中医学的エコロジー

東洋医学、中医学では血液(けつえき)という用語を使用することはない。

そのかわりに使う言葉が「気血(きけつ)」だ。



この気血という東洋医学に特有の言葉をどのように解釈すればいいのか?

そこが問題となる。



血(けつ)の部分は目に見える赤い血という物質、

モノとして捉えることができるから、

ここの部分の解釈はこれでいいだろう。

だから残りの部分、つまり、

気(き)という目に見えない部分の解釈に関してが問題となるわけだ。



気に関してはわたしなりの気論もすでに多く論じており、

また他所でも気については非常に多様な解釈があることは存じている。

今回はそんなアラカルトな気論が目当てではない。



中医学ではこんな風に気血を論じる。

「血は気の行く所につき従うなり、

気行けばすなわち血行く、

気止まればすなわち血止まる」『医林縄墨』


素直にこの古典文献で論じられている気血論を解釈すれば、

血は単独では動くことができないもので、

気の力があって、はじめて血は動くことができるもの、

と認識できてくる。

さらに気血の気の力がストップすれば、自動的に血もストップすると

解釈できる。



現代生理学における最新の分析では、

血液を運ぶパイプである血管は、

血液を運ぶために血管を収縮するエンドセリンというホルモンと、

血液を運ぶために血管を拡張する一酸化窒素というホルモンを、

合成分泌することがわかっている。



血管ホルモンであるエンドセリンと一酸化窒素が合成分泌されなければ、

血管の収縮と拡張がおこなわれずに、

血液は血管を流れることができない。



ここで、いささか乱暴で強引だが、

中医学の古典における先の気血論でみた気の作用である、

「気止まればすなわち血止まる」の部分を

→「エンドセリンと一酸化窒素止まれば血止まる」

と置き換えてみたらどうだろうか?



意外にシックリとはまる気がするのだ。



『医林縄墨』という書物は1584年の明の時代に編纂された書物だ。

つまり今から432年前の気血論というわけだ。

もちろん、まだエンドセリンも一酸化窒素も発見されていない。

もしも、この時代の中医たちがエンドセリンや一酸化窒素の存在と、

その機能を知っていたら、どんな気血論を展開しただろうか?

やはりただ単に気という用語でお茶を濁したか?

それとも、はっきりと、エンドセリンと一酸化窒素という用語を

明記しただろうか?




古代の中医たちのフォローをする。

フォローをすることで中医学に厚みを持たせる。

これも現代に生きる鍼灸師の努めです。



血液は血管ホルモンのエンドセリンと一酸化窒素の力で流れる。

その血管ホルモンの血管の拡張を司る一酸化窒素は、

皮膚や筋肉や血管を押す鍼治療や指圧治療により

皮膚と血管壁でアミノ酸のアルギニンをもとに合成される。

アルギニンのもとは食べ物の大豆などだ。

その大豆にアルギニンの窒素を供給したのは、

誰あろう大豆の根に共生していた窒素固定細菌なのだ。



酸素は肺を通じて大気中から体内に取りこむ。

その酸素は光合成細菌や光合成植物が産生したものだ。

窒素は腸を通じて食べ物から体内に取りこむ。

その窒素は植物の根に共生する窒素固定細菌が土壌中で大気から取りこんだものだ。



中医学は天人合一(てんじんごういつ)を養生の理想の理念に掲げてきた。

天である地球環境とヒトが一心同体である時、

ヒトはもっとも健康である、とする天人合一という思想。

これが単なる思想ではなく、科学的にも整合性がありそうな気配が見えてきた。




ヒトは光合成細菌や光合成植物が生み出す酸素を吸い、

窒素固定細菌が取りこんだ窒素を吸収することで、

命を養っている。

光合成細菌や光合成植物や窒素固定細菌がいなければ

ヒトは命を養うことすらできない。


天人合一の天は

言い換えるのなら光合成細菌・光合成植物・窒素固定細菌ということになる。

だから「(光合成細菌・光合成植物・窒素固定細菌)人合一」だ。



光合成細菌・光合成植物・窒素固定細菌たちが健康で豊かに繁栄していれば、

ヒトの命を養う酸素や窒素も豊富なのだ。



中医学的エコロジーは、

なかなかに奥が深い。

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2016.04.10 | | コメント(1) | トラックバック(0) | 命曼荼羅

コメント

ということで


ここのところ精力的にブログ記事を連発しておりましたが、

また原稿の加筆修正の依頼がまいりましたので、

しばし、そちらに集中いたします。

よって、こちらブログ記事の更新は停滞気味になるかもしれません。

その旨で宜しくお願い申し上げます。

では!

2016/04/10 (日) 10:35:56 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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