スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.-- | | スポンサー広告

サプライズ

じつは治療院の常連さんや、その他大勢の皆様が、

今回の寄稿原稿を読みたいとリクエストしておりました。

残念ながら某誌への掲載は却下されましたが、

手元に原稿が帰還しました。

情報は公開してこそ意味がある。

そしてその情報に触れた者が

鍼灸指圧の素晴らしさに開眼することが私の本意。

よって以下に原稿全文を寄稿時のまますべてここに

公開することにしました。

ハイアーセルフ(高次の自我)の声には

逆らえない。

どうぞご自由に査読の程お願い申し上げます。






『オートファジーとHSPと

マクロファージで読み解く鍼灸指圧の治効メカニズム』



「2016年のノーベル医学生理学賞は

酵母菌の「オートファジー」を解明した

大隅良典・東京工業大学栄誉教授に授与された。

オートファジーという造語は「自食作用」と訳す。

自分で自分を食べるとは、例えば酵母菌の培地から

栄養源となる窒素成分を除き、酵母菌を飢餓状態に置くと、

酵母菌の細胞質に忽然と二重膜が出現する。

この二重膜が細胞内のタンパク質やミトコンドリアなどの

細胞質成分を包み込むと、リソソームという70種類の

分解酵素を含む液胞と合体する。そして二重膜内から

運ばれてきた大きな分子が液胞のリソソームの中に放たれて、

おもにタンパク質が小さな分子のアミノ酸に分解されると

細胞質へ戻されて、新たなタンパク質に

再合成される仕組みだ。

分解されたアミノ酸はグルコースへの糖新生や直接に

ミトコンドリアのATP産生にも利用される。

つまり細胞が飢餓で生き延びるために必須のシステムが

オートファジーだ。

オートファジーは今では酵母菌だけでなく植物や動物、

ヒトに至る地球に生きる真核生物のすべての細胞に

備わる事がわかった。オートファジーは飢餓状態の

時だけの現象ではなく、通常時にも機能している。

通常時のオートファジーは「基底レベル」の

オートファジーと呼ぶ。一般的に飢餓時に

活性化するオートファジーはマクロオートファジーと

呼ばれ、マクロオートファジーの特徴はザックリと

細胞質の成分を分解するところだ。

腹が減っては戦が出来ぬ。飢餓で腹が減った細胞は

とにかく何でもいいから急いで食べたい。

だから無分別に大急ぎでマクロオートファジーは

細胞内をぱくつくのだ。

その他にはリソソームが自分の膜を使って細胞質成分を

かじるように食べてそれを自身の中に

取りこんで分解するミクロオートファジー、

故障品となったミトコンドリアだけを選択的に

分解するマイトファジー、

ATPとシャペロン分子のHSPを使って

変性したタンパク質だけを識別して

分解するシャペロン介在性オートファジーがある。

これらの特徴はマクロオートファジーの

ザックリタイプと異なり、ミクロオートファジーは

少しずつ分解するチョッピリタイプ、

マイトファジーとシャペロン介在性オートファジーは

几帳面に識別するキッチリタイプと言える。

マクロオートファジーの目的は飢餓状態での

栄養の獲得にあった。では基底レベルのオートファジーの

役割は何だろうか。

それはひとことで言えば細胞内の品質管理だ。

ミトコンドリアはATP産生の過程で発生する活性酸素で

時に傷害を受けて故障する。細胞質には製造過程で

フォールディングに失敗した変性タンパク質や

劣化して機能を失った変性タンパク質が常に発生する。

もしも故障品となったミトコンドリアや細胞質の

変性タンパク質をそのまま放置しておくと、

細胞は正常な機能を失う。

だから細胞の内側をリニューアルし、

キレイに保つために基底レベルのオートファジーが

進化の過程で獲得されたのだ。

多細胞生物は単細胞生物のように丸ごと自分を

コピーできない。もしも多細胞生物が自分を

丸ごとコピーしたければ生殖行為をして、

いちいち新しい個体を作り直さねばならない。

とくに人間の場合は神経細胞は細胞分裂をせずに

一生涯おなじ細胞を使う。この多細胞生物の簡単に

細胞分裂ができない組織において、その細胞内を

クリーンに保ち長持ちさせるためにオートファジーは

なくてはならない浄化システムなのだ。

オートファジー不能マウスを使った実験によれば、

オートファジーが働かないと細胞内に変性タンパク質が

溜まり脳神経系疾患や癌を発症する事が確実視されている。

またオートファジーは細胞内に侵入した細菌を

分解する細胞内免疫としても機能する。

この事からオートファジーを活性化する薬剤の開発が

感染症の予防や治療につながると期待されている。

じつはオートファジーよりも早く研究されていたのが

ユビキチン・プロテアソーム系だ。

これは細胞内の変性タンパク質にユビキチンと

いう標識を付けてプロテアソームという分解酵素で

分解するリサイクル処理だ。

このユビキチン・プロテアソーム系はマイトファジーや

