ユートピア

わたしたちのヒト細胞の遺伝子はネバネバ(繊維質)を

分解する酵素を20種類分しかコードしていない。

しかし、腸内細菌の仲間であるバクテロイデス・テタイオタオミクロンは

驚くべきことにネバネバを分解する酵素を、

260種類以上! も作ることができる。

植物の細胞壁成分はセルロースと一般的に呼ばれるが、

セルロースの分子構造は非常に強固につながれており、

鋼鉄に匹敵する固さだ。

だから落ち葉や朽ちた倒木のセルロースを分解する酵素を持つ

土壌細菌がこの世からいなくなったら、たちまち森は

落ち葉や倒木だらけになり、やがて森林はそれらに埋もれて

枯れてしまうだろう。

いやそれどころではない。もしも土壌菌がいなくなったら、

あらゆる有機物が地表に滞積して地表はゴミの山と化して、

すべての生き物がこの世から姿を消すだろう。

土壌マイクロバイオームがいるからこその地上の楽園なのだ。

それと同様にヒトの腸内細菌のなかからセルロースを

分解できるバクテリアがいなくなったら、腹のなかは

分解できなかったセルロースでパンパンに膨れあがり、

恐らくは腹が張って痛みで苦しみながら絶命するはずだ。

それだけではない。

腸内細菌はセルロースを分解することで、

ビタミンB群やビタミンMなどの必須ビタミンを産生し、

このビタミンをわたしたちに供給するビタミン製造装置として

機能している。

またこれらのビタミンを利用してタンパク成分のうちの

トリプトファンというアミノ酸を素材に、

腸内細菌はセロトニンの前駆体を産生している。

この腸内細菌が生みだしたセロトニン前駆体は

腸管から吸収されて脳へと血流に乗って運ばれると、

脳内で修飾がほどこされて前駆体から完成品のセロトニンとなり、

脳内セロトニンとして情動の安定化に寄与している。

つまりヒトの精神が安定して気分が晴れ晴れとし、

心が穏やかでいられるのは、腸内細菌がセロトニン前駆体を

作ってくれているお蔭なのだ。

もしも脳内セロトニンが枯渇すれば、ご存知のように

ウツ症状となって顕在化する。

いまや社会問題と化しているウツ病の激増の背景には、

ヒトの腸内細菌のバランス失墜がある、と識者は指摘している。

土壌マイクロバイオームの窒素固定細菌が空中の窒素を

アンモニアに変換して取りこむと、このアンモニアを

例えば大豆の根が吸収し、大豆のアミノ酸のアルギニンとなる。

この大豆をヒトが口から摂取すると、

大豆の繊維質はヒトの腸内細菌により分解されてビタミンをはじめとした

有益な分子に変換され、トリプトファンからセロトニン前駆体が作られ、

それらは腸管から吸収されて脳や全身の細胞を滋養し、

大豆のアミノ酸のアルギニンが腸管から吸収されると全身の血管壁へと

運ばれて、そこに鍼灸指圧の刺激が加わると、皮膚と血管壁のDNAが

起動してアルギニンの窒素(N)と、酸素(O)を組み合わせて

一酸化窒素(NO)という分子を生み出す。

この一酸化窒素は血管を拡げるホルモンとして機能し、

また脳内の神経伝達を促進し認知機能を高め、

免疫細胞のマクロファージを活性化する。

わたしたちは呼吸器から窒素を取りこむ機能を有しない。

人体に必須の元素である窒素はほぼすべて食べ物から

取りこむしかないのだ。

だから土壌マイクロバイオームの窒素固定細菌がこの世から消えれば、

わたしたちは血管壁を拡げるホルモンの供給源を断たれ、

恐らくはヒトという生き物は絶滅するだろう。

腸内マイクロバイオームの攪乱(かくらん)はヒトの健康をおびやかす。

土壌マイクロバイオームの攪乱は自然界の生態系をおびやかし、

最終的にヒトを絶滅にまで追い込むかもしれない。

土壌菌を健やかに養うことはヒトを健康にすることと同義だ。

腸内細菌を健やかに養うことはヒトを健康にすることと同義だ。

土が健康で腸内細菌が健康ならばこの世はユートピアだ。

しかし現実は、土壌への産業毒の滞積、

人工物質による腸内細菌の攪乱。

リアルは真逆のディストピアの様相を呈している。

土壌マイクロバイオームと腸内マイクロバイオームを

同時進行に正常化するような、そんな施策が急務だ。

農と医は密接につながっている。

ではあるが、まずはとりあえずできることからはじめよう。

朝食に頂く一杯のお味噌汁。ひときれの板海苔。

おつけもの。納豆。そんなありふれたレシピが、

腸内細菌を豊かに、プレ&プロバイオティクスするのだ。

ユートピアの入り口はすぐそこ、手元にある。

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2017.01.21 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

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