身体論の解体と再構築 18

学名キャメロプス・ヘステルヌス。

聞き慣れない名称だが、

英語名は「Yesterday´s Camel」。

日本語に訳せば「過ぎし日のラクダ」となる。

この生き物はかつて1万1400年前まで

北米に棲息していた現生のラクダの原種だ。

今現在西アジアやアフリカで生きているヒトコブラクダや

フタコブラクダは、この原種の絶滅ラクダが進化した

末裔なのだ。ただ実際はキャメロプスは南米に

棲息する現生リャマやアルパカに似た大型哺乳類だったようだ。

まるで映画カサブランカの世界を彷彿させるような

ノスタルジー溢れる名を持つこのラクダの原種キャメロプスも、

アフリカを出立して欧州とユーラシアに二手にわかれ、

やがて世界中に拡散した我がホモサピエンスの祖先が

入植すると同時にこの世から姿を消した。

キャメロプスだけではない。

人類はありとあらゆる大型哺乳類を捕獲して

絶滅させた。

コロンビア・マンモス、アメリカンライオン、

ケサイ、ホラアナグマ、オオツノジカ、

ダイアオオカミ、ヒッピディオン、

プロコプトドン・ゴリア、フクロオオカミ、

ジャイアントモア、モーリシャスドードー、

ニホンオオカミ、クアッガ、

リョコウバト、・・・

こんなものではないが、化石に確実に遺っている

人類が絶滅させた大型哺乳類は

枚挙にいとまがないほどに多い。

そんななかでオーストラリアで4万7000年前まで

生きていたゲニオルニス・ニュートニには、

なにか惹かれるものがある。

カモの仲間とされるが、体長は高さ2メートルを越えて、

そのナリはエミューやダチョウに近かったようだ。

驚くべきは体重でエミューの50キロに対して

なんと275キロの体重だったとの推定がある。

それでいて時速20キロで走れたというのだから、

生きている実物を見たら、きっと腰を抜かす程に

たまげることだろう。

重い自重を支える足は大腿骨が異様に太く進化していた。

カモがネギを背負ってくる、なんて言うが、

ゲニオルニスがネギを背負って来たら、

いったい何人分の鴨鍋や鴨南蛮が出来るだろうか?

つまり、そう考えた人類がやはり、

ゲニオルニスを鴨鍋にしたかどうかはわからないが、

食い尽くしたようだ。

人類は哺乳類のなかでももっとも遅く地球に

出現した種だ。しかしその後発種がどういうわけか

結果として、こうした新生代に栄えた大型哺乳類を

食料とし、また衣類や住宅建材やジュータンや

毛布や燃料に利用することで絶滅させてしまったのだ。

そうしてあらかた大型哺乳類を食い尽くしたのちに、

人類は農耕と牧畜を始めたのだ。

食べるためなら人類はあらゆるものを手に入れる。

食い気のカタマリにして貪欲きわまる餓鬼。

動物愛護精神の欠片など微塵もない。

エコロジーなんか知ったこっちゃない。

それが人類というものだった。

いつの頃からか近代になり、

人間は何を食べたらいいのか?

という栄養学が起こり、近年に至り様々な

栄養論がかまびすしい。

しかし、人類はかつてとにかく生き延びるために

あらゆる大型哺乳類を捕獲して食べてきたのだ。

いや大型哺乳類だけではない。

ミミズもヘビもカエルもカメも昆虫も

なんでも食べられるものは、食べて

生き延びてきた。

栄養論だって?

そんな事は言っていられなかった。

なぜなら生き延びなければならなかったのだから。

生き延びるためには、味なんて言ってられなかった。

とにかくなんでもいい。

身体の構成材料になり、ATP産生の素材になりさえすれば、

なんだって良かったのだ。

そんな餓鬼のカタマリだった人類が、

いまでは味が旨いの不味いの、

あそこのレストランが三つ星だの、

あのお肉屋さんのコロッケが一押しだの、

と随分と生意気なことを言うようになった。

ふん、しょせんは、

おれたちは食い気と色気の権化。

餓鬼に過ぎないんだぜ。

でも、その食と性の二相を追う姿こそが

生き物の本質なのだ。

餓鬼の何が悪い?