シャペロン介在性オートファジーと同じキッチリタイプだ。







さてここで登場するユビキチンとは、

シャペロン介在性オートファジーのシャペロン(介添え)と

同じくヒート・ショック・プロテインだ。

ヒート・ショック・プロテインという言葉は

我が東洋医学界でも一般化してきた。

だが一応ここでおさらいを兼ねて

ヒート・ショック・プロテインについて説明する。

ヒート・ショック・プロテインは1962年に

ウジ虫の飼育温度を37℃から急に50℃にすると、

ウジ虫の体内に増えるタンパク質として発見された。

そこで「熱ショックを与えると増えるタンパク質」に

ちなみ熱ショック・タンパク質(Heat Shock Protein 、HSP)と

命名された。HSPは熱だけでなく全てのストレスで

傷ついたタンパク質を修復し、

またタンパク質の合成から運搬、折りたたみ、

分解までをアシストするシャペロン分子だ。

地球の生き物にはストレスがつきもの。

そのストレスは温度の変化、重力負荷、酸・アルカリ、

気圧の変化、乾燥、寒冷、高温、飢餓、傷害、炎症、

加齢、酸素の増減、活性酸素、紫外線や放射線、

重金属、化学物質、ウイルス、バクテリア、毒物、

異種タンパク質の花粉への暴露など物理的ストレス、

化学的ストレス、生物学的ストレス、そして人間では

精神的なストレスまで含めて多種多様だ。

このストレスにより細胞は傷つくと、

その主要成分であるタンパク質が変性する。

タンパク質が変性するとは三次元の分子構造が歪み崩れ、

あるいは認知症の原因物質のβアミロイド・タンパク質の

ような凝集体になることだ。つまり変性タンパク質とは

ストレスで発生する細胞内のゴミだ。

もしもこのゴミ化した変性タンパク質をそのままに

しておくと細胞は正常な機能を失い、

様々な疾患の原因となる。

だからそうならないためにあらかじめHSPは

原核生物のバクテリアから真核生物のすべてに備わる。

HSPは進化発生学的にはオートファジーに先行する

由緒正しきタンパク質の管理人だ。

HSPは分子量でナンバリングされ大きくは10種類、

細かくは100種類ほどある。

HSPの驚異的な力を示すこんな実験がある。

鶏卵の卵白部分は水分を除いた残りがタンパク質だ。

このナマの卵白を2つの試験官に入れて70℃で10分間、

加熱する。一方の卵白にはHSPを入れて、

もう一方にはHSPを入れない。

するとHSPを入れない試験管は当然のこと卵白の

タンパク質が熱変性で凝集して白濁するが、

HSPを入れた試験管は透明のナマのまま。

HSPはタンパク質を熱変性から守るのだ。

人間の細胞では37℃前後で最もHSPが増えるが、

HSPを増やすためには温度を急に42℃から

50℃に上げる必要がある。この熱ストレスに応じて

最も増えるのはHSP70と呼ばれるタイプだ。

HSP70は細胞核と細胞質に存在し強力な

細胞死保護作用がある。その他にはミトコンドリアで

タンパク質の膜透過とフォールディング維持をするHSP60、

他の全てのタンパク質の活性調節になくてはならない

最も数の多い細胞質にあるHSP90、

眼の水晶体のタンパク質を

リニューアルし続けるスモールHSPのαクリスタリン、

美容鍼灸とも関わるシワをなくすために働いていると

目されるコラーゲン産生に関与する小胞体のHSP47、

ドーナツ型の構造に変性タンパク質を

通して直す細胞質のHSP104など多様だ。

東洋医学は鍼灸指圧という物理療法だ。

鍼と指圧は圧力を、灸は温灸なら皮膚面を42℃付近に、

直接灸なら筋肉層まで50℃の温度変化を与える。

つまり鍼灸指圧はヒトの体壁筋肉系に

圧力ストレスと温度変化ストレスという

物理的ストレスを与える。

この鍼灸指圧の物理的ストレスに応じて、

皮膚や血管壁や筋肉の細胞からHSPが分泌される。

圧力はタンパク質の構造を歪ませる。

温度変化はタンパク質を凝集させる。

一時的に構造を歪まされて、

凝集させられた変性タンパク質をそのままにしておけば、

やがて細胞の恒常性に支障を来す。

そうなっては困るから、皮膚や血管壁や筋肉の細胞は

速やかにHSPを分泌して変性タンパク質の修復にかかる。

この鍼灸指圧の物理的ストレスにより

分泌されるHSPこそが、

鍼灸指圧の治効メカニズムを解読する大きな鍵だ。








HSPを起点に免疫系が起動することもわかってきた。

免疫系が正常に働くためにはマクロファージと

その仲間の樹状細胞が抗原を捉えて、その抗原の

情報をヘルパーT細胞に伝達することが必須だ。

ヘルパーT細胞は抗原提示を受けると直ちに

キラーT細胞を誘導し異物の除去に参戦し、

またB細胞へと連絡し抗体を作らせる。

脊椎動物だけが獲得したこのT細胞やB細胞の獲得免疫も

まず最初に自然免疫からの抗原提示が

なければ何も始まらない。

その抗原提示のためにマクロファージや樹状細胞の

細胞膜には抗原を捉える受容体がある。その名を

トール・ライク・レセプター(Toll like receptor、TLR)

