オレ流鍼灸学 五

古典医書といってもさほど古くはない今から294年前の享保3年(1718)に鍼医である本郷正豊が書いた「鍼灸重宝記」という書物がある。この書が世に出る二年前の享保元年に国宝「紅白梅図屏風」などを描いた画家・尾形光琳が没し、6年後の享保9年には戯作家の近松門左衛門が亡くなっている。海外に目を転じるとやはり享保元年に中国古代哲学の易経の64卦に着目していたドイツの数学者であるライプニッツが亡くなり、享保8年にはオランダの細菌学者レーウェンフックが没している。医学史に関連する事項では4年前の正徳4年に「養生訓」を著した貝原益軒が没し、享保6年には小石川養生所が設立されている。

そんな18世紀初め、江戸中期の時代背景の中で「鍼灸重宝記」は生まれている。これは今でいえば「オレ流鍼灸学」なのであり、「ベスト版鍼灸術活用マニュアル」ということになるだろう。中国と日本の名だたる医書5典より抜粋した要点が上手にトッピングされて編集されており、ヤブな鍼医がこの書を読んで済世救民の助となるように本郷正豊が願った旨が後書きに見られる。当時は鍼医よりも湯液(とうえき)に傾いた漢方医が多いことを嘆き、鍼灸術の良さをわからしめ、鍼灸術の真価が発揮されることを望みこの書を世に問うたのである。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし、たいしたもんだよ、蛙のションベン!(笑)

さてこの本郷渾身の鍼灸ガイドブックの合谷穴(ごうこくけつ)の覚え書きの中にあるコメントに注目したい。「小児のノドに出来たオデキ」を治す、という意に取れる文言が見受けられるのである。勿論、それは当たり前なのであり、経絡の流注(電磁気の流れていくルート)がノドを走行しているのだからノドに関する症状にはすべて効くのである。当時はヨウ素被曝などないし、放射能の心配などしなくても良かったのだから今から思えばたいへんに清澄な空気の中で豊かなユートピア世界に住んでいたのが江戸期の子供たちであったのだ。しかし今の時代はどうしようもない放射能というタチの悪いシロモノと折り合いをつけて生きていかねばならない。暗黒時代にこそ実はこの書が生きてくるのである。私は合谷の主治症(治せる疾患)の検索からあるひとつの結論に今至っている。読者のみなさまのご想像の通りです。そう放射能に対する予防法としての合谷の活用です。

内部被曝とは体内に放射能が侵入する事態を言いますが、これにより体内の様々な分子成分がおかしくなっていきます。細胞膜が破壊されたり、DNAが切断されることは人口に膾炙していますが、より広範囲に起こる分子破壊にはタンパク質の変性があると私は推測しています。チェルノブイリのリクビダートル(清掃人、除染作業員)の脳内が空洞化してしまいわずか40代で痴呆症状を呈したのもひとつには脳内のタンパク質の変異があると見ています。脳神経細胞内に入りこんだ放射性物質は細胞内を放射線で侵襲します。それにより細胞質に漂っているタンパク質が変異します。このおかしくなったタンパク質はそのままでは使えませんから元どおりに直すか、分解して再利用するのが通常の細胞生理です。しかしそのような指令を出す細胞核DNAがすでに変異していますし、ミトコンドリアも機能を破壊されています。脳神経活動に必須のホルモンであるアセチルコリンやドーパミンやエンドルフィン、セロトニンなどを合成することもできません。ドーパミン産生神経細胞が消失して発症するパーキンソン症候群の脳神経細胞と同じような状態が放射能の脳内被曝によって出現すると予測されます。

つまりタンパク質の異常が引き金とみることも可能なのです。狂牛病(BSE、クロイツフェルト・ヤコブ病)、パーキンソン症候群、放射能の脳内被曝に共通するのは脳神経細胞内の細胞質のタンパク質の変性なのです。であるのなら、タンパク質の円滑なプロセスを介添えする人体の恒常性を維持する最重要物質であるHSPが潤沢に分泌されていればもしかしたら早発痴呆や認知症の発症を未然に防ぐことができるかもしれないのです。永六輔さんはパーキンソン症候群と診断されたのですが、検査は西洋医学、治療は東洋医学によってその症状を脱した模様です。鍼灸治療のアッピールに励むとレギュラー番組のラジオにて公言したそうです。実際に臨床においては鍼治療はパーキンソン症候群に絶大な威力を発揮する場合があるのです。

私は自分の祖母に養生のための鍼灸按摩術を始めてすでに15年経過しています。82歳の頃に始めたので今は97歳ですが、認知症も発症せずに日常の起居動作にも支障がなく過ごしております。週に2回の鍼灸按摩術を欠かさずに励行してきた祖母の本能を私は褒めたいと思います。本人の意思がなければこちらも手の施しようがありませんから、祖母が自発的に私の治療を請うてくれたことはたいへんにありがたかったです。祖母の脳神経細胞内にはアミロイドβタンパク質はさほど蓄積していないと思われます。もっとも誰もが加齢と共に蓄積するとの話しですが、たとえ少しの蓄積があっても皮膚筋肉系を刺激できる鍼灸はやはり特異的に有効な療法でありましょう。祖母の合谷にはここ15年の灸治療の熱が蓄積されています。それは手の陽明大腸経のルートの電磁気の流れを円滑にし続け、ひいては皮膚からのホルモン分泌を高め、連動して腸内と脳内のホルモン分泌を正常化してきました。また合谷に加えられた熱刺激がHSPを脳内へと分泌させてアミロイドβタンパク質が蓄積するのを防いできたのです。

もしかしたら合谷を指圧し続けることで「小児のノドに出来たオデキ」子供たちの甲状腺の囊胞が消失するかもしれない。

人体に潜む無限の可能性に賭けてみる。

「トラの口」談義、終わりそうにありません。

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2012.11.15 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 鍼灸指圧

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