身体論の解体と再構築 8

ヒトの皮膚はKYではなく、ちゃんと空気を読む。

肌に触れる酸素濃度をモニタリングし、

もしも低酸素になればエリスロポエチンという

ホルモンを分泌して骨髄に赤血球を

いつもよりもたくさん作るように指示する。

そうすることで赤血球のヘモグロビンに

少なくなった酸素をより効率よく吸着して、

ミトコンドリアでのATPホルモンの

一定の産生量を確保する。

実はヒトの皮膚は空気をよく読むだけでなく、

音も聴くし、色も見るし、モノも味見する。

また紫外線や圧力でATPホルモンを分泌したり、

低酸素環境からバックアップするために

エリスロポエチンを産生するだけでなく、

認知機能に関するGABAというホルモンの受容体を有し、

愛と幸福のホルモンであるオキシトシンを分泌し、

ブレイン・ガット・ホルモンと呼ばれる脳腸ホルモンの

すべてを産生できる。

皮膚とは体表を覆う単なる防御シートではなく、

総重量3キロ、畳1畳余の人体最大の内分泌器官なのだ。

と同時に、皮膚は目であり、耳であり、口であり、

脳であり、温度や痛みや圧力を知覚するセンサーだ。

つまり皮膚という組織は、ルネサンス芸術における

万能の天才と称えられたレオナルド・ダ・ヴィンチの如き

多芸多才のマルチタレントなのだ。

この皮膚と同じく、例えばヒトの血管は、

血流を促進する血管拡張ホルモンの一酸化窒素と

血管を収縮するエンドセリンと、

血圧を調節するナトリウム利尿ペプチドCの

3種類のホルモンを自前で合成し分泌し

自分でそれを受容している。

同じく心臓も血流を促進し血圧を調節する

ナトリウム利尿ペプチドAとナトリウム利尿ペプチドBを

自前で産生している。

また胃はグレリンという若返りホルモンを産生し、

脳へと直通でつながっている胃の裏にある神経を使って

最速で食欲増進の信号を脳へと送り、

また内分泌して血液に乗せて脳へと、二重に伝達する。

胃にモノが無くなった事をグレリンというホルモンを

使って脳へと伝達することは、神経と血流の

二つのルートを二重に使ってでも絶対に確実に

連絡しなければならない程にとてつもなく重要だ、

ということがコレでわかるのだ。

空腹はイカン! とグレリンが吠えている!

やはり、ヒトは生きるために食べるだけでなく、

食べるために生きている、ということを

グレリンのガットからブレインへの二重伝達が

まざまざと教えてくれている。

だから、チマタの糖質制限や少食ブームは、

グレリンにツバを吐く罰当たりなトレンドなのだ。

また骨も骨に関するホルモンのFGF23と

オステオカルシンを分泌するし、

グレリンと同じ若返りホルモンの仲間とされる

αクロトーは腎臓で、βクロトーは肝臓で作られる。

αクロトーはリンとカルシウムのコントロールを主な働きとし、

ATPの作用に必要なホルモンであることがわかっている。

βクロトーは肝臓における胆汁酸やコレステロールの合成に関与する。

これまでに聞き慣れないα&βクロトーホルモンも、

いずれグレリンとともにトレンドに浮上するかもしれないので、

頭のどこかにインプットしておきたい。

このように人体の臓器・組織・器官は

これまでの要素還元論的な1対1対応の

「ワンイシュー&ワンアンサー」なパラダイムでは

解き明かせないほどに複雑でファンキーと言える。

ただ、ホルモンの領域は、

こうしたわかっているメジャーなホルモンだけでも

100種類を優に超えるし、続々と新発見も相次ぎ、

これに免疫細胞が分泌するホルモンのサイトカインや、

神経伝達物質までもホルモンにカウントすると、

ヒトの体内で使われる細胞言語(セル語)の数は、

数え切れないほどの膨大な数になってしまう。

よって、セル語にはそれほど深入りはしないで、

ちょこちょこと養生法に関係するものだけを触れていく。

今から3億5000万年前のデボン紀後期に、

イクチオステガと呼ばれる原始両生類が

水生から陸生へと上陸を果たした。

その時にその肌に触れる酸素濃度は水中の60倍に、

重力負荷は水中の6倍に、

紫外線は水中のバリアーがなくなりモロに浴びることに、

なった。

酸素濃度の変化というストレッサー刺激と、

重力負荷の増大という圧力ストレッサー刺激と、

オゾン層を通過して降り注ぐ紫外線というストレッサー刺激が、

イクチオステガの皮膚のDNAのトリガーを引き、

エリスロポエチンとヒートショックプロテインと

メラニン色素を産生する遺伝子を起動させたと

私は今、想定している。

爾来、陸生生命史3億年余をかけて、

わたしたちイクチオステガの末裔は、

この酸素や紫外線や重力負荷のある過酷な地上を

生き延びた。

その陸上でのわたしたちご先祖さまの

生命を養い守ってきたのは、

グレリンが食欲を誘導することで食べた食べ物であり、

その食べ物を材料にミトコンドリアで作られた

ホルモンだった。



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2017.02.17 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

コメント

寒い折に寒い話

雪の降る日も風呂に入れば冷水シャワー

熱い湯船と冷水シャワーの組み合わせ

かれこれ三年 風邪ひき無縁


皮膚という視点から見た<情報とエネルギーのネットワーク>には

興味を掻き立てるものがあります。

2017/02/19 (日) 22:28:59 | URL | 亡六爺 #- [ 編集 ]

亡六爺さん

いつもレスを頂きまして、ありがとうございます。

皮膚の起源を、さかのぼればバクテリアの細胞壁にたどりつく。

そのバクテリアはその細胞壁に酸や酵素を分泌することで、

外界から栄養を取りこみます。

だからバクテリアにとっては、細胞壁がクチです。

わたしたちのような腸管を備えた生き物の祖先は、

5億年前に誕生した腔腸動物のヒドラの祖先とされます。

ヒドラはバクテリアよりも進化して、すでに外膜と内膜の区別があり、頭冠部には脳のおおもとのアミノ酸を探知できるセンサー細胞が備わります。

このヒドラの内外二膜を感覚の中枢にした体制を、

やや複雑にしたのが、わたしたちだ、というに過ぎません。

多細胞の動物とは、ヒドラのようなテントのような簡単なナリの構造物が、ちょっと複雑になっただけ。

だから、皮膚と腸管上皮は、生命を読み解くうえで、最重要な場となります。

ブレイン・ガット・ホルモンのもとはスキンホルモン。

ブレインもガットもスキンからの情報なくば起動しない、くらいにわたしは皮膚のセンサー機能を重視しています。

皮膚への温冷刺激は激動の地球生命史を皮膚のDNAに思い出させて鼓舞する、

そんな優れた養生法かもしれません。

2017/02/20 (月) 03:41:29 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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