アイツに恋して

固くなっていた筋肉がほぐれてくる。

ほぐれた筋肉に豊かな血流が戻ってくる。

まるで枯渇した小川に清流が戻るように。

わたしの指先には血脈のビートがヒットする。

ドック、ドック、ドックン、ドックン。

患者はどうも眠ったようだ。

すると、やおら、アイツが動き出す。

15年ぶり、いや20年ぶりだろうか?

開業したての頃に数回、通ってくれた患者だから、

アイツは、ざそ嬉しいことだろう。

変形した膝の上で座して待っていたアイツは、

勢いよく飛翔を開始した。

命のさざ波。

それはまるで竜が動き飛ぶさまにソックリだ。

ヒトの体壁筋肉系の表面に立ち上がる

この活きた凝りの解除と共に始まる一連の

うごめきを、これまで描写した術者は

はたしているだろうか?

幕末の名鍼医、葦原検校の「鍼道発秘」という書の

なかには、それらしい記述がみられる。

曰く、「鍼が気を動かす時、その動きはまるで

スッポンやサカナが釣り針にヒットしてググッと引くあのアタリか、

あるいは、カモを撃つ火縄銃の発砲する瞬間のポンッ、バーンと

いう衝撃波のようだ」と。

まさに、そんな動きが凝りを指圧していると、

眼前に出現する。

わたしはこの凝りのなかから現れる命の不思議な側面、

活きた凝りに棲む活きた竜に魅せられ、導かれて、

鍼灸指圧の実業25年を過ごしてきた。

この凝り竜と出会うために私は仕事をしているといえる。

凝り竜と出会えない仕事のスタイル、

システムはだから私向きではないのだ。

ビジネス? はぁ?

医は仁術だろうが? 

命は摩訶不思議なカオスにしてコスモスなフラジャイルな存在だ。

しかし、真摯に25年間、ただひたすらに

100%手仕事にこだわり、手抜きをせずに、

触れつづければ、誰にも見せてくれかなかった

魔法のような不思議な姿を命は見せてくれる。

60兆個の細胞が動的均衡を保つ。

それはとてつもない不思議なことだ。

その不思議の源泉はどこにあるのか?

分子レベルだけではないはずだ。

恐らくは活きた凝りの動きと共に現れるアイツも、

命の魔法の一員だろう。

今日もアイツに逢えるだろうか?

オレはまるでアイツに恋しているようだ。

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2016.10.28 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

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