地下の王国

いまの地球大気に占める元素の組成比率は、

酸素濃度は約20%で、残りの約80%が窒素で、

温室効果が取り沙汰される二酸化炭素は

わずかに0.035%を占めるのみだ。

この地球大気のなかでわたしたちは酸素を

吸って呼吸活動をおこないATPを生み出すことで生きている。

このような酸素呼吸を人間は当たり前の所与のものとしているが、

この真核生物に特有のエネルギー産生システムは、

地球生命界ではかなり新しいタイプに属する。

いやもっといえば超マイナーな呼吸システムで生きているドメインが、

真核生物界、ユーカリアの生き物と言える。

わたしたちは燦々と太陽が輝くこの地上を楽園と感じている。

しかし、それはあくまで人間の主観であって、

脚下照顧、足もとを見つめるとまた違った世界が見えてくる。

ひとが日々、踏みしめているこの大地の下には

総生物量で地上の生き物の総量をしのぐ生き物が棲息している。

その地下の生物量はなんと200兆トンに及ぶという。

この200兆トンに及ぶ地底世界の住人は

好熱性で酸素を嫌うバクテリア(真正細菌)や

アーキア(古細菌)がほとんどだ。

これら微生物にとってはわたしたちの住む地上世界は、

酸素という猛毒の有毒ガスが充満し、

太陽光線の紫外線という有毒エネルギーが降り注ぐ

地獄に他ならない。

エネルギー産生システムが異なれば、さほどに世界は違って見えるのだ。

かつて今から27億年前頃に地球の大気に占める酸素濃度が上昇を始めた。

このシアノバクテリアによる地球大気の酸素汚染を回避するために、

酸素を嫌うバクテリアやアーキアは地中世界へと逃避したのか。

爾来、27億年余、かれら好熱性、嫌気性の微生物たちは、

わたしたちの知らない暗黒のアンダーグラウンドに

キングダム、王国を築いたのだ。

例えば大豆の根に共生する窒素固定細菌がいなければ、

ひとは食材から摂取する窒素源を失う。

土中世界の住人である窒素固定細菌がいるからこそ、

植物も動物も大気中の窒素をその体内に取り込めるのだ。

近年になり生物による汚染除去(バイオレメディエーション)が注目されている。

土壌細菌の白色腐朽細菌の一種が産生する酵素には、

環境汚染物質のDDTや殺虫剤の成分、ポリ塩化ビフェニール、

火薬のトリニトロトルエン、各種プラスティック類を分解する作用がある。

このことからウラン、セレニウム、ヒ素、水銀などの有毒重金属すら

いずれは土壌微生物のバイオレメディエーションで分解除去が可能かもしれないと

期待がもたれている。

長年踏みしめてきた足元の住人達に頭を下げる時代が到来しつつあるようだ。

人間なんて、本当はもの凄くちっぽけでマイナーな生き物なんだよ。

その人間がなんでこんなにドヤ顔で地上を闊歩しているのか?

地面のしたの事なんかこれまで意識してこなかったから、

そんなに威張っていられたんだよ。

地下には、人智を越える王国が広がっている。

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2016.07.16 | | コメント(1) | トラックバック(0) | 命曼荼羅

コメント

放射能に対するバイオレメディエーション


自然界に放出され増えつづける原発事故や核兵器による人工の放射性同位元素を分解処分できるバクテリアやアーキアが発見されれば、

もしかしたらこの先の人類の未来に幾ばくかの生きる道が確保されるかもしれない。

ただし、また人間のエゴがこうしたバクテリアやアーキアを占有し特許を取り利権化する動きは阻止していかねばならない。

はたして地下の王国の住人たちが、わたしたちの味方になってくれるか、どうかはまだわからない。

まずは我が身のバクテリアたちを味方につけるのが先決か。

2016/07/16 (土) 20:06:58 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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