昇竜の指圧
増永静人著「指圧療法」創元医学新書 の冒頭「指圧対談」より引用
藤井「これは増永先生のような方にお願いしたいのですが、東洋的なものに良いものがあることはわかっても、それを知るために余分な要らないものを百倍も学ばねばならぬという面倒さをなくせないものですかね」
増永「東洋医学を古いままで有り難がっていては、時代が変わっているのですから、ついてゆけません」
藤井「素材の整理を、扱っている人の価値判断でしなくては、もう一ついうと尾ひれが多すぎる」
増永「ですから東洋的なものを学ぶには、根本の単純なところをしっかりつかんで出発し直す。手技でいえば一番単純な操作で一番治療効果をあげている指圧というものに眼を向け、これを近代的な実験台にのせて研究してみる必要があると思います。・・行為が単純だと、その効果を暗示効果ぐらいにしか考えない傾向がありまして」
藤井「まあ多くの良いもの、本当に価値のあるものは、どこにでもあって誰にでも手が届く、俗に云えば、お金の取りようのないものにあるということですね」
銀座内科 医師 藤井尚治 日本指圧協会 指圧師 増永静人
どんなに素晴らしいものであっても、
時代のトレンドに合わなくなれば、
やがて廃(すた)れてしまう。
ここ20年ほどで街角から指圧の看板が消えた。
指圧は本当に素晴らしい手技だ。
しかし、その術が単純な操作に見えることが
災いして、指圧はたいして有り難がられることもなく、
カリスマであった指圧の啓蒙に尽力した浪越徳治郎先生や、
経絡指圧(けいらくしあつ)という言葉を創始して
東洋医学界にニューウェーブを
巻き起こした増永静人先生がご他界召されると、
指圧は一般大衆からの求心力を失い、
アッという間に、無資格のディスカウントリラク産業に
潰されて、今に至る。
指圧を東洋医学の三本柱の重要な1本と認知している者が、
いまの世にどのくらいいるだろうか?
恐らくは鍼灸師すら指圧を屁とも思っていないだろう。
私は鍼灸指圧師だ。
鍼灸師の資格を持つから鍼灸だけで営業ができるが、
指圧師の免許に誇りを持ち、
指圧において特によく発現するDLS現象を治療効果の
指標にするので、指圧は開業以来25年間、
ずっと継続してきた。
指圧とひとことに云っても、
その内容はひとことで語れるものでは決してない。
指圧をただ指で押すだけ、と思うかもしれないが、
指で押すその内容は融通無碍にバラエティー豊かだ。
押すだけの攻めの指圧だけでなく、
押して引く引きの指圧、
押して待つ待ちの指圧、
DLS現象を引き出す昇竜の指圧。
シロウトが見よう見まねでは絶対に出来ない
あらゆる工夫、技が私の指圧にはあるのだ。
しかし、その技を言葉で表現しても
ほとんど意味がない。
世間が求めているのは、
ひとことで指圧の良さをアピールする、
それなのだ。
浪越徳治郎先生は
「指圧の心 母心 押せば命の 泉湧く」
のキャッチフレーズで一世を風靡してブレイクした。
私はさしずめ
「鍼灸指圧でATPチャージ」
のキャッチフレーズで二番煎じを狙いたい。
素材の整理を扱っている人の価値判断でおこない、
多すぎる尾ひれをバッサリと切り捨てて、
浮かび上がった言葉こそ
「鍼灸指圧でATPチャージ」
のひとことだ。
2017.03.23 | | コメント(3) | トラックバック(0) | 養生クリエイター