と呼ぶ。

TLRはヒトでは10種類発見されている。

その10種類のTLRがそれぞれ特異的な抗原を認識すると、

その情報がヘルパーT細胞へと伝達され、

自然免疫と獲得免疫が連動する。

例えばTLR1は細菌のリポ蛋白質を認識し、

TLR2は細菌とマイコプラズマのリポ蛋白質と

グラム陽性菌のペプチドグリカン、菌類のマンナン、

赤血球凝集素を、TLR4はグラム陰性菌のリポ多糖、

ウイルス表面のタンパク質、菌類のマンナン、

フィブリノーゲン、TLR5は鞭毛微生物の表面成分の

フラジェリンを認識するといった具合だ。

驚くべき事にTLR3はウイルスの二本鎖RNAを、

TLR7はウイルスの一本鎖RNAを、

TLR9は細菌やウイルスに固有のDNA部分を認識する。

まるでTLRによる外敵のDNA鑑定だ。

このマクロファージの知性とも呼べるTLRが

異物を認識するとマクロファージは導火線に

火が付いたような臨戦態勢に入る。

そのようなマクロファージが抗原を認識して

活性化した状態をプライミングと呼ぶ。

プライミング状態のマクロファージは貪食能力を

飛躍的に高めて、外敵であるウイルスや細菌のみならず

体内のゴミである赤血球の脱核や悪玉コレステロール、

終末糖化産物(AGEs)、βアミロイド・タンパク質、

老朽化した細胞や癌細胞を一掃する。

つまり免疫力が高いとはマクロファージの

プライミング状態を意味する。

このマクロファージのTLR4がHSP70とHSP60を

認識するのだ。

このことから鍼灸指圧はHSPを誘導することで

マクロファージをプライミングできる可能性が見えてくる。

ここでひとつ疑問が生じる。本来は自己と非自己を弁別し

異物である抗原タンパク質だけを捉えるはずのTLRが

なぜ自分が生み出したHSPを認識するのか?

これはストレス応答で細胞外に分泌されたHSPが、

細胞の危機信号として機能している証拠だ。

つまりウイルスや細菌や異物により傷ついた細胞は

細胞内のHSPを変性タンパク質の修復に使うだけでなく、

HSPを細胞外へと放ち、細胞外のマクロファージや

樹状細胞にウイルスや細菌や異物が侵入している事を

伝達するのだ。

また癌細胞は通常細胞と見分けがつきにくいが、

HSP70(HSP90も)はこの癌細胞内の

癌抗原ペプチドをMHC分子と結合させて癌細胞の

表面に掲げる手助けもしている。

HSPを増やすことで癌細胞の抗原提示の効率が

10倍以上も上昇すると報告されている。

ヒトの皮膚には通常のマクロファージよりも

抗原提示能力が高いランゲルハンス細胞という

樹状細胞がいる。

この皮膚ランゲルハンス細胞に鍼灸指圧のHSPが

認識されることで免疫系が起動すると見込める。

ここで思い当たることがある。

故・原志免太郎博士は灸を60年間も自分に

すえ続け108才の大往生を達成した。

これをここまでの文脈で解読すれば灸で産生量が

高まったHSP70が皮膚ランゲルハンス細胞を

プライミングし、その結果、

免疫力が維持されたと分析できそうだ。

また可能性として灸のHSPにより

シャペロン介在性オートファジーと

ユビキチン・プロテアソーム系も常に活性化し

細胞内に変性タンパク質が溜まらずに済んだと

言えるかもしれない。








HSPは生命が地球に誕生した38億年前から、

オートファジーは真核生物が発生した20億年前から、

マクロファージは多細胞生物が姿を見せた7億年前から、

地球の生き物を育んできた。

ミミズやカブトムシの無脊椎動物は自然免疫だけだ。

HSPの潜在力は計り知れない。

「鍼灸指圧はなぜ効くのか」。

その答えを私は以下のように大胆に宣言する。

「鍼灸指圧はHSPを誘導することで

オートファジー(&ユビキチン・プロテアソーム系)と

マクロファージを活性化し免疫力を高める」。

大隅良典博士は2012年に受賞した京都賞の講演で

「生物は貴重な資源をむやみに消費しない。

分解は新生への必須の過程だ」とし

「遠い将来を見据え、いかに自然に負荷を掛けずに

生活できるか、生物に学ぶことがある」と語っている。

私も東洋医学理論を自分なりに解体し、

患者に学び、新しい仮説の構築に邁進したい」






※ 主要参考文献  

水島昇「細胞が自分を食べるオートファジーの謎」

PHPサイエンス・ワールド新書


伊藤要子「加温生活」マガジンハウス


水島徹「HSPと分子シャペロン」講談社


坂野上淳・著 審良静男研究室・監修

「新しい自然免疫学」技術評論社


杣源一郎「免疫ビタミンのすごい力」ワニブックスPLUS新書       
  
     

スポンサーサイト

2018.04.05 | | コメント(0) | トラックバック(0) | NOISE&VOICE

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。