身体論の解体と再構築 4

今から46億年前の地球が誕生した当時の大気は、

メタン、アンモニア、二酸化炭素、硫化水素、水蒸気

がメインだった。

もしも、私たちが今その場に行けば、

もちろん即死する大気だ。

つまり、当時の大気には酸素も窒素もなかったのだ。

生命が誕生したのは40億年前とも38億年前とも言われる。

その最初の始原バクテリアはだから酸素無しの環境で誕生した。

この酸素無しで生きるバクテリアを嫌気性微生物と呼ぶ。

そして酸素が少しでもあると死んでしまうタイプは

絶対嫌気性微生物という。

絶対嫌気性微生物であった始原バクテリアが地球に誕生して、

嫌気性微生物だけが生を謳歌していた時代は

かれこれ15億年ほど続いた。

この間に新たなタイプの微生物がトレンドになりつつあった。

それは光合成という太陽光線を利用して二酸化炭素を

炭水化物に変換し、酸素を廃棄物として吐き出す

好気性微生物の台頭だった。

藍藻類のシアノバクテリアが有名だが、27億年前頃から増えだした

好気性微生物の吐き出した酸素はやがて海中の鉄イオンと化合して

酸化鉄になって海底に沈殿し滞積した。

いまわたしたちの身の回りにある鉄製品は、

27億年前頃から15億年ほどをかけて海底に一掃された

酸化鉄を冶金で製鉄したものだ。

そしてヘモグロビンをはじめヒトの生体内の鉄イオンは、

土壌や海洋のバクテリアがシデロホアという分子で

鉄を吸着して取りこむことで食物連鎖のなかで

ヒトの食事から取りこまれたものだ。

27億年前から始まった藍藻類による酸素の放出は、

やがて海中の鉄イオンと酸化して化合し尽くすと、

海上へと放出されて地球大気の酸素濃度を上げていった。

そして4億年前頃から植物の祖先が海から上陸し、

陸上で土壌が形成されて繁茂すると、

さらに大気中の酸素濃度は増した。

いまの地球大気に占める酸素濃度は21%だ。

46億年前には地球大気にはなかった酸素に囲まれて

わたしたちは今生きている。

この酸素元素が3つ結合するとオゾンと呼ばれる分子になる。

オゾンはご存知のように大気圏にオゾン層という

カーテンを覆うことで紫外線をカットして、

地球を生命の楽園へと変えてくれた恩人だ。

酸素は絶対的嫌気性微生物にとっては猛毒だが、

好気性の酸素を利用できるタイプの生き物にとっては、

欠くべからざる必須の元素であり、

オゾン層を形成することで地球を命を養う星へと

変えてくれた。

どこに視点を置くかで酸素という元素は

阿修羅像の面相の如く善悪の立場が入れ変わる。

ではヒトの健康にとって酸素は善悪どちらだろうか?

ヒトは好気性微生物という呼び名に習えば

好気性多細胞生物か、もしくは好気性大型生物と言える。

つまりヒトは酸素を利用できるのだ。

いや利用できるどころの騒ぎではない。

酸素無しでは今や生きられない存在だ。

どれだけ酸素が必須かと言えば、

例えばヒトの大脳は取りこまれた酸素の25%を消費する

一大酸素消費地であるが、もしも脳細胞にたった4秒間の

あいだ酸素が送り込まれなくなると、その後に酸素が

供給されても、もはやその部位の脳細胞の活動は

永遠に戻らないとされる。

脳梗塞の後遺症による麻痺などがその症例の典型だ。

いかに酸素がヒトの活動にとって大事かが、

この一点でも十分に理解できる。

ヒトがスーッと肺に大気を吸い込むと、

そのなかには1050万個の酸素分子が含まれる。

その酸素分子は肺胞で血液中のヘモグロビンに取りこまれると、

全身の細胞へと送り届けられる。

しかし最終的に細胞が受け取る酸素分子の量は、

吸った数のわずかにたった150分の1になる。

実は酸素は多く吸えばイイというものではないのだ。

酸素を過剰に吸い込むと、痙攣が起こることが

よく知られている。これはヘモグロビンに

酸素だけが取りこまれて、一酸化窒素や一酸化炭素の

くっつくスペースが酸素に横取りされることから

生じる現象とされる。

ヘモグロビンにくっついた一酸化窒素や一酸化炭素は

神経伝達に欠かせない情報伝達分子なのだ。

だから神経伝達に欠かせない情報伝達分子の

一酸化窒素や一酸化炭素が細胞に届かなくなると、

神経障害として痙攣が引き起こされるのだ。

また通常の大気の酸素濃度の21%よりも

大幅に多い50%濃度の酸素環境でマウスを

飼うと、そのマウスの寿命は3分の1にまで

縮まるのだ!

酸素はやはり多ければイイというものではない。

またヒトがもしも100%濃度の酸素下におかれると、

皮膚と肺がまず傷害を受けて、胸痛、咳などに

続き、肺水腫、充血、無気肺、肺の炎症などが

続発することがわかっている。

酸素はヒトの生命活動に必須の素材だが、

細胞の生理活動には多からず少なからずがベターといえよう。

細胞に送られた酸素はその後、ミトコンドリアに

取りこまれて酸化的リン酸化に利用されて、

ATPというエネルギーを生みだして、

最終的に活性酸素は水と二酸化炭素に変換されて、

環境中に廃棄される。

そのヒトが廃棄した二酸化炭素はまた植物の光合成に

利用されて酸素に戻される。

酸素とひとくちにいっても、

オゾン層の善なる側面があり、

活性酸素の悪なる側面もある。

しかしこの活性酸素にも

また善なる側面があるのだ。

ヒトの皮膚と血管壁で鍼灸指圧の刺激で

細胞核セントラルドグマが起動して

合成分泌される一酸化窒素は

実は活性酸素の一種なのだ。

この皮膚と血管壁で生み出される一酸化窒素があるから

ヒトは51億本の毛細血管を含む約9万6000キロの

血管を動かして血液を全身に運べるのだ。

活性酸素の一酸化窒素がなければ

ヒトは一時も生きられない。

ヒトは酸素と活性酸素の両方に生かされる存在なのだ。

生理学はことほどさように

「ワンイシュー&ワンアンサー」に

サクッと簡単にすべてを片付けるわけにはいかない

まことに、ややこしく、こんがらがった、

複雑で摩訶不思議な

ファンキーな世界だ。

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2017.02.13 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

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