Dragon Fly 5

治療師となってすぐに凝りというものは、

みずからの力で動くものだ、ということを発見した。

そして、その凝りが動くさまは、まるで皮膚の内部を竜が

飛翔する、それにソックリなことにも気がついた。

さらに、この凝り竜が動くと、凝りを取るのに、

それほど物理的な筋力を使う必要がないことにも気がついた。

このような経験から、身体は自分の力で治りたがっている。

だから、その身体が本来的にもつ復元力を引き出すことが、

治療師の役目だと悟った。

凝りの動くさまは、ひとそれぞれだ。

非常に感度のいい身体があり、そういう身体の竜は、

驚くべき飛翔を見せる。わたしの指先から始まった竜の動きは、

その患者の身体中を駆け巡り、やがて患者の手足の先から

外界へと放たれる。天空へと飛翔する昇り龍だ。

大人しい動きの竜もある。概して高齢化した患者の竜だ。

それに比して子供の竜は元気がいい。

スポーツなどで痛めた身体に潜む竜も、威勢がいいものだ。

そんなバラエティー豊かな竜のなかで、一番手強いのが、

積年の慢性筋肉疲労が蓄積した凝りに棲む竜だ。

このヌシのような竜は、こちらの指の呼びかけにこたえて、

なかなか動いてくれない。そこにジッとトグロを巻いて

こちらを見据えているのは、わかっているのだ。

しかし、ひとの術をあざ笑うように、なかなか動こうとしない。

そんな時は、このヌシを直視せずに、ちょっとハスに構えて、

お前なんか相手にしてないよ、というそぶりで、

他の竜を探す。ヌシのいる壺だけでなく、こうした積年の凝りが

溜まった身体には、他にも様々な竜が棲んでいる。

ヌシがすぐに動かない場合は、この他の竜を動かすことで

ヌシを呼び出すのだ。ようやくヌシが動き出す。

凄味のある動きはまるで竜の王を思わせる動きだ。

「凝りには竜が棲み、この竜を動かすことを治療と称する」

ここ2000年の東洋医学の歴史のなかで、

こんなアヴァンギャルドな見解を提示した鍼医は、

わたしが初めてだろう。

わたしたち鍼灸師は、すでに中医学のマインドコントロールに染まっている。

経絡や気は、だから自明の、もとから当たり前にそこに存在するもの、

と決めつけている。そうしてそのことを金科玉条の如くに信奉し、

べつな概念が入りこむことを寄せ付けない。

紀元前のまだ中医学が体系化される前の鍼灸指圧術は、

まず治療師が患者の身体をよく按摩することからスタートした。

最初に治療師が患者の全身をくまなく指圧して触ることで、

凝りの強い部位や冷えた部位の特異点を見つけたのだ。

そうして、この凝りの強い部位には鍼をして、

冷えの部位には灸を据えたのだ。

これが原初の鍼灸指圧術だった。

易の概念、陰陽論、五行学説、天人合一説、

こうした高尚なロジックで化粧される前の、

まっさらな白紙の東洋医学は、ダイレクトに身体と対話する原初の鍼灸指圧術だった。

中医学の理論化と一般化、つまり中医学が医学としての理論武装をする過程で

なにかはじめにもっていた大切なものを失ってしまったような気がしてならない。

もう一度、ダイレクトに身体と向き合い対話してみたらどうだろう。

わたしが決して指圧を止めないのは、ダイレクトに身体と対話したいがためだ。

身体はそんなわたしの気持ちにこたえて、凝りに潜む竜を見せてくれた。

わたしが感得している気の世界を、わたしひとりの経験にして秘匿するには、

あまりに惜しいし、もったいない。

そんな不可思議な凝りの、命の、竜のありようを、

広く世間に知ってもらうべきだ。

そんな気持ちが芽生えてきたので、こんなシリーズを始めたのです。

身体はまだまだ神秘に満ちたフロンティアです。

昨日もたいへんに暑かったですね。

さて、今日はどんな竜が出現するでしょうか?

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2016.08.02 | | コメント(3) | トラックバック(0) | 養生クリエイター

コメント

今さん
ありがとう
いつも

2016/08/02 (火) 08:59:36 | URL | 中尾勇人 #- [ 編集 ]

中さん

こちらこそ、いつも、ありがとう!

このシリーズ、実は自分がずっと手がけたかったシリーズです。

どこまで続くか、書く気が続く限り、書き続けます。

どうぞお楽しみに!

2016/08/02 (火) 19:48:20 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

はい!

2016/08/03 (水) 00:43:16 | URL | 中尾勇人 #- [ 編集 ]

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