新説の提示

海洋バクテリアのビブリオフィシェリという細菌は

イカの身体に棲み着いた時にだけ特別な酵素を産生し、

イカを光り輝かせる。

その発光現象のもとになる特別な酵素ができるメカニズムはこうだ。

ビブリオフィシェリは自身の体内で合成したオートインデューサーという

ホルモンやフェロモンのような分子を細胞壁から分泌して、

自身の周囲に浮游させている。

ビブリオフィシェリはこのように、それぞれこのオートインデューサーという

細菌の分子言語を発して会話しているのだが、

その会話の濃度がある閾値にまで達すると、

別な分子言語を合成するスイッチが入る仕組みになっている。

ビブリオフィシェリの個体数が増え、群れたコロニーになって、

オートインデューサー濃度が高まり、その群れの個体たちが

いっせいにその濃度の上昇を感知すると、

発光現象を引き起こす特定の酵素を合成するのだ。

この発光の余得はイカを月光と同化させて、ステルス化させることで、

イカを忍者にして捕食を助けるのだ。

こうしたバクテリア間のオートインデューサーという分子言語を介した

コミュニケーションを「クオラムセンシング」と呼ぶ。

(※ quorum とは英語で議会の定足数を意味する)





つまり、ビブリオフィシェリというバクテリアには

オートインデューサーという分子言語を介した立派な

クオラムセンシングというコミュニケーションが存在するのだ。

「おい、今日もエエ天気だな。おっ、あそこに俺らの夜の宿のイカの旦那がいるぞ」

「あっ、ほんとだ。イカの旦那の体内は居心地がいいんだよね」

「ぼちぼち、みんな集まってきたな」

「うん、今夜もパッと夜の海を明るくして景気よくパーティーでもやろうぜ!」

「いいねぇ、そうしよう」

「パンパカパーン、ポンッ、パンッ、パチンッ!」

「よっしゃぁ、オートインデューサーの濃度が高まった合図の

ファンファーレとクラッカーだ」

「発光酵素をぶちまけようぜ!」

「それ、ピッカーン!」

こんな会話が海中でヒソヒソと話されているかどうかはわかりませんが、

そんな感じかもしれません。





今から20億年前から12億年前にメタン生成菌とαプロテオバクテリアという

二つのバクテリアは、どんなオートインデューサーで会話して

クオラムセンシングに達したのでしょうか?

きっと、そこにも様々な会話、やり取り、熾烈な問答があったことでしょう。

無酸素と有酸素というお互いにとっては死地となる異なる環境を好む

二つの異質のバクテリアが融合するということは、

本来は絶対にあり得ないような奇跡です。

しかし、この奇跡があったから酸素濃度の上昇した地球で生きることが可能な

原始真核生物が誕生し、やがてわたしたちヒトが生まれたのです。

定説ではメタン生成菌がαプロテオバクテリアを捕食し

飲み込んだという説が主流ですが、

わたしは、まだまだ多様な仮説を提示できる余地が残っていると感じています。




さて、今現在、わたしたちの体内には概算で

1京8000兆個のミトコンドリアが棲息しています。

体細胞の数が60兆個ですので、

この体細胞よりもその数において、

ミトコンドリアの総数ははるかに多いのです。

そして、ミトコンドリアはATP産生とアポトーシスの手綱を握ることで、

体細胞の生殺与奪の主導権を完全に握っています。

ここである疑問が生じます。

一般には体細胞がホスト(宿主)であり、

ミトコンドリアはパラサイト(寄生体)と定義されます。

しかし、体細胞の生死はミトコンドリアが握っていることをみれば、

立場はまるで逆転しているわけです。

実際にはミトコンドリアがホストであり、

体細胞がパラサイトとしか思えません。

こうしてこれまでの生物学の定説、定義を逆転しつつ、

ATPの新しい側面である情報伝達分子(ホルモン)としての役割を

俯瞰した時に、わたしの脳裏にクオラムセンシングの閃光が輝きました。




もしかして1京8000兆個のミトコンドリアたちは、

ATPというオートインデューサーを介してクオラムセンシングを

しているのではないか?

だとしたら、まさにヒト細胞60兆個はミトコンドリアに支配された

ミトコンドリアワールドではないのか?




