火の鳥

「邪気を散ずること大いなる錯(あやまり)なり。邪を正にすることを療治というなり。(邪を)発散して当分治すること安し。のち、大いに災い出で、悪病を生ず。この病を発散して治せんと思う人は、病人の道具を盗み取り、或いは首を切るに同じ大罪至極なり」「邪気は元来、動気にして神なり。これを散ぜんと思わば(病人の)首を切る。実邪漏らさず留めて正に成さば万病治するなり。邪正一如なる事を明らかに知るべきなり」「我かつて病を治す事を知らずとなり。またいわく、病を治せんと思わば(病人の)首を切るべし。命は病、病は命となり」松田博公「日本鍼灸を求めて」緑書房



我が国の鍼医の一派が、かつて読み解いた命のありようが、ここに記載されています。

すでに何度も述べたように、わたしはこの言葉に出会った時に

雷に打たれたような衝撃を受け、得も言われぬ感情に突き上げられて

嗚咽混じりの涙を流しました。

医療者は患者の苦痛を取り除こうとするばかりに、その患者に出現している症状を

どうしても敵視してしまいます。

症状から病名を付けて、病因を割り出し、そこから徹底的にその病根を攻撃しに

かかります。そうすることで病気を攻略し最終的にヤマイを征服せんとするのです。

だから医療はドラマに満ちており、医療者はヤマイというモンスターに果敢に

挑む英雄、ヒーローとして描くに最適なモチーフとなります。

漫画、テレビドラマ、映画のエンターテイメントの世界で展開する医療譚はみな

すべて医療者をヒーローに描きます。

こんなイメージが生みだしたのが医療は患者の苦しみを取り除かねば意味がない、

という強迫観念です。

治療はうまくいく場合もあれば、そうでない場合もあります。

1回で簡単に症状が取れる場合もあれば、何年も治療してようやく

いくらか改善されるケースもあります。

現実の東洋医学の現場は、決してエンタメの世界のドラマのようには

うまくいきません。

奇跡の手、神の手、がやすやすと量産される時代に、

もんもんとひたすら自問自答する日々が続きました。

そんなある日、ふと手に取った本の最後で

バッタリと冒頭の文章に巡り会ったのです。




ヤマイとイノチはわけることなどできない。

ヤマイそのものがイノチだ。

ヤマイのなかにイノチの輝きがある。

邪を正に転換してはじめて治療といえる。



驚くべきことに攻撃する対象としてのヤマイが

ここではイノチと一体化し融合していました。

そしてヤマイは切り離すべき存在でなく、

いつもイノチと共にある存在だ、と明記されていました。

この言葉たちとの出会いは、わたしの医療観を根底から

変革しつづけています。

新しい分子レベルの解読においても、いつも多賀法印流の邪正一如の思想は、

わたしを導きつづけています。

フリーラジカルも活性酸素も乳酸も邪として徹底的に貶まれてきました。

しかし、フリーラジカルはそれ自体が細胞やミトコンドリアの動的均衡を

保持するサーモスタットの指標となることがわかり、

細胞代謝の余剰汚泥と思われていた乳酸はそれ自体がミトコンドリアの

エネルギー源としてATP産生に寄与していることがわかりました。

邪と思っていたフリーラジカルや活性酸素や乳酸という分子は、

ことごとくすべて正だったのです。

ニック・レーンは先のミトコンドリア論の名著「ミトコンドリアが進化を決めた」

のなかで「生命現象に偶然進むものなどほとんどない。

むしろあるのは、細胞の底流をなす代謝への絶えざる適応なのだ」と説きます。

幕末の漢方医で名医とされた新宮凉庭は「元気はいずれも自然の運行である」と

言いました。

天地自然であるひとの身体から読み解く養生法の至宝とは何なのか?

それは素直に天地自然である身体に教えて貰うのがベストです。

現生鳥類の体温は人間の37℃よりも高い39℃です。

この高代謝な鳥類のミトコンドリアは恐竜時代の鳥類と共に

2億年余の共進化を遂げて、いまやもっとも高精度のハイクオリティーな

ミトコンドリアシステムを鳥類の体内で構築しています。

海鳥のカモメなどは見た目にはまったくエイジングを発現せずに、

軽く70年から80年を生きるといいます。

オウムは100年、アホウドリは150年もの寿命をもつといいます。

この鳥類の装備するミトコンドリアシステムをそっくりと真似したら?

そう、それこそが最強の養生法、ミトコンマンへの道と言えます。

キモはなにか?

ミトコンドリア数を増やすこと。

この一点がすべての鍵を握っています。

ミトコンドリア数が多ければストックエネルギーの乳酸を

より効果的に利用できます!

サラブレッドに匹敵する乳酸活用型の人間になるには、

ミトコンドリア数を増やせば可能かもしれません。

ひとはミトコンドリア数を増やすことで、

不死鳥、火の鳥に生まれ変わるのです。

ニック・レーンの名著に導かれた全5話、ここに完結。

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2016.07.02 | | コメント(0) | トラックバック(0) | ハリキュウ戦隊ミトレンジャー

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