餓鬼だからここまで人類は生き延びた。

キャメロプスもゲニオルニスもぜんぶ平らげた。

過ぎし日の駱駝も、275キロの鴨も

人類のお腹を満たしてくれたのだ。

人類に食べ尽くされた大型哺乳類たちよ、

これまで人類の命をつないでくれて、

ありがとう。

人類はとてつもなく強欲で馬鹿な餓鬼だが、

ようやく味もわかるようになり、

農耕と牧畜でなんとかここ1万年を

乗りきってきた。

この先がどうなるかはわからないが、

たぶん、農を基本とした食体系が

これからの人類の命をつないでいくことだろう。

人類が「過ぎし日のホモ」と後に言われることが

ないように、養生法の探求に励むのだ。

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2017.02.24 | | コメント(4) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

コメント

そろそろ

鶏の更新時期で、もう少し気温が上がったら種卵を手に入れようと
計画中の今日この頃。その卵が孵ったら、余分なオンドリは
我が身に我が血になってもらおう、と今回の記事を読んで
決心いたしました。(笑)
余分なオンドリといっても、成鶏になるまで六ヶ月育てると
なかなか締められなくてね。シャモも育てて五鉄のしゃも鍋を
再現するのが小さな目標なので、そろそろやらねば。

2017/02/24 (金) 06:36:34 | URL | 桑畑五十郎 #- [ 編集 ]

まさに解体と再構築

鶏をしめる時の断末魔の叫びを聞いて、

むかしのひとは、やっぱりかわいそうと思ったと、

うちの母親に聞いています。

食肉センターなんか内部の音や絵が見えないように、

もうまるで要塞ですもんね。

でも、ほんとの昔、原始ホモサピエンスたちは、仕留めた獲物をソッコーで解体し、

その血肉の臭いに寄ってくるサーベルキャットやホラアナハイエナに狙われる前に、

自分たちの住み家に運ばなければならなかった。

これものすごい高度で熟練した屠畜の技があったということ。

あたしたちはほんとにチョー弱くなっちまった。

でも、桑さんは、逆をいってる(笑)

いつだか、掛川市のキュウイ農園で飼ってる名古屋コーチンが、

あんまり立派でかっこよかったので、オーナーにそう告げたら、

うん、アレは食べると美味しいんだよ、と即答されて、

うなりましたもん。

人間はありとあらゆるものを解体し、我が身に再構築する。

それが生きる道だから。

そこに善も悪も好きも嫌いも、正も邪もない。

あるのは命が命をまっとうしようとするありようだけ。

菜食?肉食?絶食?

いったいなにを血迷っているのか。

生きるために食べるだけだ。

2017/02/24 (金) 19:35:10 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

先祖がえり

してるんでしょうか?(笑)
生活環境が、そっちへ向かわせている?
自分には合っているのかもしれません。

2017/02/24 (金) 21:55:38 | URL | 桑畑五十郎 #- [ 編集 ]

「おかしな三人組」

というトミー・ウンゲラーの有名な絵本がありますが、

この作者は若い頃、たしか米国からイギリスだかどこかの島に居を移して、

家族でほぼ自給自足みたいな生活をしていた時期があった。

その時はブタやニワトリを飼っていて、ブタを自分で解体して食べるサマを絵にしている。

米国、ニューヨークでの作品出版が成功しての金満生活をアッサリと捨てて、

そんな野生でのワイルドライフに至った背景には、どうもパーティー漬けのようなシティライフに嫌気がさしたことが原因だったようです。

そうした成金趣味の勝ち組世界のスノッブな嫌らしさを、やはり痛烈な絵で表現している。

ウンゲラーはフェチな収集家でSMグッズを集めていたりと、かなりコアな芸術家で、

かれのフランスにある美術館の地下にはオトナ限定な秘宝館的な展示会場があり、

「おかしな三人組」の絵本ファンの世界中の子供やママがそれを見たら、卒倒して腰を抜かす(笑)

でもウンゲラーはそんな事を言うと、不適に笑いながら、アレがなければそのカワイイ子供たちも生まれないだろ、だって。

アタシ、こういうタイプ、好きですわ。

ウンゲラーのブタの解体は腹側を前にして吊して、クビからスーッと腹まで切って、血と内臓を出すことから始めたことが絵でわかります。

原始ホモサピエンスやネアンデルタール人も、かれら独自の解体法を駆使していたことでしょう。

ちなみにアタシの亡父は若い頃、クジラ船に乗っておりました。

自分が中学高校の頃になり、捕鯨の是非が世界の注目を集めるようになりました。

その頃にわたしは父にそれに関して質問したことがあります。

捕鯨には掟があり、川の字で泳いでいる親子のクジラは狙わない、というその時の父の言葉が今でも耳に強く残っています。

ひとはむやみやたらと肉食をしているわけではない。

農耕牧畜をすべての地域で実践できるわけでもない。

アフリカでは今でもブッシュミート、森を狩り場としてサルやシカを狩ってそれをタンパク源にしなければ生きられない種族がいる。

感謝して解体して再構築して我が血肉、命になってまた生きる。

これも輪廻転生でしょう。

2017/02/25 (土) 05:06:29 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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