ホンモノ

ひとくちに東洋医学といっても、

そのカテゴリーは多様で多層だ。

一般に按摩マッサージ指圧と一括して呼ばれる手技部門に

おいても、様々な流派や派閥、伝統がある。

また鍼灸にいたっては、そのニッチをインデックス化する

ことなど不可能ではないかと思えるほどに、

大小の多くの研究会があり、伝統派から革新派まで千差万別だ。

世界を見渡せば中国はお国柄ゆえに覇権主義、膨張主義を

前面に押し出した鍼灸は中国のものだ的な中医学の

主張が激しい。またいまではアメリカや欧州においても、

また南米やアジア諸国においても、それぞれの地域に

固有の鍼灸医学が芽生えてきている。

すでに鍼灸は東洋医学というよりも世界医学の様相を

呈しているのだ。

さて、我が国に中国、韓国を経由して鍼灸医学が

伝わったのが西暦400年代とされる。

韓流スターならぬ韓国の僧侶が来日し、

鍼灸術を伝授したのが日本鍼灸の始まりのようだ。

爾来、明治維新まで我が国の主流医学は日本鍼灸、日本漢方だった。

明治維新という突発的な事故、アクシデントにより

ある程度は日本鍼灸の伝統の系譜が断絶した。

一子相伝、師から弟子へと技を伝えるのが鍼灸医学だ。

そうした伝承方式は万事が合理主義の

近代社会と折り合いが悪い。

効率重視でゼニ儲けを至上とする近代社会は、

ひとつの技、熟練の腕を生みだすのに

多くの時間をかけて手間暇をかけねばならない鍼灸医学を

育むのには適した社会ではないのだ。

また本来は漢方薬は鍼灸医学とセットで扱うものだが、

これもどういうわけか今では西洋式のやり方で

処方される始末だ。現状に文句を言えばきりがない。

そうした日本鍼灸を取り巻くモロモロの

ここ130年余ではあったが、

近年になり日本鍼灸の古典医書の発見や復刻、

解読がややトレンドと呼べる程に活性化している。

戦後にGHQが我が国に鍼灸禁止令を発布しようと

たくらんだ事は我が業界ではつとに有名だ。

しかし、それをなんとしても阻もうと、

立ち上がったのは鍼灸師のみならず時の西洋医であった

ことも私たち鍼灸家には周知だ。

その先頭に立ったのが曾祖父に華岡青州の門下生を

もつ医師の石川日出鶴丸博士であったことは、

鍼灸家なら必須の知識だ。

石川博士たちの功績がなければ、

恐らくは私たち鍼灸指圧師は今の日本には存在しない。

日本鍼灸がかろうじて継承されたのは、

石川博士と志しを同じくしてGHQと闘った

時の医師や鍼灸家たちのお蔭であることを

私たち鍼灸家は忘れてはならないのだ。

ということでザックリと日本鍼灸、

日本の東洋医学の歴史を振り返ってみたのだが、

ええと、何を言いたかったか?といえば、

そうそう、そうだ。

奇跡という言葉をあまり使いたくはないのだが、

私のこのブログのコメント欄にコメントを

くださった「爪食めば」さん、は

すでにコメント欄を読んでいる皆様もご承知のように、

わたしと同業の鍼灸師であります。

鍼灸師が開設しているブログに同業の鍼灸師が

コメントをくれる、というのは、

実はけっこう難易度が高いというのが、

これまでの私の認識でした。

というのは、やはり鍼灸師は、ひとりひとりが

お山の大将で一国一城ならぬ鍼灸院の主(あるじ)

