鍼灸指圧でATPチャージ(C)
ヒトの皮膚は押されることでATPを放出する。
このATPとはアデノシン三リン酸という分子で、
その分子構造の尻尾(しっぽ)の三つ目の
リン酸基を切り離すと、
1モルあたり、11から13キロカロリーの
結合エネルギーを放出する。
このATPの尻尾切りに伴い生み出されるエネルギーを、
細胞はあらゆる分子の合成や解体に利用しているのだ。
尻尾が切れたATPはADPというアデノシン二リン酸に
変わってしまい、エネルギーを供給する分子の役目が
なくなり無用の分子になってしまう。
しかし、さにあらず。
ここですかさずATP合成酵素がそのADPをつかまえると、
酵素反応により再びリン酸基をひとつバックアップし、
ADPは即座にATPに復活するのだ。
ATPは細胞核の周囲にネットワーク構造を築いている
ミトコンドリアのジャングルジムのそこかしこから、
細胞内に放たれることで、細胞内の各所の
酵素反応に利用されている。
細胞は常時、ATP⇔ADPをくり返すことで、
その生を営む。
この「ATP⇔ADPのゆらぎ」が
命の揺りかご、なのだ。
皮膚を押す手技の指圧は、
だから皮膚内にATPを満たす手技だ。
皮膚内が指圧でATPチャージされると、
皮膚内が「ATP⇔ADPのゆらぎ」で
さわがしくなる。
そのATPとADPの押しては返すさざ波は、
凝りの内部の変性タンパク質で固くなった
砂山のような分子構造を押し流していく。
変性タンパク質はATP介在性オートファジーで
分解されて、またアミノ酸に戻る。
アミノ酸に戻された変性タンパク質は、
またATPを使って新たなタンパク質にフォールディングされる。
指圧によりATPチャージされた凝りの内部では、
猛烈な勢いで分子構造が変化して、
凝りはやがて雲散霧消する。
指圧という見た目が単純で道具すら要らない、
シロウトが真似て簡単にできそうな手技が、
なぜ時に絶大な生理活性作用を示すのか?
その答えこそが
「指圧の皮膚押しATPチャージ効果」と言えるのだ。
鍼灸指圧史2000年において、
いまここに書いたように、わかりやすく分子レベルで
指圧の治効メカニズムを解読解説した者は、
恐らくは私が初めてだ。
私たち鍼灸指圧師は、いつも、世間からこう問われる。
「ねぇ、鍼灸指圧って、なぜ効くの?」と。
その質問には、いつも言外に、
鍼灸指圧なんか科学で認められていないから、
きっとこの質問にも答えられるわけがないわよねぇ〜、
という嘲笑がもれなくついてくる。
西洋医学、現代医学を至上のものと洗脳された一般人99.9%に、
たったひとことで鍼灸指圧の素晴らしさを伝えるには、
同じ科学の土俵に立ち、同じ生理学用語を使わなければ、
相手にもされない。
東洋医学をウサンクサイとみなす99.9%の日本国民のなかで、
わたしの情報は精度を上げてきた。
鍼灸指圧をウサンクサイと見なす99.9%の日本国民よ、
これまで私を磨いてくれて、ありがとう。
お蔭でようやくひとことで万人を説得できる
鍼灸指圧の宣伝文句が出来上がった。
「鍼灸指圧でATPチャージ」
「ATP⇔ADPのゆらぎ」こそが生きているアカシだ。
いまこの瞬間にも、細胞内では膨大な
ATP⇔ADPの揺りかご、が揺れている。
その揺りかごに、そっと手を差し伸べて、
その動きを優しく後押しする。
それこそが鍼灸指圧の真髄なのだ。
「鍼灸指圧でATPチャージ」された凝りのなかで、
竜が目を覚ました。
この竜は果たして敵か味方か?
次号に続く(笑)
2017.03.22 | | コメント(5) | トラックバック(0) | 養生クリエイター