わたしは常々、ずっと不思議に感じていました。

ミトコンドリアという生き物は細胞内でも単独の粒(コンドリア)では存在しません。

細胞核の周囲にクモの巣のように糸状(ミト)に連なり

ネットワーク構造を形成しています。

その細胞内のミトコンドリアが描く三次元構造は

まるで銀河系を思わせるフラクタルな美しい姿です。

このミトコンドリア銀河系のネットワークが宇宙の大規模構造のように、

ヒト細胞60兆個の世界に浮游しているのです。

このミトコンドリアネットワークには、きっと何らかの共通信号があり、

すべてのミトコンドリアがこの共通信号により、

連絡を取り合い、連携することで全体の恒常性を維持しているはずだ、

という確信に近い推論をずっと、わたしは保持していました。



そのこれまで不思議に感じ、確信に近い推論が、ついに

ひとつの仮説に昇華したようです。



「ミトコンドリアが産生するATPは、

ミトコンドリアたちが自分たちのコロニーを維持するために生み出す

ミトコンドリア・コミュニケーションのためのミトコンドリア・ホルモンである」



このような仮説を立てることで、ATPの情報分子としての役割は、

さらにいっそうわかりやすく、際だってきます。

実際にATPは情報分子としての機能が注目されています。

でもいったい何のための情報分子なのか、

そのへんがまだハッキリしていないように思われるのです。



ATPは細胞活動のエネルギー源であると同時に、

ホルモンとして機能している。

そのホルモンとしての機能は実はミトコンドリアが、

ミトコンドリア同士で情報交換するためだった。



ATPや電子が細胞内やミトコンドリアに貯留、滞留することは、

身体の不調の原因になります。

その時に、ATPを急激に消費するような少しきつめの

エクササイズを行うと、溜まっていたATPが消費されて、

細胞内が活気づき、ミトコンドリアのATP産生ラインも

再起動してきます。

このことでミトコンドリア内に貯留していた電子の流れも正常化し、

ミトコンドリアもまた活き活きしてきます。

「溜まっているATPだけでなく、さらにもっともっと、

ATPをたくさん産生しろ!」

と全身のミトコンドリアに呼びかける行動が、

ちょいキツ系の少しハードなエクササイズの実践なのです。



継続したエクササイズでATPをよく消費し、

たまのちょいキツ系のエクササイズでミトコンドリアにハッパをかけて、

ミトコンドリアに分裂を促して、ミトコンドリア総数を増やす。

こんな習慣がきっと、

一生涯の健康を導くミトコンドリア総数を増すライフスタイルです。






わたしたち真核生物は、ここ20億年間、

ずっとミトコンドリアに導かれ育まれてきました。

ミトコンドリアの祖先はαプロテオバクテリアです。

20億年前、メタン生成菌とαプロテオバクテリアのあいだで、

きっとオートインデューサーやATPを介した激しい対話が

あったと推測されます。

その際に、ミトコンドリアは俺らはATPでみんなと会話して、

ネットワークを作ると約束したのかもしれません。

「ATP=ミトコンドリア・ホルモン仮説」

本邦初公開、世界初公開の、

堂々の独断仮説です。

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2016.04.02 | | コメント(2) | トラックバック(0) | 細胞宇宙

コメント

人体の不思議展の

全身の血管標本のような、ミトコンドリアネットワークの標本を見てみたいですね。霞のような人体を。

私とは、心とは、このミトコンドリアネットワークを指すのでしょうか。だとすると納得できることは多いです。

「この身は借り物」という言葉の主語もなんとなく分かるような気も。

だとすると・・・

先生、続きがまちどおしい。

2016/04/03 (日) 07:52:22 | URL | たがやすべえ #- [ 編集 ]

真核生物間バイオコミュニケーション


のためのオートインデューサー=ATPという見立てですね。

ここのところ、名古屋、沼津、東京江戸川と、

遠方のブログ読者でもある常連さんたちが、

立て続けにご来院くださいました。

そんな交流対話のなかから、

もっともっとわかりやすく、

面白いミトコンドリア物語りを、作りたい衝動が、

芽生えてきております。

ニック・レーンの本は、また図書館に返しました。

4割くらいは読めたかな。

こっちはこっちで独創で煮つめたいという矜持もあるので。

たがやすべえさん好みの、ロードオブザリング ミトコンドリア編。

フフフ、いつか手がけてみたいです。

2016/04/03 (日) 13:30:48 | URL | 今村光臣 #- [ 編集 ]

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