ですから、それぞれに個性ある主張や信念、

哲学、ライフスタイルがあり、

それゆえに、ヨソサマ鍼灸師の入り込めない

ある種のバリアーというか、砦(とりで)を

築いている。当然だよね。

そうでもしなければ、自分の立ち位置が侵されて

グラグラしてしまうからね。

あるいはウッカリと自分のワザのコツでも盗まれたら、

それを売りにされて、自分の売りネタが奪われる

危険性もある。

デフレの厳しい今の時代では、

私たちもニッチを確立して生きていくのがたいへんなのだ。

そうした諸事情もあり、ブログでコメントを交換し、

鍼灸師同士が共に侃々諤々と楽しく語り合う、

などというケースは絶対にないだろうと、

諦めていた。いや、ほんの少しの希望を残しつつ、

このブログをこれまで続けてきた。

そして、ご存知のように、奇跡(笑)が起きた。

わたしは自分のワザやコツを秘匿する気は

さらさらない。そもそもワザやコツは

文字で伝授することなど不可能だからね。

そしてもしもワザやコツが文字で伝授できるのなら、

なるべくホットな旬のうちに、そのワザやコツを文字化して

公開する方がイイ、というのが私の美学だ。

文字にしてそこからインスピレーションを得て、

それがヨソサマの糧になるのなら、

それは技が伝承されたと云えるのだ。

掲示板などではお互いの了見がバッティングすると、

醜い諍い、読むに耐えぬ罵詈雑言祭りに至る。

ヘタをするとこうしたブログのコメント欄も、

そうした傾向に陥る場合もある。

私はなるべくなら私のブログのコメント欄を

建設的に活用したいと常々考えている。

同業の鍼灸師である「爪食めば」さんのコメントに

触発されて、この私が日本鍼灸の古典医書を

まじめに読んでみようか、などと思うに至ったのだ。

これがこのブログの建設的効果でなくて、

なんであろう。もっともその古典医書も

一度ならず何度もページを開いてはいるのだ。

古典を読解するのは、かなりハードルが高い。

むしろどなたかインテリジェンスが豊かな方が

解読して咀嚼してそのひとの言葉で書かれたものを

読むほうが、はるかに楽だろう。

だから、自分も古典をそのまま読むというよりも、

解説文からヒントを得るクチだ。

たった一節の言葉、たった一字から、

大きな閃きやインスピレーションが湧くことがある。

そうした出会いが古典医書を解読する楽しみだ。

江戸のはじまる前の中世にも、もちろん日本鍼灸はあった。

ネットなどない時代には、絵入りでツボの位置が書かれて、

そのツボの主治症が列記された本は、

とてつもなく貴重なコンテンツだったはずだ。

そんな日本鍼灸の古典医書が近年に発掘され、

その解読に挑む鍼灸師が増えてきているということは、

なにやらとても嬉しく感じる。

ホンモノたちを神は決して見捨てないだろう。

ホンモノになるために、今日も精進だ!

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2017.03.29 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

コメント

畏れ多くも
本文にまで登場させて頂き、
ありがとうございます。

僕はそんなたいそうな者ではございません。
整骨院勤務の、
しがないサラリーマン鍼灸師です。
家賃と食費でカツカツの生活でございます(笑)

ただ、追求心、探求心、実践心は、
誰にも負けません。

僕の運命を決定づけたのは、3.11です。
みんなが元気でしあわせな人生を送るべきなのに、
放射能という、それを阻害する巨大な要因。

かつて虚弱だった自分を救ってくれて、
それ以来惚れ込んでいる東洋医学、
鍼灸按摩は果たして、
放射能に対しても有効なのだろうか?
いや、有効かどうか、ではない、
どうすれば有効になるのか?

なんとかしよう、という気持ちだけで、
勉強してきました。
実践してきました。


やっぱり、有効ですねぇ。。


秋月辰一朗医師のチームは、
長崎原爆爆心地1.5km以内で活動しながら、
正食とレントゲンカーター対策で
誰も被曝症状をあらわさなかったという事実。


ウラディーミル・チェルトコフ監督の
チェルノブイリ映画『サクリファイス』で、
中高生くらいの兄妹が、
その若さで慢性腎炎、腎機能不全。


バンダジェフスキーの論文では、心筋や
ボーマン嚢、糸球体にセシウムが引っ掛かる様子。


放射性物質は、微細な金属粒子。


点と点と線と面を繋いで、
フェイク情報を払いのけ、
状況証拠から見出だす方策は、


排毒と代謝生殖の腎機能を上げ、
解毒の肝臓の負担を取り去る。


汗吐下和。東洋医学でいう治療とは、
デトックスそのもの。
放射能の対策に、
ならないわけがない。

2017/03/29 (水) 10:21:50 | URL | 瓜食めば #- [ 編集 ]

よく締まって練れた情報量の濃い素晴らしい文章ですね。

311と内部被曝とヒロシマとチェルノブイリとバンダジェフスキー博士と鍼灸指圧の凄味をリンクさせた、こういう文はなかなか書けるもんではない。

探求と精査をしぶとく続けた者だけが書ける文章です。

いま、これだけテンションが高い文章を書ける鍼灸家がこの日本に何人いるだろうか?

そういう意味では311は、根こそぎ日本の鍼灸家、

いや医療者のすべてを振るいにかけてスクリーニングしてしまった。

そしてその結果は惨憺たるもの。

ドリップペーパーの上に残った残滓が、私や爪食めばさん、ということ。

二人残っただけでも十分としますか。

かくも優秀なカリスマが揃う我が業界ですら・・・。

わたしのなかでかつて尊敬していたカリスマは、みな消えてしまいました。

これがどれほど悲しい出来事だったか。

しかし、ここにきて、奇跡が起こった(笑)

それで先般に爪食めばさんが仰った杉山真伝流の源流となる入江流の鍼のひねり方のなかに、

ヤツがとっくにキャラとして登場していたことが判明しました。

その記事を挙げる前に、バー博士の続きを先に挙げます。

中世と現代と未来がひとつの流れで結びついた。

バックトゥーザフューチャー。

ヤツがついに踊り出す。

2017/03/29 (水) 19:25:22 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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