクスター氏はこの信合系を原初的知覚、プライマリーパーセプションと命名し、これを介して行う会話をバイオコミュニケーションと命名した。間中善雄博士は同じ現象をX信号系と名づけた。私は今は仮に「皮膚・細胞膜情報系」とでも名づけようと思う。

バクテリア時代の30億年間で細菌たちはその細胞膜を使って地球環境つまり外部環境を探っていた。外部環境を知ることは生き延びるためには絶対に必須な能力である。外部と接しむきだしになった器官は細胞壁、細胞膜、人間で言えば皮膚しかない。外側をおおう膜がはじめに外部環境と接する部位である。生命体は外部を覆う膜で情報を受容する。そして外部の膜をレーダーのように使い情報を発信する。外側を包む膜はアンテナでありレーダーであり続けた。30億年間の初期だけではない。それから後もずっと外膜は情報を受信し発信した。つまり人間の皮膚には生命史40億年の情報送受信の歴史が刻み込まれている。なにもかも地球の生命史はわが柔肌が知り尽くしているのである。恐れ多き臓器器官こそ、いや真に崇敬すべき部位こそが皮膚なのだ。

あまり知られていないが人間の皮膚は皮膚付近の大気の酸素濃度を鋭敏に知覚する。酸素濃度が低いと全身のミトコンドリアに酸素供給が滞りATP供給量が低下して全身の活動が鈍り生命の危機を迎えてしまうのでエリスロポエチンという赤血球産生を促進するホルモンを皮膚が分泌し出すのである。エリスロポエチンは腎臓への血液供給量が減ると腎臓が産生するホルモンとして知られているが、実は皮膚も同じホルモンを産生するのである。つまりは皮膚のエリスロポエチン産生能こそが原点ということである。皮膚は外部環境と接する臓器なのであり、皮膚が酸素濃度を探知するのは当たり前と言える。酸素濃度が低下した環境にあれば、その中でいかに生き抜くかが求められてくる。酸素を増やすことはできないが、酸素を体内で運ぶ赤血球の数を増やせば幾ばくかこの危機を逃れることができるかもしれない。好気性細菌が編み出した技法であろう。わが皮膚にはやはり30億年のバクテリア時代の叡智がつまっている。

ヒトの皮膚は半径2メートルの範囲に電波を発信している。これは精密な機器を用いてはっきりと確認できる事実である。クジラやイルカ、コウモリなどは頭部にある器官を使い超音波を発して行き先のモノに当たってはね返ってくる音波を受信し、そのモノの性質や距離を把握する。音響定位、エコロケーションと呼ばれる機能である。現生のサメの頭部にはロリンチーニ器官という汗腺の原器があり、1億分の1アンペアの微細な電気を感知し、遠方の水を探り当て、砂の中に潜むエサとなる魚類の筋肉が発する電気を捉える。音響定位もロリンチーニ器官も恐らくはバクテリアの細胞膜がもっていた「皮膚・細胞膜情報系」の機能を発展させた機能器官だろうと推定される。人間の皮膚のもつ電波発信能力も無論のことバクテリアの細胞膜の機能が残存している証拠だろう。

地球の生命体は外部環境を知覚し、それと折り合いを付けて外部と合わせる生き方を選択する事で生き延びてきた。だから情報を受信し仲間にその情報を発信することは何にも増して重要な事だったはずだ。ラクトバチルス菌が情報を受信し発信しても何も驚きはしない。地球生命のすべてがそれを有しているのだから。人間の皮膚はもっとも多用で応用が利く臓器である。すべての臓器器官の原器と言ってもいいだろう。皮膚を鍼灸指圧で慰撫すればあらゆる効能がもたらされる。皮膚は人体に潜む宝である。ヒートショックプロテインは皮膚を刺激する事で分泌されるのだ。40億年前の生命誕生は柔肌の熱き血潮で今もリフレインし続けている。

スポンサーサイト

2013.05.01 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 鍼灸創世46億年記

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

kouhakudou

Author:kouhakudou
FC2ブログへようこそ!

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR